透明だった頃
世界が透明だった頃
空はとても綺麗だった
頭の上を通り過ぎる雲の群れは見上げると眩しくて
端っこは明るい陽光に溶けて柔らかく千切れて
顔を覗かせた太陽はいっぱいの色を飲み込んだ白で
ビルの向こうに消える空を端から端まで見渡して
そんな言葉を並べなくたって
青さは胸に突き刺さるようで
隠れた空を探しに走ったあの日々はどこへ行ったのかな
スニーカーの裏で蹴ったアスファルトの固さ
転んで擦りむいた膝の熱さ
橋の上に飛び出して見つけた空の青さ
見つけた空よりももっと広い空があるってことが
涙が出るほど嬉しかったあの日々は
世界が透明だった頃
空も
人も
日々も
世界も
今よりずっとずっと綺麗で
今はもう
その言葉しか思い出せない
僕が透明だった頃