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第67話 キャサリンへの冒涜

 超巨大鮫の怪物こと超貨物船(メガロ・カーゴ)内部――

 そこでは、動力部と融合した事により円筒型の装置にめり込んで動けない巨大なオーガが、鼻歌交じりに食事をしていた。


「ん~フフフーン♪ フフフーン♪」


 人の体長は優に超える大きな鮫を、頭からバリバリ齧っていた。

 機嫌よく鮫を捕食しているかと思いきや――


「あー。マズッ!」


 べっ! と鮫の頭蓋骨を吐き出す。

 物凄い勢いで吐き出されたそれに、部下である第三種のオーガが直撃された。


「ぐげえぇぇぇぇっ!?」


 冗談みたいに吹っ飛び、壁に激突していた。

 巨大なオーガは何事も無かったかのように、次の鮫を手に取って、バリバリと齧り出す。


「はぁ……気分を盛り上げてみても味は変わんないわよねぇ~。でも、サカナを食べた方が頭が良くなるし、ダイエットにもいいだろうし……頑張るのよキャサリン! 美は一日にして成らずなの! あーでもたまには人間のイケメンをバリボリ頭から貪り食いたいわぁ~! あーもう、マズッ!」


 べっ!


「「ぐげえぇぇぇぇっ!?」」


 また同じ光景が繰り返されていた。

 しかしどうでもいいが、あの化物はキャサリンと言うらしい。

 この世の全てのキャサリンに対する冒涜だろう、と潜んで見ていたヴェルネスタは思うのだった。

 自身の生前の記憶の中で、キャサリンという名の女性と懇ろになった事もある。

 その美しい思い出をその化物の顔で上書きしないで頂きたいものだ。

 今後キャサリンという名を聞いたら、こちらの化け物のほうを思い出してしまいそうである。


(……しかし、こうして隠れ続けてても埒が空かんな――何とか動いてみんとな)


 ここの所、オーガ共に見つからないように隠れて様子を窺う日々が続いていたが――

 特に外部からの変化は無かった。そろそろ自分から動くべき時だ。

 ヴェルネスタは今、王の魂を魔石鋼(マナスティール)の剣に下賜(グラント)され、意思ある剣インテリジェンスソードと化している。

 流石に無機物はバリバリ齧られたりはしまい。

 何とかあのキャサリンなる化物を唆し、ルネスと合流しなければならない。

 ヴェルネスタはキャサリンの前に姿を現す事を決意した。


「よう――キャサリンちゃんよ。イケメンをお探しかい? だったら俺に心当たりがあるぜ?」

「えっえっえっ!? 誰か何か言ったの!? イケメンに心当たりがあるって――本当!? 誰の事!? ちょっとあんたら、聞いた!?」


 と、右に並んでいる部下のオーガ達に尋ねる。

 話を振られたオーガ達が四人ほど、顔を見合わせて話し合う。


「へいボオォォォス! 聞こえましたっ!」

「おいいぃぃぃっ! 誰が言ったんだあぁぁぁ?」

「イケメンって誰のこったアァァァ?」

「うーむむむぅぅぅ……!?」


 一通り考えて、ぽんと手を打った。


「「「「ああ、俺の事かあぁぁぁ!」」」」


 案外と、オーガというのは自分の容姿に自信がある様子である。


「うるせぇボケがあぁぁぁ! 死ねええぇぇぇぇっ!」


 キャサリンが歯車やカラクリで形成された腕を一振りすると、巨大な鋸のような刃が一瞬にして現れた。

 カラクリ仕掛けで取り出したのだろうか。

 ギュイイィィィン! と凶悪そうな音を立て、ギザギザの刃が高速で動いて回転していた。

 そしてそれを、容赦なく先程の四体のオーガに叩きつけるのだった。


「「「「あぼああぁぁぁぁぁ!?」」」」


 薙ぎ払われて上下真っ二つになって転がるオーガ達。


(……あーあー。馬鹿と馬鹿の世界はこうなるって事か。素晴らしき主従関係だねえ)


 ヴェルネスタとしては、呆れて物も言えない。

 自分はとっくに彼等の頭上に姿を見せているのだが――

 気づかれないばかりか、何故か勝手に粛清が始まって四体のオーガが死んだ。


「あーあ。ったく――あんた達がつまんない事言うからよ。血圧が上がるじゃないの。はい修理~」


 と、キャサリンが言うとその上半身が生えている円筒型の装置から、鉄の触手のようなものが何本も飛び出して来た。

 それは転がったオーガ達の死骸に巻き付くと上半身を持ち上げ下半身を立たせ、くっつけようとする。

 別の触手がキュイイィィィンと音と火花を立てながら、上と下を繋ぎ合わせて行った。

 すると――


「「「「ボオォォォォス! ごめんなさいぃぃぃッ!」」」」


 完全に死んだはずのオーガが再び動き出したではないか。これは流石にヴェルネスタも驚きを禁じ得なかった。


(……なんだそりゃ!? やっぱこのオーガ共、馬鹿は馬鹿そうだが、これまでとは一味違うぞ――!)


 普通のオーガやマリンオーガは、馬鹿なに死に方でそのまま死んでいたはず。

 しかしこのオーガ達は、行き返って来るのだ――馬鹿さが致命傷にならないとは、オーガらしくないではないか。

 キャサリンは修理と言っていたが、本当に物のように修理ができてしまうとは……


「……はいはい。あんたら馬鹿だけど馬鹿な子ほど可愛いっていうしね。バーカバーカ」

「「「「ボオォォォォス!」」」」

「……それにしてもイケメンはどこに――」

「「「「俺の――?」」」」

「また殺されてぇのかあぁぁぁぁ!」


 ギュイイィィィン!


 またオーガ達が真っ二つになった。


「ったく……はい修理修理ー」


(……やれやれ延々繰り返すつもりかこいつら)


 さすがに付き合っていられないので、自分から呼び掛ける事にする。


「こっちだよ、上を見てみな」

「はぁん? あれ、剣が浮いてるわねえ……何あれ?」

「その剣が喋ってんだよ。さっきからな」

「きゃあああぁぁぁっ!? オバケ―ーーーーッ!」


 悲鳴を上げたキャサリンが、今度は逆の腕からも回転刃を出して振り回した。


「「「「うげぼああぁぁぁぁぁ!?」」」」


 今度は左側に並んだ部下のオーガ達が千切れ飛ぶ。今回は完全なる巻き添えであった。


「何でそうなる……! やれやれ、話が進まんぞこりゃ」


 オーガと会話を試みるというのは、無謀な事だったかも知れない――

 ヴェルネスタはちょっと後悔したのだった。

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