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第106話 買い物


 ギルドでの話が終わった後、宿屋に戻った俺達は部屋で休んでいた。

 すると、ナタリアとアリスが狛ちゃんを連れて俺の部屋にやってくる。


「あ、狛ちゃん。室係に止められなかったか?」

「説明したら大丈夫だって」


 そうなんか。


「それにしても早かったな? 実家に帰るんじゃなかったのか?」


 まだ、夕方にもなっていない。

 泊まるかもしれないなと思ってたんだが。


「おみやげを渡してお茶を飲んで終わり」

「…………私もそんなもん」


 えー……


「やけに淡白だな」

「まあ、そんなに遠くないしねー」

「…………冬前だからどこも忙しい。お金を渡して帰ってきた」


 冬への準備があるわけか。


「そんなもんか……」

「そっちはどうだった?」

「あー、アニーとリリーが帰ってからにしよう」


 説明は一度にまとめた方がいい。


「それもそうだね。あ、お茶を淹れるよ」


 ナタリアがお茶の準備をし出す。


「悪いなー」

「いいの、いいの」


 ナタリアがお茶の準備をし出すと、扉がガチャッと開かれ、リリーが部屋に入ってきた。


「ただいまー!」

「ノックくらいしなさいよ」


 苦言を呈しながらアニーも入ってくる。


「ごめーん! 王都が楽しくてテンションが上がっちゃってねー!」


 リリーが明るく謝ってくる。


「別にいいが、どうした?」

「王都はやっぱりすごいよ。色んなものを売ってる」


 リリーが座りながら答え、アニーも座った。

 すると、ナタリアが人数分のお茶を持ってきて、テーブルに置き、座る。


「俺も明日、見に行くかなー」

「行こうよ、行こうよ。私ね、変な置物が欲しい!」


 変な置物って何だよ……


「まあ、観光がてら買い物をしよう」

「やったー!」


 現金な奴。


「私は服ね。それよりどうだった?」


 アニーがさり気に要求し、聞いてくる。


「正式な謁見じゃないし、お茶会程度だからそんなに時間はかからないそうだ。まあ、呼ばれたら行ってくるわ」

「勧誘されなかった?」

「されたが、すぐに引き下がったな。区長やパメラの手紙が効いたんじゃないか?」

「そうかもねー……まあ、問題ないならいいわ」


 アニーはほっとした様子でお茶を飲みだした。


「それにしてもギルマスは驚いたな。ガキじゃん」

「あー、それね。私も知ってるけど、王都では有名だよ」

「…………チビなギルマス。略してチビマス」


 王都出身のナタリアとアリスは知っているらしいが、ひどい通り名だな。


「転生者だってさ」

「え? そうなんだ」

「…………知らなかった」


 これはさすがに知らなかったらしい。


「パメラは転生者がわかるって言ったけど、全然、わからんよなー」

「ユウマはわかりやすいけどね」


 まあ、服装がな……


 俺達がその後も雑談を続けていると、夕方になった。

 そして、夕食を食べると、解散し、休んだ。


 翌日。

 この日はナタリアとアリスの案内のもと、王都の観光名所を皆で廻る。

 さらには約束通り、皆に物を買ってやった。


 リリーは昨日言っていた本当によくわからない変な置物を買ってやると、喜んでいた。

 アニーも服を買ってやると、満足げだった。

 アリスは懐中時計なるものを欲しがったので買ってやると、ずーっとそれを見ていた。

 遠慮していたナタリアも皆が買ってもらっていたのでおずおずと本を要求してきたので買ってやった。

 そして、最後にパメラへのおみやげを買うと、自分の買い物をすることにする。


「ユウマは何が欲しいの?」


 上機嫌のナタリアが聞いてくる。


「米」

「あー……言ってたね」

「…………市場で売ってるから行ってみよう」


 俺達は食品を売っている市場に向かう。

 セリアの町の市場にも魚を買いに行ったから行ったことがあるが、王都の市場は規模が違った。

 多くの店が並んでいるし、色んなものが売っており、ほとんど見たことがない。


「ユウマ、お米はどれくらいいるの?」


 どれくらい……


「米ってどれくらい保存できるんだ? 一年は保つとは思うんだが」


 新米、古米ってあったし、多分、保つ。


「普通に保ちますけど、冬を越せるくらいに買えばいいと思います。また買いに来ればいいわけですし」

「なるほど……」


 そんなに遠くないわけだし、AIちゃんが言うようにまた買えばいいか。


「依頼を出せば? 私達に贈り物をくれるくらいに余裕があるならギルドに依頼を出せばいいじゃないの」


 悩んでると、アニーが提案してくる。


「依頼って何だ?」

「何だって言われても……私達がいつも仕事してるやつよ。別に冒険者が依頼を出してはいけないなんて決まりはないわ」


 なるほど……


「米を買ってきてくれっていう依頼か?」

「そうね。配達の依頼とか商人の護衛の依頼なんかもあるし、そのついでに買ってくれるんじゃない? 他にも王都に行く商人に頼んでもいいと思うわよ。知っている商人を紹介しようか?」


 アニーを仲間に加えて良かった。


「商人に知り合いがいるのか?」

「20年も住んでいるし、護衛の依頼を受けたこともあるからね」

「紹介してくれ」

「いいわよ。でも、冬は難しいと思うから冬を越せるだけのお米を買えば?」


 どれくらいだろ?


「それでいくか」

「そうですね」


 AIちゃんも頷いた。


「ねえねえ、ユウマはなんでお米が欲しいの?」


 リリーが聞いてくる。


「俺の国では主食が米だったんだよ。ここに来るまでパンなんか食べたことがなかった。まあ、パンも美味いんだが、長年食べた米も食べたいんだよ」

「へー。ソウルフードかー」

「そんなもんだ」


 米、魚、漬物、味噌汁。

 味噌は……さすがにないだろうな。


「お前にもあるか? 虫以外な」

「エルフは芋が主食だね。でも、別に美味しくないし、パンの方が好き」

「芋って美味くないか?」


 俺、好きだぞ。

 よく焚火で焼いたし。


「味がないんだよー。町に来て、人族のご飯を食べて感動したもん。私、もうあの食生活には戻れない」


 味がないのか……

 森だし、塩がないのかもしれない。

 そら、辛いわ。


「よしよし、お前にはおにぎりを作ってやろう」

「マスター、その前にお米を炊ける人を探してインストールしなくては」

「そうだったな」


 それが大事。


「米ならクライヴが炊けるでしょ。前になんか作ってたわよ」


 アニーが思い出したように教えてくれる。


「そうだっけ?」

「…………覚えてない」

「私も知らない」


 3人は知らないらしい。


「あんた達が来る前の話よ。練習がてらに作ってくれたわ」

「ほうほう。どうだった?」

「普通に美味しかった。でも、米は高いから店には出せないなーって言って作らなくなったわね」


 輸送費がかかるしな。


「じゃあ、あいつに渡せばいいわけだな」

「じゃない? 作ってくれるでしょ」


 昨日、奢ってやって良かったわ。


「よし、米を買ってあいつに頼もう!」


 しかし、そうなると、王都に来なくても米を食えたわけだな……


 俺達はその後、米を買い、宿屋に戻った。

 なお、久しぶりに見た米にちょっと感動した。


お読み頂き、ありがとうございます。

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