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一流大工ネージとクーギ

掲載日:2021/06/09

ここはモノづくりが盛んな街、モノツクだ。その中でも最先端の技術力をもつクリエイト州に、とある兄弟がいた。

「おーい、クーギ! 昼食いに行こうぜー!」

 休憩時間になったので、ネージはクーギを昼に誘った。二人はコンビニまで歩いていく途中で、いつも通り住民に声をかけられる。

「お、一流大工のネージとクーギじゃねえか! 今度もすごいのを建てるんだって?」

「おうよ! ま、俺達の腕にかかればちょちょいのちょいだけどな、な?」

「まあね。俺達からしたら、レゴで遊んでいるような感覚だもーんね」

 二人は誰もが認める一流大工だった。人気者の兄弟は、いつも周りから称賛の声をかけられていた。

「やっぱり、大工って仕事は何にも代えがたいよな、な?」

「そうだね。生きがいってやつだよねー」

 数日後、手がけていた仕事を終えた兄弟のもとには、休む間もなくひっきりなしに依頼がきていた。先日建てたクリエイトタワーが原因だろう。

 たくさんの依頼書の中身を確認し、今までに作ったことのないものを見つけた。巨人族からの依頼書だった。

「なになに? えーっと……、『今度旅行に行きたいから、おら専用の水筒を作ってほしい』、なんだとー!?」

巨人族の依頼自体初めてだったが、建物以外のものを作ったこともなかった。

「巨人族だから、大きさの合う水筒が売ってないんだ! そういうことだよな、な?」

「なるほど。面白そう。これを受けようかー」

 ネージとクーギは、翌日依頼をくれた巨人族の元へ行った。出迎えてくれたのは、巨人族の長、ビッグだった。

 ビッグはいった。「今度隣国まで旅行に行くのに、でっかい水筒が欲しいんだよぉ。おらこの国の川の水しか信用できねえで。一日で大体五十リットルくらい飲むから、その倍の量は入れられる大きさが理想だべ」

「……ってことは、百リットルってことか~?」

「わーお。そんな水筒作れるのかなー」

 ネージとクーギはワクワクしていた。大工としては一流だが、まだ建造物以外の「物」を作ったことはなかったからだ。

 一般的な大きさの水筒だと、金属を加工して作るのだが、今回はそうもいかない。重すぎて作業できないからだ。百リットルの水筒となると、竹をつぎはぎしながら作るほうがよさそうだった。

「トンテンカン、トンテンカン」

 ネージとクーギは一週間かけて水筒を作りあげた。

「これでどうだ! な!」

「これはいい。そう思うだろー?」

「おう、すげえなこりゃあ」ビッグも満足そうだ。

 しばらくしてビッグは旅行に行った。一泊二日の旅行だった。

 ビッグがクリエイト州に帰ってきた。ネージとクーギは「水筒の具合はどうだった?」と聞いた。

「まあ、水は漏れなかったが、二日目からはぬるかったよ。冷たい水がいつでも飲める水筒とか、作れねえかなぁ」

「そっか……。やっぱり竹だとぬるくなっちゃうか」

「なるほど。じゃあ今度はあれを使うかー」

 ネージとクーギは素材を集めに森に入っていった。

「俺たち大工を舐めてもらっちゃ困るな、な!」

「そうだ。想像を超えた水筒を作ってやるぞー」

 二週間後、出来上がった水筒を持ってビッグに会いに行った。ビッグはまた旅行に行くというので、持って行ってもらった。

 数日後帰ってきたビッグはいった。「この水筒はいいな! 完璧だよ。しかも中の氷が全然溶けないんだよ。こりゃあ、どういう仕組みなんだ?」

「だろ? その氷は、振動を与えれば与えるほど硬く溶けにくくなっていく、『地震氷』さ。普通なら手に入らねえし、手に入れたとしても硬くて割れねえから使い道がねえ。だが、巨人族の水筒にはぴったりのサイズだった。な?」

「そうそう。しかも水筒の素材は竹から『アルミ竹』に変更したからねー。これなら普通の氷でも溶けにくいし、氷なしでも大丈夫なんだよー」

 そりゃあすごい、とビッグは感心した。それから村の皆にもネージとクーギを紹介し、水筒の出来栄えを自慢していった。

 翌日、ネージとクーギはたまっていた仕事の依頼書を朝から読んでいた。ピラミッド型ホテル、世界最長一キロのすべり台、遊牧民の転がるおうち。だが二人は腕を組んで考え込んでいた。

「うーん。なんかさ、やろうと思うものがないんだよな、な?」

「なんかね。気乗りしないねー」

 ネージとクーギはその理由を考えた。ネージが何か思いついたようだ。

「俺らは大工だ。だから今までは建造物しか作ってこなかった。でも昨日作った水筒は、建物じゃねえ。『物』だ。今までと違って、新鮮だったんじゃねえか? な?」

「それだ。……なら、これからは『物』も作れる大工にならないかー?」

 こうして、ネージとクーギの新たな挑戦が始まった。





「おーい、ネージ! 昼飯食べに行かなーい?」

「おうよ! 行こうぜ!」

 コンビニに向かう途中で二人は住民に声をかけられる。

「お! 唯一無二の存在、『物作りもできる大工』じゃねえか! 今度もすごいのを作るんだって?」


おわり

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