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決別、または離脱

作者: 妖目 覚

二作目です、ガタガタな文章ですが、読んでいただけたら幸いです。

決別、きっぱり別れること、再び会うことのない別れ

離脱、ある状態から抜け出すこと



私は、一人であり、一人ではなかった。訳が分からないと思うが実際そうだったのだ。彼は、ずっと私のそばにいた。特に何かをするわけではなく、私の視界の片隅に突っ立って私の事を見ているだけである。だが、そいつに見られていると、私はとんでもなく苦しくなる。そいつはいつも悲しい顔をしていて、一体何を憎んでいるのか、全てに傷をつけていくような振る舞いをしている。

 

彼は、一体いつからそこにいたのだろう。「物心ついた時か?」といえばそうではなく、彼は突発的に顕現し、やはり私のことを見ているだけである。しかしながら、実は彼が現れた経緯は、大体予想がついている。それは私の過去だろう。過去の私は、俗にゆう社会不適合者である(今もほぼそうだ)。かつての私は、引きこもって外の新鮮な空気と、太陽などから極力関わりを持たないようにしていた。因みにそうなった経緯は、遠回しに言うと、学生の頃の経験が元である。あとはご想像にお任せしよう。そういうわけで、私はインターネットに入り浸り、外界を遮断し、挙げ句の果てに世間に対しての不満云々を、心の中で吐き捨てていたのである。今思えば、何も経験の無い私が世間にとやかく言うのは、どう見ても、負け犬の遠吠えである。しかし、それほどまでに私はゆがんでいた。だが、そんな私も一応、社会に復帰した。正確には色々な人の助けを経て復帰した。復帰した頃には、もうそれほどインターネットに擦り寄る様子もなく。現実での友達も、少なからず出来、いわゆる、「青春」というものを私は得ることが出来た。そういう時に、彼は現れた。いつも通り家に帰り、今日も楽しかったなと思うと、ふと現れる。彼は、私の幸福感と連動して姿を現す。一人になった私に、目を向けて静かに歩みよってくる。彼は何も発しないと言ったが、実際は、私に向けて伝えているのだ。

「お前は過去から逃れることが出来ない。」そう私に伝えているのだ。何も言わずとも彼の目は私にそう言っている。「そんなこと分かっている」と振り切るように念じると彼は、さっと消えていくが、私は彼がこれから私に憑いて離れないのを、確信した。彼と出会うたびに、私は考える。彼は、何故私の前に現れたのだろうと。復帰したのなら、彼に用はないはずである。しかし、彼は私の前へ現れる。私は、一体、どうすればいいのだろう。

 しばらくして、彼との生活はかなり年月が経っていた。家に帰ると、彼は現れいつものあの視線を、向けてくる。一つ分かった事がある。彼は、私が何らかの感情に傾きが現れると、姿を表すのだ。その中で一番多いのは嬉しい時である。嬉しい時の彼は、少し暗い顔をしているような気がする。彼は私に嫉妬しているのだろうか。自分がつらいのに、私が幸せなのが許せないのだろうか。とにかく、そのときの彼を見ていると、私も少し可哀想と思ってしまう。そう思い出した頃、私は彼に対する嫌悪感は無かった。

 また、時が経ち、私は少し大人になった。けど彼は、いつも出会った時のままである。彼は成長することはないようだ。そのときから、私は彼の顔が少し見えにくくなった。そこにいるのは感じるのに、少しばかり霞がかって、認識が難しくなった。しかし彼の気持ちは、まだ、私に伝わっているようだ。このときの私は薄々感じていたはずであるが。私は、それについて目を背けることにした。

 ある日、といっておきたいが実際はいつだったか覚えていない。だが、その日が来た。いつも通り私は、彼と二人きりだった。私は彼を見たが、やはり、見えにくくなっていた。以前よりもひどく、曇りガラス越しに影を見ているようなものだった。私は、少し散歩する事にした。彼とともに。

 その日は確か夜だった。私は人気の無いところで、彼を見つめた。彼は、何も語ることはなく、ただ、ただ夜風に揺られていた。彼は、今にも消えそうだった。私は、何故彼が消えてしまいそうなのかを理解している。それは、私が、彼を好きになったからだろう。いつもそばにいる彼が私にとって、何よりも大切な存在であることに気づいてしまったから、彼はもうじき役目を終えるのあろう。

 もしかしたら、もうお気づきかも知れないが、彼は、私自身である。過去の私なのである。彼は、あの頃、引きこもって世間の陰口を言っていた私なのだろう。というか、私は世間の不満云々など、初めから言っていないのだ。私が、いつも蔑み、罵っていたのは、彼であり、私自身のことだ。私はそれに気づくことのないまま、彼を傷付け続けた。これは、私の大きな罪である。私が太陽へ身を晒したとき、彼と私は、何の作用か、離れてしまった。その日から私は、大切な彼を失っていたのだろう。彼のあの言葉は、このことを言っていたのかも知れない。「本当にごめん」その言葉しか私には出せなかった。彼は、何も言わず、まだ、揺られている。そろそろ、終わりが来るのだろう。もうじき彼とのさよならが。

 私は、目を瞑り、彼の音を聞こうとした。すると、彼の足音が聞える。一歩一歩、私へと向かってくる。音が、私の眼前に来た頃、私の体に、涼しい夜風が通り抜けていくのを感じた。私は、とっさに彼を抱きしめた、かすかなぬくもりを感じ、目を開けた時、彼はもういなかった。

 彼はもう私の前には現れることはないだろう。だがそれでかまわない。私は彼のぬくもりを、体に深く込めた後、私はその場を立ち去った。かすかに残る。彼の、私の、罪を残して。

 

読んでいただき、ありがとうございました。これは一応私小説みたいな物です。ですが、実際はとても静かな別れでした。こんなに劇的ではありません。今でも彼は私のそばにいる気がします。ただ、私が忘れたくないだけなのでしょうけど、、

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