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第8話 武器の現地調達による戦力強化

 俺も親父も、穴倉から出た俺達を出迎えた光景に圧倒されていた。

 そのせいで――少々周りへの警戒が疎かになり過ぎていた。


「お、おいいいぃぃぃ! 人間が逃げてるぞオォォォォ!」

「何イィィィ!? 逃がしたらダルマール様にぶっ殺されるぞおぉぉぉぉ!」


 そう、倉庫のような建物を出た所には、他にもいくつかの建物があった。

 それらに、別のオーガ共がいたのだ。

 奴らは俺らを見つけると、奇声で喚きながら駆け寄って来る。


「捕まえろおぉぉぉッ!」

「いや、脱走は重罪だぁ! 処刑して食っちまおうぜ! あいつが悪いんだからな!」

「! おおおおお! おめぇかしこいなああぁぁ!」

「それはいい! 生きたまま喰っちまうぞおぉぉ!」

「ヒャッハー! 踊り喰うぜ! 踊り喰うぜ!」

「踊り喰うぜーッ!」


 しかし本当にやかましい連中だ。

 知性のカケラも感じられない言動と見た目には辟易とせざるを得ない。


「まだいるのか……!」

「相手してやらざるを得んな!」

「ああ……! さっさと黙らせてやる!」

「まだ何が出てくるか分からん、王権(レガリア)の余力は残しておけよ!」


 親父の言う通りだろう。

 いざというときにMP切れでは笑えない。

 ただ、徴発(リムーブ)せずに相手を倒すことは、もったいないばかりではない。


 経験値は相手が強い方が得やすいため、徴発(リムーブ)しない方がレベルは上がりやすい。

 スキルについても、レベル制のスキルは改革(チェンジ)で合体させなくとも修練や経験を積むことによって成長する。

 むしろ地道な修練や訓練をすっ飛ばしてしまえる改革(チェンジ)が邪道、異質なのであって、正当な方法はそちらだろう。

 そして、そちらも相手が強い方がより良い経験となる。


「じゃあ、これだけ――!」


 俺は手近なところに姿を見せていた槍持ちのオーガに徴発(リムーブ)を発動。

 筋力増幅と槍術のスキルを奪い取った。


「重いイィィィ!?」


 そいつは相当重量のある金属槍を頭上でぐるぐる振り回していたが、スキルを奪うと重量を制御できずにずっこけていた。

 すかさず俺は、親父の槍術にオーガの槍術を改革(チェンジ)

 更に筋力増幅を下賜(グラント)


 親父のスキルはこうだ。


 所持スキル上限数 :3


 スキル1 :王の魂

 スキル2 :槍術LV20

 スキル3 :筋力増幅LV7


 ……槍術のレベルは上がらなかったか。まあ、レベルアップは近くなっただろう。

 本命は筋力増幅の方だ。これを渡しておけば――


「親父!」

「おうよ!」


 俺の意図を察してくれている親父は、ポンコツ化したオーガを自分の槍で突き刺す。

 筋肉の塊に深く突き刺さったスケルトンの槍は、威力に耐えられずぽっきり折れた。

 錆びていたし、もう武器としての寿命は限界だった。

 親父は武器を失ったが、何ら問題はない。

 目の前に武器はあるのだから。

 親父は地面に落ちたオーガの槍を広い、具合を確かめるように振り回す。


「問題ねえ! これでいけるぜ!」

「ああ。頼むぞ!」


 筋力増幅があれば、親父もオーガの重い武器を扱える。

 元の槍では武器の性能が心もとなかった。

 獲物とパワーが同じなら、槍術レベル20の親父に雑魚オーガが勝てる道理はない。

 これで俺達は、数に対して質で対抗できる。


 親父はオーガの槍を振り回しながら、手近なオーガに襲い掛かる。

 俺の所にも、数体のオーガがやって来る。


「オラアアアァァ! 首を叩き落してラグビーボールにしてやるぜぇぇぇ! 行くぜ栄光のトラアアァァァァイッ!」


 ラグビーとはなんなのだろう?

