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第62話 単なる同型?

 ナタリーさんとアーマータイガーを伴って、洞窟を旅する事体感で十日程――

 携帯して来た食料なども心もとなくなって来た頃の事だった。

 俺達の行く道は行き止まりとなり――

 その行き止まりの地点には、大きな鋼鉄製の扉がそびえ立っていた。


「扉だ……! ということは、この近くには人がいるのかも知れない!」


 洞窟を進み始めて、初めて見た人の手を感じさせる物だった。

 必然的に俺の気分もパッと明るくなる。

 下手すればこのまま永遠に洞窟を彷徨うのかと不安になっていた所だった。

 ナタリーさんもアーマータイガーもそういう気持ちは分かってくれず平然としていたので、俺は密かに寂しくなっていた所だったのだ。


「叩き金は付いていませんね――」

「まあ――玄関とかじゃないでしょうし」

「中の方に訊ねて参りましょう」


 いるのか――? こんな所の扉に? まあ見ていよう。

 ナタリーさんが、手を体の前で組んだいつもの歩き方で、しずしずと扉に近寄った。


「失礼いたします」


 物言わぬ扉に、ぺこりと一礼。

 そして扉をトントンとノックした。


「不躾で申し訳ございません。洞窟の先からやって来たものですが、よろしければ中に入れて頂けませんでしょうか?」


 トントン。トントン。

 やはり返事はない。


「いるとしてももっと奥じゃないですか? 街っぽい所があればですけど」

「変ですね。中から声は聞こえるのですが」

「ええっ!? 聞こえるんですか!?」


 俺には何も聞こえないのだが。


「メイドですから」


 というより、機工人形(オートマトン)だからだろうが。

 人間より遥かに耳がいいんだな。


「で、なんて言ってるんですか?」

「きゃー助けて何をするの、あたしをどうするつもり――だそうです」

「ダメじゃないですかそれ!」

「そうなのですか?」


 首を傾げられてしまう。


「そうですよ! 早く中に踏み込みましょう! 扉は壊していいですから!」

「では――失礼いたします」


 ベキィ! と音を立てて、鋼鉄の扉が丸ごと引き剥がされた。

 流石ナタリーさんの腕力は半端ではなかった。

 純粋な力では、俺を遥かに上回っているのだ。


 俺達は扉の奥に踏み込んだ。

 だが、中身は広い空洞。ナタリーさんの言うような光景は見えない。

 そしてその先に行く道も無い。行き止まりだった。


「行き止まり――?」


 と、ナタリーさんがしずしずと右奥の壁際に歩み寄る。


「こちらの奥から聞こえて参ります」

「隠し通路か……!? だったらこれも壊して奥に――!」

「かしこまりました」


 ドゴオッ! とナタリーさんの拳が壁に突き刺さり――力任せに壁をこじ開けた。

 やはり推測の通り、奥に続く道がある。隠し通路だ。

 それは良かったのだが――


 ビーッ! ビーッ! ビーッ!


 その場にけたたましい警笛が鳴り響いた。

 と、同時に――


 天井から何か、丸まった大きなものが降って来た。

 それはドスンと地面に落ちると、モゾモゾと四肢を伸ばして立ち上がる。

 獣のような四つ足ではあるが、体や足も全てがカラクリ仕掛けのようである。

 これも機工人形(オートマトン)の一種か?

 ナタリーさんやアーマータイガーのような、有機的な雰囲気が一切しないが。

 落ちて来たそれは三体だ。俺達に三方向から迫ろうとするが――


「きゃー!? 何か増えた!? 何なのよ!」


 聞こえた! 奥から声!


「先に向こうに! 合流しよう!」

「お供します、ルネスさま」


 通路の奥に走る俺達に、アーマータイガーも付いて来る。

 俺達が通路を抜けると、そこはまた別の広い空洞だった。

 そしてそこに――先程の四つ足の機工人形(オートマトン)が四体に、足が車輪になった案山子のような機工人形(オートマトン)が二体。

 そしてそれらによって壁際に追い詰められている、銀髪の美人の姿が――


「ええぇっ!? どういう事だよ……!?」


 俺はその人物を見て、思わず声を上げていた。

 そっくりなのだ――ナタリーさんに。

 向こうもナタリーさんを見て驚いたようだ。


「な――!? あ、あたしにそっくり……!? どういう事!?」

「単に同型なのではないでしょうか?」


 ナタリーさんが全くの無表情で応じた。

 ああ、そういえばあの館にはアーマータイガーが二体いたわけだが、それと同じように自分と同じ機工人形(オートマトン)が二体いると思ったのか。

 確かにそう考えると特段驚くような事ではないかも知れない。


「ど、同型って何よ? 人間は型じゃないわよ?」


 という言葉から考えるに、彼女は人間だ。

 そうなると、彼女とナタリーさんが似ているのは驚きである。

 何の因果があって、彼女達はこんなにも瓜二つなのか。


 だがしかし、それを深く考えているよりも――

 今はこちらに降りかかろうとする火の粉を払うのが先決だった。


 俺は縮地を発動し、ナタリーさんに似た美人とそれに迫る機工人形(オートマトン)達の間に立った。


「話は後で――! とにかく今は、こいつらを片付ける――!」


 俺はそう宣言した。

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