マシンガンを乱射するご令嬢
ワンシーン小説1000字
王都内。
雲がかかった半身の三日月が見下ろす薄闇の中、純白のドレスを着て一人闊歩する者がある。
馬車が4台並べるほどの広い道路の真ん中を、かかとを小気味良く鳴らして向かい行くその先は、グレンダルト公爵家の別邸。この国では事実上、王よりも権力を持つグレンダルト公爵が王都のややはずれの区域に建築したその別邸は、まさに豪華絢爛。頻繁に有力者たちを集めては、その権勢を誇示していた。
優雅なオーケストラの旋律が邸宅の外まで漏れ流れてくる。大きな窓からは真昼のように明るいシャンデリアの光が差し、頻繁に沿い合う男女の影がそれを遮っては過ぎていった。
邸宅の門番が一人向かっくる女に気づいた。この邸宅の中で開かれている舞踏会に相応しい淑女には違いなかった。月明りを跳ね返す純白のドレスと肩まで露わな素肌、銀の髪飾りできれいにまとめ上げられた金色の長髪。きっと名のある貴族のご令嬢なのだろう。
が、肩に担いだ見慣れぬ大きな黒い影が気になった。剣よりも長く、槍よりも短いその黒いモノに刃はない。だが、直感で分かる。
物騒だ。
「そこのご令嬢。止まられ――ウッ!」
ダダダダダダダッ
門番はその破裂音に合わせて小刻みに踊ったあと、門の手前にある柱にもたれかかるように崩れ落ちていった。
純白のご令嬢はその足取りを緩めることもなく、身の丈に迫るほどのマシンガンを肩にかついだまま邸宅の門へと迫って行く。
・ ・ ・
公爵邸内。大広間。
ワルツに合わせて踊る美しき紳士と淑女たち。どこを向いても気品に満ちた者たち、貴族、豪商、地主、金持ち、金持ち、金持ち、金持ち。
踊り疲れた一組の男女が腰に手を回し合い、会場の外につながる扉へと向かって行く。
「僕の屋敷には専属のパティシエがいるんだ。きっと君も気に入るよ」
「まあ、素敵ね。パパが今日は帰らなくても――んぐべっ!!」
勢いよく開いた扉に吹っ飛ばされた男女は、食事テーブルの上に並べられていたパンプキンパイとマカロニグラタンの皿の中に顔を埋めた。
扉の奥に現れたのは、片側の足裏をこちらに向けて立った純白のご令嬢だった。
ダダダダダダダダダダダダダダッ
割れるワイングラス。飛び散るスポンジケーキ。崩れ落ちるテーブル。
けたたましい銃声と悲鳴の中で、マシンガンを振り回しながら闊歩する純白のご令嬢。
止むことのない銃弾の嵐。
広間の中央に立った純白の令嬢は一人舞う。
華麗に、舞って、舞って、舞って、
打ちまくった。
ダダッ・・・
銃声が止み、令嬢はマシンガンを肩に担ぐと、その桃色の薄いくちびるを小さく開いた。
「ひゃ、、ひゃっは……ぁ……」
( 了 )




