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東京陥落
俺の故郷、東京が陥落した。
やったのは魔術界の有名人、召喚術師のバゼル・メノ・ロッソだ。有名というか、悪名高いだけだが。
地獄へと繋がるゲートを開き、数多の悪魔や魔獣、悪神を呼び寄せたらしい。
「ルクレツィア、状況はどうだ?」
俺は先行させていた分身、ルクレツィアに問う。ルクレツィアは独立した人格を持つ、俺の外付け魔力貯蔵庫だ。魔力の塊である分身であれば、すぐに任意の場所に飛ばせるし、その気になれば視覚も共有できる。
俺は一刻も早く確認したい事実があった。
東京に住む家族の安否だ。
「主様の自宅は、全壊状態でした。その、残念ながら……ご家族は亡くなられていました。遺体はご覧にならない方がいいかと……」
「いいや、視覚を繋げ」
「ですが……」
「俺なら大丈夫だ」
俺は迷わず両親と妹の遺体を確認した。
あまりにも凄惨な状態。言葉も出ない。
だが、全力を以て理性を働かせ、感情の激流をねじ伏せる。
「よく分かった。ルクレツィア、バゼルにこれから言うことを伝えろ」
俺は、仇敵バゼルを必ず殺すと、決意した。