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第64話 同型機のティアナさん?

 襲ってきた敵を倒し終えると、俺はナタリーさんそっくりな彼女に声をかけた。


「大丈夫ですか? 怪我は?」


 この人、ナタリーさんと違って機工人形(オートマトン)ではないようだが――

 ナタリーさんと瓜二つという事は、俺より少々年齢は上だろう。


「ええ平気。助けてくれてありがとう――あたしはティアナよ。敬語なんていいから、普通にティアナって呼んでくれる?」

「ああ――分かった。俺はルネス・ノーティス、こっちはナタリーさん」

「初めまして。どうぞお見知り置きを、同型機のティアナさん」

「いや、だからあたし普通の人間だし――そういう言い方をするって事は、あなたひょっとして機工人形(オートマトン)?」

「その通りでございます」


 メイド服のスカートの端をつまんで、ぺこりとお辞儀。


「凄いわね――こんな、人にしか見えない水準の機工人形(オートマトン)だなんて……こんなに凄い技術は初めて見たわ、あたし」

「なあ、何でナタリーさんとティアナがこんなにそっくりなのか、何か分からないか?」

「そうね。分からないでもないわ」


 と、ティアナは頷く。

 分からないと言われることを覚悟していた俺にとって、それは意外な返答だった。


「えっ!? 分かるのか!? どういう事なんだ?」


 俺は驚いてティアナに尋ねる。


「まあ、似せたんでしょうね。あたしに――と言うよりあたしのご先祖様にね」

「?」

「そういう反応って事は、あなた達――やっぱりうちの国の人間じゃないのね!? いったいどこから来たの!? もしかして『帰らずの大迷宮』の外から?」


 国? ここには国があるのか!?

 確かに、これまで見た泡の中の陸地には、人間の住んでいた痕跡はあったのだが――

 国と言うからには、多くの人間が今も生き残って暮らしている!?

 何にせよ嬉しい情報だ。ここから更に上に行くための情報も得られるかも知れない。


「あ、ああそうなんだ――! 外から『帰らずの大迷宮』に飛ばされて、それでこの下から上がって来た所でさ――!」

「下から上がって来た!? 凄いわ、本当に下の階層なんてあるのね! 遥か昔にあたし達の祖先は、初代ティアナに導かれて登って来たって言うけど……!」

「初代ティアナ?」

「ええ、あたしたちの国の初代の女王よ。さっきも言った通り、人々を導いて下の層から登って来たって伝わっているわ。そして――あたしはティアナ四世、彼女の子孫よ。昔の肖像画を見た限り、あたしってそのティアナ一世にそっくりなのよね。彼女――ナタリーも初代ティアナの肖像に似せて造られたんでしょうね」

「まあ、そのような制作秘話が――教えて下さり、どうもありがとうございます」


 ナタリーさんが無表情にお礼を言った。

 制作秘話なのはそうだろうが、自分でそれを言われるとどう反応していいのやら……


「つまり、初代への尊敬を込めてナタリーさんは造られたと……」

「尊敬かどうかは分からないわよ。役目はメイドなんでしょう? 逆に女王を快く思っていないから、顎で使ってやりたいって事かもしれないし」


 ティアナはひょいと肩をすくめる。結構サバサバした物言いだな。


「なるほど……あ! でも先祖が女王様って事は、君も――!? すいませんでした、俺普通に喋って……!」

「いいのよ、あたしがそうして欲しいって言ったんだもの。これからもそのままでお願いね? あなたはうちの国の人間じゃないんだから、立場なんて関係ない。あたし達は対等なはずだわ。気にしなくていいのよ」

「……わかった。それでさ――俺まだまだ聞きたいことがあるんだ。俺達ここから更に上に行って『帰らずの大迷宮』を出たいんだ。上に行く方法を知らないか? それに上の海にとんでもなくデカい鮫の怪物がいたけど、あれは何なんだ? 俺の親父がアレに飲み込まれちまって、何とか助けたいんだけど何か分からないか?」

「ええと――色々あるのね……とにかくお父様を助け出して、この階層を抜けて更に上に行きたいって事ね?」

「ああ、俺は絶対地上に帰らないといけない。何か分かる事があったら教えてくれ!」


 真剣に俺が言うと、ティアナは嬉しそうに笑みを見せた。


「ふふふっ。やっぱり外から来た人は違うわね。見ているものが全然違うわ」

「? どういう事だ?」

「うちの国の人間のように、押し込められたこんな箱庭での縄張り争いになんて囚われていないって事よ。本来はそうあるべきよね」


 ティアナの言っている事は、俺にはよく分からなかった。

 その真意を尋ねようと思ったのだが、それは奥の方から聞こえる声に中断された。


「急げ――! もし姫様の身に何かあったら、我々は生きてはおられんぞ……!」


 いくつもの足音と、それを先導しているらしき男の声。それが遠くから響いてきた。

 焦ってティアナを追いかけてきたのか?


「追手が来たわね――ねえルネス。もし良かったらあたしに付いて来てくれない? あなたの疑問には答えてあげるし、協力もするわ。ただし、そうするためにはあなたにも協力してもらわなくちゃいけないと思うけど……お願い、手を貸してほしいの!」


 と、今度はティアナが真剣な瞳で俺を見てくる。

 ここは少しでも手掛かりを得るために、付いていく他は無いか――

 それに少し話しただけだが、ティアナは信用していいように思えた。

 俺の状況や目的を聞いて、共感してくれたいたように見えたから。


「分かった、一緒に行くよ」

「ありがとう! あ、それからナタリー。あなたは顔が見えないように隠しておいてくれるかしら? あたしにそっくりだと何かと騒がれそうだから」

「かしこまりました」


 ナタリーさんはどこからともなく取り出した頭巾を深くかぶり、顔や髪を隠していた。


「さぁ行きましょう。ついて来て」


 俺達はティアナに続いて歩き出す。

 暫く奥に入って行くと、兵隊の一団と遭遇した。


「姫様! ご無事で何よりです!」


 先程の声の主である隊長らしき男が、ティアナを見つけて声を弾ませた。


「ええ。ごめんなさい、心配をかけたわね」

「滅相もございません。ささ、城にお戻りを。陛下もご心配なされております」

「分かったわ。ですがこの方達も同行頂きます。警備用の機工人形(オートマトン)に襲われたあたしを助けて下さったの。お礼をしなければなりません」

「ははっ! 了解いたしました」


 ティアナの言葉に、隊長は深く頭を垂れたのだった。

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