思わぬ近道
だが、そんなことは学院では日常茶飯事。気を取り直さねば。
「……ま、俺が討ち漏らすことはないから、お前の出番はないだろうな」
なんだか自信過剰な発言をしてしまったが、事実だ。
たかがワイバーン程度が、俺の早撃ちの網を掻い潜れるはずがない。俺は視認不可能な速さで麻痺魔法を連射し、ワイバーンを次々と撃ち落としていった。
「なんか、積み重なってません?」
「ん? 俺の実績がか?」
「違いますよ。ワイバーンの死体です」
確かに。周囲の海面を見渡すと、遺骸が堆く積み上がっていた。ワイバーンの死体って浮くのか。意外だな。
「このままじゃ船が身動きとれませんって。私が燃やしますね。聖魔法【浄華聖焔】」
リンが唱えると、たちまち白炎が現れ、ワイバーンの死骸を焼き尽くした。よほど高火力なのか、瞬時に灰になった。
「さ、これで通れますね」
「なんか、最初からお前に燃やしてもらった法が早かったな……」
「気にしないでください。先輩の規格外ぶりを相手に誇示するにはいい機会ですか
ら」
相手を刺激するだけのような気もするが、今はとにかく急がねば。俺はとにかく、今視認可能な敵に集中することにした。
3時間が経った。
いくら魔力でモーターを強化しているとはいえ、クルーザーでは日本はあまりに遠い。俺もリンも魔力切れの心配はないが、先の見えなさに、精神が磨耗してきた。
「ワイバーンは沸かなくなりましたけど、遠いですね。日本まであとどれくらいでしょう?」
「まだ紅海だからな。日本まではかなりかかるだろうな」
「っ! あれ見てください!」
リンが驚いたように声を上げるので、前を見やる。
いつの間にか巨大な石造りの門がそびえ立っていた。
「ゲートか」
これは好都合だ。このタイミングで現れたということは、日本に繋がる門だと考えてよいはず。図らずもショートカットができそうだな。