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第61話 オーガなのに有能?

 部屋に入ってきた異相のオーガ達は、マリンオーガの死体を見て舌打ちをする。


「チッ! またこの下等生物かよおおォォォ! たまには人間とか食いたいぜえええぇぇ!」

「いやこれお前の食いモンじゃねえだろおぉぉ?」

「そうだぜえぇぇぇ! ボスんとこに持って行かねえと、こっちが食われちまうぜ」

「ああ、ボスはいっつも腹ペコだからなああぁぁぁ~」

「でも俺達も腹ペコだぜえぇぇ~?」


「「「…………」」」


「よーし、食っちまうか!」

「ああ、どうせボスは壁にめり込んで動けねえからなああぁぁ」

「バレねえバレねえ! よし食うぜえええぇぇ!」


「「「いただきまーす!」」」


 異相のオーガ達はマリンオーガの死体を貪り食い始めた。


「……」


 ヴェルネスタから見れば共食いにしか見えないが、どうもこのオーガ達の意識では、自分達とは違うという認識のようだ。

 何オーガというのかは気になる所である。

 名称不明のオーガ達は、マリンオーガを骨まで食い尽くすと部屋を出る。

 ヴェルネスタはその背後に付いて、外に出る事に成功した。


 上手く出られたが――見た所先程の部屋と似たような雰囲気だ。

 通路は左右前方に分かれておりどこに行くか迷うが、一先ずオーガ達が向かう右方向に尾行して

みる事にした。

 オーガ達はこちらには気が付かないが、ヴェルネスタは気が付いたことがある半分有機体で半分人工物のようなこのオーガ達だが、それぞれの背中からなにか線のようなものが伸びているのだ。

 何かに繋がっているらしく、長い長い線である。


「……」


 それを見て、ヴェルネスタは思う。

 この線が切れれば、このオーガ達は――

 今までの経験則として、死ぬのではなかろうか……


「……」


 試してみようか、と思う。一体なら問題あるまい。

 生態を知っておくことは後の役にも立つだろう。

 ヴェルネスタはオーガから離れた所で、オーガの体から伸びて床に這う線を切断した。

 魔石鋼(マナスティール)の剣の刀身で、線は簡単に切る事が出来た。


「ん――? 何かおかしいな……?」

「おお……! お前コード切れてんぞコードおおぉぉぉ!」

「ええっ!? マジかアァァァーー!?」


 と、線の切れたオーガは絶叫し――


「まあ、後で新しいのに繋ぐぜぇぇぇ」


 と事もなげに言った。


(何ィ!?)


 内心ヴェルネスタは驚愕していた。

 どうでもいいような下らない理由で自爆して死ぬのがオーガのはずだ。

 こんなこれ見よがしに伸びている線など、絶好の引き金のはずなのだが……


(こいつら、今までのオーガ共とは違うぞ……下らねえ理由で死なねえのか――こりゃ本当に上位種なのかも知れん……油断できねえな)


 ヴェルネスタは少なくともこの種類のオーガに対する認識は改める事にした。

 油断せずに後について――

 通路をしばらく行くと、唸り声が聞こえて来た。


 オオォォォォ――! ウウゥゥゥ――!


 恐ろしげな声だ。壁が震えるような振動がする。


「ああーボスが怒ってんぞおぉぉ?」

「大丈夫だアァァァ。ボスは壁から動けねぇだろぉぉ?」

「そーだそーだ。帰るぜええぇぇ」


 オーガ達は止まらず歩を進める。

 恐ろしい唸り声は、どんどん近づいて来て――

 開け放たれた扉の、巨大な広間の前で音量が最大になる。

 中に何かいる――

 オーガ達は前を素通りして行くが、ヴェルネスタとしては中が気になった。

 だからオーガを付けるのは止めて、広間に入ってみる。

 かなり広い空間だ。

 そして――奥の方の壁が何か光っている。

 青白い輝きだ。それは、壁に埋まるように設置された巨大な円筒形のものから発せられている。

 ヴェルネスタはその円筒形のものからは、何か強大な力を感じたが――

 それ以上に、目立つものがある。

 円筒形の装置から、巨大なオーガの上半身が付き出しているのだ。


(でかい……! こりゃあのダルマール以上だぞ――!)


 基本的な姿はマリンオーガに近いが、先程の者達のように半分人工物のような部品が体を形成している。そして他の個体よりは、やはりずば抜けて大きい。

 これがボスと呼ばれていた者か――!


「ちょっとおおおぉぉぉぉぉ!? お腹空いたって言ってるでしょオオォォォォ!? 何で誰もご飯持ってこないのよおおぉぉ!? お腹空いたお腹空いたお腹空いたああああぁぁぁっ!」


 身をよじってバタバタと暴れているが、それ以上は動けないらしい。

 見た目凶悪なオーガなのに、女言葉でひたすら駄々をこねる姿は、見ていて気持ち悪い。

 他のオーガもその場にいるのだが、遠巻きに眺めて知らんぷりをしていた。


「私結構外のやつ捕食してるつもりなんですけど!? 何でここに届かないの!? あんたら勝手に食べてるでしょ!? ねえ、ねえ!」


 ぷるぷるぷるぷる、とその場のオーガ達は首を振っていた。

 まあ――嘘だろう。先程実際に現場を見た。


「いいもんいいもん、もっと捕食するから! 食って食って食いまくるから! あああああお腹空いたアアアアア!」


 ギャーギャー喚いているが、その言葉に多少引っかかる。

 もっと捕食する――ということは、このオーガの意志で巨大鮫の動きを制御できるという事なのだろうか? 

 そうだとしたら、上手くこのオーガを利用すれば、外に出られるのかも知れない。

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