 こいつらはどうも、人の首を使った遊びが好きなようである。胸糞が悪い。


「うるさいんだよっ! 少しは黙ってろ!」


 俺は振り下ろされる大斧に紅く輝く魔石鋼(マナスティール)の剣を叩き合わせる。

 どろりと金属を変形させながら、火魔術の力を得た刃が斧を溶断した。


「何イィィィ!?」

「そらっ!」


 俺は左の剣で、オーガの脛を思い切り撃つ。

 痛みにうずくまったヤツの頭が下がる。

 切っ先の届く距離に落ちてきた頭を、右の紅い剣で叩き落した。

 オーガの体が、糸の切れた人形のように崩れ落ちる。

 焼け付いた首の断面から、じゅわりと赤紫の肉汁が滲み出ていた。


 ――一つ!


 直後に、大振りな片刃剣を装備したオーガが背後に迫っていた。

 そいつは巨体に見合わぬ跳躍をすると、全体重を乗せて剣を振り下ろしてくる。


「スラアァァァァム! ダァァァンクウゥゥッ!」


 俺はあえて避けなかった。

 右の魔石鋼(マナスティール)の剣の切っ先を、左脇を通して後ろに向ける。


「火を噴けっ!」


 俺の意志に応じ、剣先から火炎の弾が生まれた。

 それが迫るオーガに発射され、モロに直撃して弾き飛ばした。


「おおぉぉぉぉっ!?」


 オーガの悲鳴。どさりと地面に撃墜し、肉の焦げる嫌な匂いがする。

 魔石鋼(マナスティール)の剣に宿る火魔術スキルも、もうLV17になっている。

 ここまでくると、その機能は単に刀身を赤熱化させるだけではない。

 こうやって、剣の力で魔術を放つ事もできるのだ。


 この場合、俺のMPは消費しないので運用面でとても優れている。

 半面、武器に下賜(グラント)したスキルは使い込んでも成長しない。

 その点、自分自身が持つ場合とは一長一短だ。

 利便性を取るか成長性を取るか――である。


 俺は更に、火炎弾を倒れたオーガに連打。

 断末魔の悲鳴とともに、オーガは絶命して動かなくなる。


 ――二つ!


「よし――もらう!」


 俺は左に持つ剣を投げ捨て、地面に落ちた大型の片刃剣を拾い上げる。

 波打つような反りがあり、人の身では相当な力自慢でも両手でようやくという大物だ。

 左の剣は、地下でスケルトンから奪った錆びかけたものだった。これももう限界だ。

 造りのしっかりしたこの剣なら、強度は申し分ない。

 筋力増幅スキルで強化した俺なら、片手でも余裕で振れる。

 俺も親父も、武器の現地調達による戦力強化だ。


「おりゃああああ!」


 俺は左の大型剣を、手近に迫っていた大斧持ちのオーガに振り下ろす。

 真っ向から力で叩き込んだ。


「んぬぐうぅぅぅッ!」


 顔を真っ赤にし、大斧で受けるオーガ。拮抗するがややこちらが押している。

 俺はそこに、右の剣先から火炎弾を放つ。


「うごぉっ!?」


 ヤツは喰らって力が抜ける。

 そうすると、左の剣が力のせめぎ合いを押し切る。

 左の大型剣が、オーガの顔面を二つに割った。


「ぎょおおおおおっ!? いでぇえええぇぇ!?」


 オーガは顔から盛大に血を吹き出し、崩れ落ちていく。

 これで三つ! さぁ次は!?

 同じ頃親父も、数体のオーガを仕留めていた。


「やるな親父!」

「そっちもな! さぁ数も減って来たか!」

「奴ら、人間が逃げたとかって言ってたな――まだ他の人もここにいるかも知れない」

「残りを片付けて、ゆっくり探すとしようや」

「ああ、そうしよう!」


 俺達は合流し、肩を並べて話し合う。


「づ、づええぇぇぇあいつら! こ、ころされるうぅぅぅっ!」

「こうなったらあれよ! ヒッポちゃんにやらせるしかねぇぇぇ! いくぞぉぉ!」

「で、でもヒッポちゃんがケガでもしたら、ダルマール様に殺されっぞおぉぉ!?」

「どうせこのままでも死ぬっつーの! あいつら容赦ねえんだよーーッ!」

「お、おい待てよおおぉぉぉ!」


 残った二体のオーガは、何やら話し合うと背を向けて逃げ出した。

 そして、やや離れた厩舎のような建物に入っていく。


「……逃げたか?」

「逃がすか! 行くぞ親父」


 俺達はオーガが駆け込んだ厩舎に近づき――

 直後、轟音とともに厩舎の屋根が吹き飛んだ!

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