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第011話 新しい人生


 俺達はセリアの冒険者である2人の馬車に乗せてもらい、町に行くことにし、馬車に乗り込んだのだが、俺とAIちゃんはもちろん、ナタリアとアリスも馬車に乗り込んできた。


「いや、誰が操縦するんだ?」


 全員で乗り込んでどうする?


「この馬車は自動で動くんだよ。馬にちゃんと知能がある」


 へー。

 便利だな。


「ふーん。どれくらいで着くんだ?」

「明日には着くと思うからそれまで待機ね」


 暇だが、歩くよりかはマシか。


「わかった。AIちゃん、適当に遊んでていいぞ」

「カラスちゃんを出してくださいよー」


 カラスちゃん?

 あー、飛ばして遊ぶのね。


「はいよ」


 俺は懐から護符を取り出し、式神のカラスを出す。

 カラスはカー、カーと鳴きながら馬車から出て、その辺を飛び回り始めた。


「見張りは私に任せてください」


 見張りと言っているが、上から風景を楽しみたいだけだろう。

 まあ、暇だし、好きにすればいい。


「…………ねえねえ、それって、異世界の魔法?」


 アリスが俺のそばに来て、聞いてくる。


「そうだな。どうもこの世界の魔法は俺の世界の魔法とは違うらしい」

「…………さっきのエアカッターは何?」

「エアカッターを知らん」

「…………こういうの」


 アリスはそう言うと、杖を外に向けた。

 すると、杖の先から風の刃がすごい勢いで飛び出し、森の木を切っていった。


「あー、それか」


 昨日の侍女が使っていた魔法だ。

 確かにかまいたちの術に近いかもしれない。


「…………威力もスピードもこれ以上だった。というか、見えなかった。教えて」

「教えてできるようになるものかねー? というか、お前には必要ないな。かまいたちは威力はあるが、近距離用だ。殺傷能力があるのは10メートルもない。エアカッターのほうが良いぞ」


 かまいたちの術は距離で如実に威力が落ちるのだ。

 この子はどう見ても近接戦闘ができるようには見えないし、遠くから魔法を撃っている方がいいだろう。


「…………他の魔法はないの?」


 ぐいぐい来る子だなー。


「アリスさん、気を付けたほうが良いですよー。その人は根っからの女好きですから気付いたらお腹がポッコリです」


 AIちゃんは何を言っているんでしょうね。


「…………え?」

「え?」


 アリスとナタリアが微妙に距離を取った。


「くだらん冗談を言うな」

「…………冗談か」

「びっくりしたー」


 俺もビックリだわ。


「いや、本当じゃないですか。10人以上も奥さんがいて、30人以上もお子さんがいましたよ」

「10!? 30!?」

「…………王侯貴族でも聞いたことがない。逆に尊敬するレベル」


 俺も自分のことながら尊敬するわ。

 ほぼ引いてるけど。


「俺はまだ信じ切れていない。どんな人生を送ったらそんなことになるんだよ。当主だし、側室や妾がいてもおかしくないが、10以上ってバカだろ。しかも、50も下の嫁さんってドン引きだよ」

「50も下!?」

「…………99歳で亡くなったって言ってたから49歳か」


 49歳で夫に先立たれるのも可哀想だな。

 まあ、卵焼き一つで怒鳴るようなクソじじいは死んでせいせいするかもだけど。


「正確には12人ですね。50歳下の奥様はマスターが拾ってきた孤児です。優秀な陰陽師でマスターのお弟子さんでしたが、身寄りもなく、後ろ盾もないからマスターが引き取ったのです」


 なるほどー。


「へー……いや、養子にしろよ」


 スケベジジイめ!


「養子は奥様方が反対したのです。はっきり言えば、お子様方より優秀だったんですよ。あの御方はマスターのお弟子さんで一番でしたからね。マスターは身内にも厳しいお方だったので跡目争いが起きそうだったんです。それで奥様方が動いたのです。マスターが愛の多い方だというのは奥様方も身を以って知っていますからね」


 いや、養子を跡継ぎにしねーよ。

 父上が存命だったかは知らんが、少なくとも長寿の母上は生きているだろうし、自分の血族じゃないなら反対する。


「俺って、そんなに厳しかったの? めっちゃ優しいぞ」


 自分で言うのもなんだが、弟や妹にも慕われていた。


「マスターは真面目な方ですから当主の役目をまっとうしただけです。上に立つ者は厳格でなければなりませんからね。実際、長男が後を継いで引退されてからはお孫さん達を可愛がるだけのおじいちゃんになってましたよ。奥様方もお子様方も自分達にはあんなに厳しかったのにお孫さんにはデレデレでしたから呆れきってました」


 マジでただのジジイだな。


「記憶にないなー」

「ない方がいいでしょう。良い記憶だけではありませんし、マスターの第二の人生には不要なものです」

「そうかー? 顔も名前も思い出せんが、かわいい嫁と子供、そして、孫だろ」


 大事な如月の一族だ。


「それが足かせになるのです。マスターがこれからいい人と出会ったとします。ですが、その時に前の人生のご家族が脳裏にチラつきます」

「あー……なるほど」


 確かにそれは二の足を踏んでしまうかもしれない。


「相手からしても比べられるわけです。いい気持ちはしないでしょう」

「確かになー。そういう意味では思い出さない方がいいわけか」

「はい。如月家34代目当主、如月悠真様はその天寿をまっとうされました。ちゃんと国や一族のために働き、使命を果たしたのです」


 俺の前の人生は文字通り、終わったんだな。


「俺の記憶が断片的なのはそのせいか……お前が消したんだな?」

「はい。マスターは真面目な方です。確かに異常な数の奥様がいらっしゃいましたが、それでも奥様や子供達、そして、お孫さん達を分け隔てなく愛しておられました。そんなマスターは今世であの方達を絶対に引きずると判断しました。マスターの新しい人生はこれから先も続きます。申し訳ありませんが、バグとして処理しました」


 とんでもないことをしているとも思うが、記憶がないから何も思わない。

 まあ、それでいいのだろう。


「転生者って大変なんだね」

「…………難しい問題」


 話を聞いていたナタリアとアリスが同情の目で見てきた。


「別に気にしてない。思い残すことがないのなら問題ないだろう。それよりも他の転生者はどうなんだ?」


 確か、俺以外にもいると聞いた。


「うーん、どうかなー? 有名な人はいるけど、わからない」

「…………転生者って言ってもユウマみたいにわかりやすくないからね」


 服か……

 この子達の服を見ても、俺やAIちゃんの和服とは随分と違う。


「転生者って気付かれない方がいいか? だったら町で服を買うが……」

「別にいいんじゃない?」

「…………うん、特に問題ないと思う」


 ならこのままでいくか。

 この服も気に入ってるし、AIちゃんは式神だから服は面倒なのだ。


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