第48話 上位種族マリンオーガ
あの馬鹿丸出しの奇声が聞こえてきたのは、泡の外側だった。
オーガ共は水の中にいた。
俺の知っているヤツらとは少々外見が違っており、体表に青い鱗が生えている。
そして魚のような尾びれや背びれがあり、手足には水かきが。
半魚人? ――いや半魚オーガか……?
「おい親父――変なのがいるぞ……」
「ああ、ありゃオーガかぁ? ヒレがあるな」
やつらは水の中で三叉のモリを持って、それで何やら丸いものを打ち合っていた。
その遊びが白熱しているのか、奇声を上げて大騒ぎしていたのだ。
「ヒャッハー! 走れイナズマ! うぉぉぉぉぉ~!!」
……どこかで聞いたセリフだ。
ともあれ叫んでいたそいつの渾身のショットは大きく逸れて、泡の中に入って俺達の足元に転がって来た。
俺はそれを見て――舌打ちをした。
「やっぱりオーガはオーガだな……クズ共め――!」
人の頭蓋骨だった。
多少見た目が違っても生態は似たようなものらしい。
「あーあ、思いっきり外しやがってよぉ!」
文句を言いながら、こちらに近づいてくるオーガが一体。
そいつが泡の目の前までやって来て、中の俺に気が付いた。
「おおおおお~! 人間だぜ人間んんん~! 珍しいなあぁぁ~! おーいみんな見ろよおぉぉ~! 新しいボールの元だぜぇぇぇぇ!」
「おおおおおお~マジだ!」
「人間見たのなんて久しぶりだなぁ~!」
「よっしゃー! 殺して食って頭はボールだ! ったく人間て奴は捨てる所がねえぜ!」
「じゃあ行くぜお前らああぁぁぁ~!」
「「「ヒャッハー!」」」
例の知性のカケラも感じない奇声を上げて、奴らが次々泡の中に飛び込んでくる。
そして、俺と親父を取り囲むのだ。
その数は5――いや6体だ。
「はぁ……」
俺は露骨にため息をついた。
折角『光輪の階段』を登って上層に辿り着いたのに、またこいつらの相手とは。
「あれあれあれ~? 何ため息ついちゃってるんでちゅか~?」
「ゲヘヘヘヘ。しょうがねえさこれから死ぬんだ、怖くてビビってんだよ」
「うるさい! こっちはまたお前らオーガ共の相手だって、気が滅入ってるんだよ! 話しかけるな! 気持ちの悪い鱗なんか生やして!」
俺が吐き捨てると、向こうも怒り出した。
「あああぁぁぁん!? テメー俺達をオーガと呼びやがったか!? あんな下等生物共と一緒にしてくれやがるとはいい度胸だなあぁぁぁ!?」
「はあ? どう見てもオーガだろう、お前達」
「バッカがよく見ろコラ! この鱗! 背びれ! 水かき! 俺たちゃ雑魚のオーガ共から進化した上位種よ! 選ばれしスーパーエリートだ!」
「その名もマリンオーガとは俺達の事よ! 二度とオーガと呼ぶんじゃねえ! マリンを付けろマリンを!」
「知るか。そんなに自慢ならさ、さぞかし普通のオーガより強いんだろうな? なら見せてみろよ。上位種様の能力ってやつをな――」
俺は右の祈りの剣と左の魔石鋼の剣を構える。
「なら教えてやるぜえぇぇぇ! 俺達は、海に愛され海に生きるマリンオーガだ!」
「俺達の主戦場は海! 普段も海に住んでる!」
「ああ。だからどうした?」
「陸地は苦手なんだよオオォォッ!」
「ぐええぇぇぇ――長居し過ぎた、もうやべぇ……!」
「うぐぐぐ……! ぐるじびいいぃぃぃ……!」
「ダメだ、もうもたねえ――死ぬうううぅぅ!」
奴等、俺と一太刀も交えずバタバタ倒れて行く。
「……なるほどな。バカさ的な意味でも上位種だと……」
「ああ、進化してるぜ――間違いなく」
「ったく何なんだこいつらは……頭痛がする」
「とにかくルネスよ。水魔術を持ってないか見てみろよ」
「ああ、そうだな――」
俺は泡を吹いて倒れている馬鹿共の一体を『王の眼』で見てみる。
スキル1 :筋力増幅LV15
スキル2 :槍術LV16
スキル3 :水魔術LV12
お、あるな! 良かった良かった。
「王権――徴発!」
しかし、俺の王権は不発だった。
「……あれ? スキルが奪えない……!」
「何? 固有スキルでもねえのにか?」
「ああ、そうなんだ……!」
何事だ、何なんだこいつらは――!
実は王権の効果を受け付けない何かがあるのか?
俺はもう一度『王の眼』で見てみる。
今度は、何も見えなかった。
「何なんだこいつ……!? 今度は何も見えなくなった!」
俺は少々驚いて、声を上げていた。
「『王の眼』で見て、何もか?」
親父はホネの手をホネのあごに当てて言った。
「ああ、そのつもりだったけどさ。何か分かるのか?」
「うむ……ルネス。それな、もう死んでるんじゃねえか?」
「……はぁ!? 早過ぎるだろ! ホントに馬鹿だなこいつらは!」
「それより、まだ生きてる奴から早く水魔術を取っておけよ」
「わ、分かった!」
俺は急いで生き残りを探し、何とかそいつから水魔術LV13をせしめた。
結局俺に水魔術のスキルを渡しに来ただけだったな、あいつら――
本当にアホでバカで、何の救いも無いくそったれな生き物どもだ。
「……もういい、とりあえず探索を続行しよう」
「そうだな。アレについて語る事は無いわな」
「ああ。俺達は何も見てない。たまたまそこに水魔術スキルが落ちてた事にしよう」
「了解だ」
俺と親父は、再び気泡内部の探索を開始した。
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