私としましては、信じてもらはなくては
「えー? それはないよ。ないない」
まほさんは私の言葉を笑って否定する。
「いいえ、そうなります」
「いや、でもなぁ。歌煉さん車椅子だし。宝石とか無駄に高いもの嫌うし」
「…………」
だめですね。これだけでは信じてもらえないようです。なにか、他の証拠をつかまなくてはなりません。
「わかりました。では証拠を見つけてきます。待っていてください」
私は半ば不貞腐れた表情を作って、ズカズカと部屋を後にする。
「――あ、お帰り。詩織ちゃん。どうでした?」
優しいまなざし。まるで送り出した子供の帰りを待っていた母のような優しい笑み。この方は初めて見ますが、おそらく彼女が【東郷万里】と言われている人物でしょう。
「東郷さん。一つだけ、相談に乗ってもらっていいですか?」
「ええ。かまわないですけど」
「私、過去や未来を覗き見できるんです。それも結構近い、二日前後の出来事とかです」
「あらー、そうなのですか。すごいですね」
「東郷さんの過去を拝見してもいいでしょうか」
「ふふ、どうぞー」
「では、失礼します」
私は、彼女の体をじっくりと観察する。
え? 予言能力を使えって? いいえ、そんなことはできません。
あれ本の住人には有効でも、本のセキュリティにはむしろ無防備に等しく乱用はあまりにもリスキーです。ですので、私は勝手にハッキング一回につき一回までの使用権限とルールを作ってやっています。セキュリティに捕まって追い出されてブロックされてしまうと、二度とこの世界に入る言葉出来ず、まほさんには残念なお知らせをしなければならなくなってきます。
――はっきり言って、それが一番だるいです。
「見えました。東郷さん最近告白されたでしょう」
「ええっ!?」
顔が『ボッ!』という効果音がつきそうな勢いで真っ赤になる。
「な、なんであなたがそれを……し、知っているのですか!?」
「だから言ったじゃないですか。私は過去と未来を覗き見ることができるんです」