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何も実らない季節
散文詩
冬はわたしを孤独にするようだ。いや、孤独であることを知らしめるだけなのだろう。わたしには、温めるものが何も無いということだ。
寒がりなわたしは冬に耐えるだけで精一杯だから。
本当に、何も実らない季節だ。
わたしだって、それなりに年を越しては来てるから、季節の巡りくらいは知っている。知ってはいるが、この季節になると、次の季節がどんなだったかを、いつも忘れてる。むしろ明日の朝が来なくていいとさえ思っている。
だから記憶にすがりつく。
まだ少し、寒さがやさしい日々の記憶にすがりつく。
黄色の葉が風に舞うのを思い出す。枯れ木に残った、揺れる紅い葉を思い出す。その茶色いコートの背中を思い出す。落ち葉がきしむ、その足音を思い出す。
その前は、もう思い出せない。