第74話 ヴェルネスタ改造
超貨物船内部――
内部に巣くうオーガの首領キャサリンを上手く焚きつける事に成功したヴェルネスタは、超貨物船がナタリーのいた屋敷を探し当てるのを待った。
以前マリンオーガの巻き添えで超貨物船に飲み込まれた場所であるため、行った事のない場所ではないはず。
にも関わらず探し当てるまでは結構な時間を待たされた。
どうにも、超貨物船の中枢と一体化しているキャサリンが眠っていた時にたまたま迷い込んだような場所だったらしい。
超貨物船にはこの海底世界の地図が記憶されていたはずなのだが、それには載っていなかったそうだ。
超貨物船に探知されないような特殊な結界のようなものが張られていたが、その効果が最近になって失われたのだろうとキャサリンは推測していた。
故に超貨物船が迷い込む事も、時間はかかったが再び探し当てる事も可能になったと――
どうでもいいが、あの見た目と喋り方で随分真面目な考察をするものだから、ヴェルネスタとしてはある種驚きだった。
どこかで馬鹿な事を言い出すに違いないと思っていたら、言わなかったのである。
ともあれ、ナタリーのいた屋敷を発見したキャサリンは屋敷の捜索に配下のオーガを送り込んだ。
普通のオーガでもなく、純粋なマリンオーガでもない第三のオーガ達は、特に問題無く泡の中に入って行き、屋敷を家探しして戻って来た。
「えええぇぇぇぇ~~~~!? 誰もいないですってぇ~~~!?」
キャサリンは報告を聞きガッカリした様子である。
オーガ達が屋敷を見に行ったが、中には誰もいなかったそうなのだ。
「へいボォォス! けど、こんなのがいましたぜ!」
と、部下のオーガが見せたのは山羊だ。
ナタリーがいた屋敷で飼っていたものだった。
「これぇ……? あたしは人間のイケメンが食いたいんですけどぉ?」
言いながらベロンと伸びた舌は、半分以上何か良く分からないカラクリで構成されていた。
それが山羊に巻き付くと簡単に持ち上げられ、キャサリンの口に放り込まれた。
そしてそのまま、骨ごとバリバリと咀嚼する。
あっというまに山羊が消えて無くなっていた。
「……うまいのか? それはよ」
「んーまあまあ。どけどやっぱり人間のオトコの方が美味しいわよね~。いないなんてがっかりだわ! マジ口の中がもうイケメンって感じになってたのに~! あーイケメン喰いたいイケメン喰いたい」
「「「「ひいいぃぃぃ~~! 喰わないでえぇぇぇ~~~っ!」」」」
「お前らの事じゃねえっつってんだろうがああぁぁぁぁっ!」
もはや見慣れたが、キャサリンの高速回転する刃がオーガ達をなぎ倒していた。
「「「「ぎゃああああぁぁぁ~~っ!」」」」
「ったく無駄に疲れるわこいつらの相手してると……はい修理修理ー!」
「…………」
見ているだけの方が更に疲れるんだが――とヴェルネスタは思うものの黙っておく。
「しかし参ったわねぇ。ねえヴェルっち、他に当ては無いのぉ?」
キャサリンのこちらの呼び方には構わないでおこう、と思いつつヴェルネスタは応じる。
「うーむ……ここらの事は俺もよく知らねえからな――連れて来られて間が無かったからよ」
「ええええ~~~……」
しょんぼりしつつ、キャサリンが操る鉄の触手はキュイイインと唸りながら部下のオーガの首と胴を接続していた。
首がくっついた部下のオーガは、その途端に喋り出す。
「そういえばボォォオスっ!」
「うん? なーに?」
「あの建物の地下は、何かでかい洞窟に繋がってそうですぜえぇぇぇ! 奥にゃ魔物もいそうでしたあぁぁぁ!」
「何ですって!? 早くそれを言いなさいよ!」
首が千切れていて言えなかったのではないだろうか――
あのオーガは首が繋がるとすぐに言ったのだから、言おうとしてはいたのだろう。その前に首を斬られただけだ。
しかしキャサリンにそれを言っても無駄であろう。ヴェルネスタは無視して話を進める。
「という事は、あいつらはその洞窟を進んで行った可能性もあるな――」
「そうね……じゃあその洞窟に探検隊を出しましょっか。誰か行きたい奴~~!?」
「「「「はいはいはいはいっ!」」」」
ほぼ全員のオーガが手を挙げていた。
「ヒャッハー! 探検だあぁぁぁー!」
「おやつは!? ボォォォス! 持っていくおやつを下さいぃぃっ!」
「馬鹿お前、魔物がいるんだろおぉぉぉ!?」
「おやつは現地調達だ! サカナより美味いかもなあぁぁぁ!?」
「なるほどおぉぉぉぉ! ヒャッハー! 楽しみだぜえぇぇぇっ!」
「それにボスから離れてりゃあ、その間は死なずに済むぜえぇぇぇ!」
「俺たちゃ自由だあぁぁぁぁ~~!」
「はいあんたとあんたはダメっ!」
ギュイイィィィン!
余計な事を言ったオーガは、即座にキャサリンの高速回転する刃が粛清していた。
「……まあ誰が行くかは知らんが――キャサリンちゃんよ、俺も行かせてもらうぜ」
「ええ? ヴェルっちも行くのぉ? 話し相手としては、この馬鹿共よりヴェルっちのが数倍いいんですけどぉ――」
「俺が行った方が見つけやすいだろ? 呼びかけりゃ答えて来るかも知れん」
と理由をつけるが、それは表向きの事。
ルネスを見つけたら即座に合流するつもりで、ヴェルネスタは探索に加わると申し出たのだ。
「まあそうねえ――」
「だろ? じゃ早速行ってくるぜ」
「あ、ヴェルっちちょっと待って!」
「?」
何だと尋ねる前に、意思ある剣と化した自分の身体――すなわち魔石鋼の剣をキャサリンの鉄の触手が掴んでいた。
そしてそのまま、キャサリンの巨大な口元に運ばれて――
「お……おいおいこりゃ何事だよ――!?」
喰う気か!?
「いいから静かにしてて。前から思ってたけど、その剣って華奢過ぎんのよねー。見てて不安なの。折れたらどうなるか知らないけど、折れない方がいいでしょ?」
「ま、まあな――」
実際剣が折れたら自分の魂も掃滅するのだろうか?
それは分からないが――確かに折れないに越した事は無い。
「だからね。ちょっと改造してあげるわ――うふふふ……強く美しく生まれ変わるのよヴェルっち!」
言いながら、キャサリンはぱっくんと意思ある剣と化したヴェルネスタを口に含んだ。
「ちょ……ちょっと待て――!」
キュイィィン! ガガガガガ! ゴゴゴゴゴ! ドルドルドルドルッ! ガキンガキンガキン!
キャサリンの巨大な口の中に放り込まれると――そんな様々な装置の音がした。
何か良く分からないものが、四方八方から迫って来るのだ。
「ぎゃああああぁぁぁ~~~~!」
しかしヴェルネスタの悲鳴は、周囲の騒音に空しくかき消されるのだった。
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