第6話 食人鬼オーガ
くそったれな生き物ども、登場!
俺と親父は見つけたキャンプ地を基点に、探索と自分達の強化を進めた。
どのくらいの日数が経ったのか、正確には分からないが、体感では7日程だろうか。
俺達のステータスは順当にアップしていた。
まず俺のステータスを記しておく。
名前 :ルネス・ノーティス
年齢 :17
種族 :人間
レベル:15
HP :182/182
MP : 58/58
腕力 :90 (6)
体力 :75 (5)
敏捷 :105(7)
精神 :45 (3)
魔力 :60 (4)
※()内は素質値。レベルアップ毎の上昇値。
所持スキル上限数 :10
スキル1 :王権(※固有スキル)
スキル2 :二刀流(剣)LV12
スキル3 :格闘LV10
それから大活躍の魔石鋼の剣
魔石鋼の剣
所持スキル上限数 :2
スキル1 :火魔術LV17
スキル2 :なし
最後にウチのガイコツ親父。
名前 :ヴェルネスタ
年齢 :??
種族 :スケルトン
レベル:15
HP :261/261
MP : 0/0
腕力 :60 (4)
体力 :105(7)
敏捷 :60 (4)
精神 :30 (2)
魔力 :15 (1)
所持スキル上限数 :3
スキル1 :王の魂
スキル2 :槍術LV20
もうかなり周辺のモンスターは楽勝になっていた。
レベルの方もスキルの方も、上りが悪くなってきている。
それにあらかたの魔物は狩り尽してしまい、敵がいなくなっていた。
魔物というものは、自然の中に満ちる魔素や瘴気などの力の流れの吹き溜まりから、自然と発生してくるものである。
だがその自然な発生速度というものは、手当たり次第に魔物を狩りまくる俺達にとって十分ではない。狩り過ぎて枯れてしまったのだ。
だから今俺達は、他にキャンプ地となりそうな場所を探し、かなりの遠出をしていた。
ごつごつした岩を組み合わせたような壁面のエリアで、天井も岩山のようだ。
そして――
「光だ――なあ親父、上から光が漏れてるぞ!」
ということは、この上は地上か!?
そんな希望が湧き上がって来る。
「ああ――ちっ。目に沁みやがるぜ」
「いや目がないだろ、親父は。ホネだぞ」
「うるせーな気分的なもんだよ!」
「でも、目もないのに何で見えてるんだろうな?」
「知らん。心の目で見てるんじゃねーの?」
「適当だな……これで本当に元王様なのか。まあ、自分でも誰の子か分からない隠し子を量産してるんだから、適当じゃないわけはないよな」
「フッ。クリューの種馬たぁ俺の事よ」
「良かったな、ホネになったからもう種付けの必要はないぞ?」
「腹も空かんし喉も乾かんのは便利なんだが、メシも酒も女も楽しめねえんだなー……それはそれで寂しいもんだ」
「生身の体が欲しい――と?」
「いい体がありゃあな。だが結構レベルも上がっちまったからな」
「まあ考えておく。とにかく光が漏れてくるってことは、地上が近いかも知れない。出口を探すぞ!」
「がってんだ!」
俺達は俄然元気になり、上への道を探し始める。
やがて、上の方から漏れてくる声に気が付く。
それは、悲鳴だった。
「うぎゃあああああああっ!」
何だ!? 人の悲鳴!?
俺達の外にも人が!
悲鳴を上げた男の声に加え、ヒャハハと野太くはしゃぐような声もいくつか。
知性をまるっきり感じない、不愉快な声である。
「あヒャヒャヒャヒャ――! 死んだ? こいつ死んだ?」
「ああ、死んだなこれは」
「じゃあ食っちまおうぜぇ! ヒャッハー! 久しぶりの人間のニクだー!」
「おい待てよぉ! その前に食前の運動だ! サッカーしようぜ! ゲヘヘヘヘ!」
「おうけ~ぃ! よーしじゃあボールはこいつの首だな、フェフェフェフェフェ!」
それから上の方でドタバタが始まる。
ゲラゲラ笑い合う不愉快な奇声と、ドンッ! ドンッ! と何かがぶつかる音。
「くっ――何者だ、何をやってる……! サッカーって何なんだ?」
「知らんよ。ずいぶん楽しそうだが、ロクなもんじゃなさそうだぜ……!」
楽しみのために人を踏みにじるような奴は、クズである。
そんなものの犠牲者は、俺の村だけで沢山。
俺としてはもう二度と見たくはない。
「声はあっちの方向だな」
「ああ……! 急げ親父!」
俺達は乱痴気騒ぎの音を頼りに走り続け――
やがて、外からの光が漏れる階段を見つけた。
かなり幅が広く、造りのしっかりした石階段だ。
声もすぐ近くに聞こえる。
「おら行くぜぇ~! 走れイナズマうぉぉぉぉぉ~!!」
ドシンッ! と一際大きい壁にぶつかる音。
「あ~あ、はずれぇ! そんな強く蹴ったら、ボールがダメになるだろぉ! ゴミみてえな人間は脆いんだからよぉ!」
「へっへへへ……! わりぃわりぃ」
「おい、地下に落ちちまったぞぉ! 取って来いよ」
「おうよぉ~! まだ2対1だ、負けねぇぞ~」
そんな会話を聞きながら俺は見た。
石階段の上から、何かが落ちてくるのを。
それは――人間の首だった。
恨めしそうなその顔は、何度も強く殴打されたように、ひどく損傷していた。
人間の首を蹴って遊んでたっていうのか……!
「……この――! どいつがやったんだ、俺が叩き殺してやる……!」
首を拾い上げ、俺は怒りに声を震わせた。
「おい。キレるのもいいが、無茶はするんじゃねえぞ」
「ああ分かってる!」
「お~いサッカーボールちゃ~ん!」
そう言いながら上から魔物が姿を現した。
人より遥かに大きな背丈に、全身を覆う剛毛。肌の色は赤みがかっている。
やや猫背気味の二足歩行で、恐ろしいくらいに全身の筋肉が発達していた。
鋭い目つきや、耳まで避けたような口元は凶悪そのもの。
頭には太い一本角がある。
「何だこいつは……!」
俺はこいつを見たことがなかった。
「オーガだな。別名食人鬼――珍しい種族ではあるが……脳ミソはお察しのようだ」
オーガは首を抱える俺を見つけると、不思議そうな顔をした。
「あれあれぇ~? サッカーボールが二つあんぞぉ?」
「黙れ――この下種め」
「ヒャッハー喋るボールだぁ! よこせぇ!」
オーガが俺に手を伸ばしてくる。
俺は素早く親父に持っていた首を投げると、両の剣を引き抜く。
右の剣は引き抜かれると紅く赤熱して輝く。
実に使い勝手がいいことに、こいつは鞘に収めると放熱を抑えてくれるのだ。
「奇遇だな! 俺の目の前にもボールがあるみたいだ!」
俺は殺意に満ちた目でヤツを睨みつけた。
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