再生する結界
城からは、長方形の石盤が飛び立つのが見えた。石盤が徐々に近づいてくると、それは大理石のテーブルであることが分かった。付属の椅子には、4人の人物が座っている。
全員日本人だ。
「天野峻岳さんに、リン・クラハースさんですね? お座りください。私はヴィアク・ルーセル。こちらであなた方の動きは捕捉していました。どうか、東京奪還に力を貸してください」
リーダーらしき女性が頼み込んできた。見た目は日本人だが、ヴィアクというのか。日系魔術師なのだろう。もうこちらの身元は割れていたか。
「もちろん協力します。ですが、こんな海上に城を建てて、どうするんです? 早く攻め込んだ方がいいかと……」
俺は空飛ぶ椅子に座りつつ、問いかける。
「バゼルの張った結界で、東京に上陸できないのです。仕方なく東京湾上に、私の城塞魔法で拠点を作りました。ここで砲台を作り、結界を破壊するつもりです」
「それなら無理ですね」
俺はきっぱりと断言する。こういうのは先に言っといたほうが良いだろう。
「なぜそう言えるのです?」
「さっきから15回は結界を破っていますが、すぐに再生してしまします」
「な……あの結界を破るほどの魔法を15連射も? 詠唱がありませんでしたが」
ヴィアクは驚いている。一方リンは、自分が褒められたわけでもないのに嬉しそうだ。
「詠唱、予備動作、儀式なしでの早撃ちが、私の得意分野ですので」
ヴィアクは感心したようにため息をついた。
「さすが、【神速速射】の異名は伊達じゃありませんね」
「まぁ、自分で名乗っているわけではありませんが」
「ですが困りましたね。一度破ってもすぐに再生する結界を攻略できるだけの魔法など、思い当たりません」
確かにそうだ。俺の早撃ちで対処できる範疇を超えている。
だが、策はある。
「私の分身が結界内にいます。内と外で同時攻撃すれば、破れるかもしれません。少なくとも、精鋭を何人か侵入させるくらいの隙は作れるはずです」