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第37話 決戦開始

「お、オーガ共が攻めて来たぞおおおぉぉぉ! 凄い大群だ!」


 近くの大通りの方から、切羽詰まった男の叫び声が聞こえた。


「――来たか……! 今度は手加減なしだ。あいつは逃がさない……!」

「もう、こんな時に来なくてもいいのに……!」


 と、レミアが少し唇を尖らせていた。


「仕方ないさ。あいつらに人の都合を考える脳味噌なんかあるわけないからな。さあ、行くぞ――!」

「うん、分かった!」


 俺達は声のした大通りに出て、叫んでいる男に声をかけた。


「オーガ共が来たのは、どっちの方向ですか!?」

「あ、君はルネスさん……! また、街を護ってくれるのか!? 奴等は神子の館に向かって左手です!」

「了解! まあ見てて下さい、逆にボロボロにしてやりますから!」


 俺は努めて明るい声で応じる。

 その方が相手が落ち着いてくれるだろうと思ったからだ。


「おお……さすがルネスさんだ……!」

「こんなに余裕があるなら、きっと大丈夫だよな――!」

「そうだ! ルネスさんなら、今度もダルマールを返り討ちにしてくれるさ!」


 この間の一件とカイルの演説で、俺の顔はすっかりこの街の人達に覚えられている。

 英雄扱いの俺が余裕の態度を取る事で、皆に安心感を与える事が出来たようだ。

 この場はこれが多分、正解だろうと思う。


「レミア、すぐ向かうぞ! ほら、背中!」

「うん!」


 俺はレミアを背負うと、即座に縮地を連打して街外れへと高速で移動した。

 街の兵士達は、結界の内側の最前面に集合しようとしていた。

 そして街の外には、オーガ共が雑な隊列でこちらに迫っているのが見える。

 奴等が移動してくる際に上がる土埃が、物凄い量であることが見て取れた。


「よくもまあ――あんなにわらわらと……」


 見た所、奴らの数は百は下らない。

 もっともっと大量だ。これはひょっとして千匹の大台に乗っているかも……

 流石はオーガの首領と言うだけあり、ダルマールの動員力は凄いものがある。

 完全なる数の暴力だろう。

 ならばこちらはそれを、強力な少数精鋭の力で打ち破ってやろう。

 数の暴力に対し、質の暴力というものを見せつけてやる!


「ルネス! とうとうこの時が来たね……」

「カイル――ああそうだな!」


 俺は頷く。カイルだけではなく、コークスさん、レントンさんに走爬竜(ラプトル)化した親父も一緒だった。

 一応酔っぱらって使い物にならないような奴はいないようだ。


「ルネス。スケルトンに戻してくれ、頼むぜ」


 親父はスケルトンのホネの入った袋を咥え、いったん結界をくぐって外に出た。

 内部でスケルトンに戻しても、結界に弾かれて出られないからだ。


「よし。王権(レガリア)――徴発(リムーブ)下賜(グラント)!」


 カタカタと動き出した魔石鋼(マナスティール)混じりの骨が、人型に組み上がっていく。

 スケルトンが組み上がると、親父はコークスさん達に発破をかけた。


「よっしゃ! さぁお前ら覚悟はいいな!? お待ちかねのオーガ退治の時間だぜ? 今までの恨み辛みも全部、奴らに叩き付けてやれよ!」

「ヴェルネスタ殿……勿論ですとも。私は柄にもなく興奮してきましたぞ――!」


 コークスさんは既に何か赤色に近い光のヴェールのようなものに包まれていた。

 これが、勇気の大斧に下賜(グラント)怒髪衝天の効果だ。

 心からオーガ共を憎むコークスさんの怒りが、そのまま力となるはずだ。


「こちらもですよ――! やってやりましょう!」


 レントンさんの眼も燃えていた。


「さぁ行こう、僕らの手で街を護るんだ。結界の中に閉じ籠るのではなく、この手で敵を排除してね。今日がその第一歩となる――そうしなければならない」


 珍しくカイルも少し興奮気味だ。


「ルネス。ボクも頑張るから、絶対勝とうね!」

「ああ勿論だ! よし皆、外に出て迎撃するぞ!」


 俺、親父、レミア、カイル、コークスさん、レントンさん。

 この六人が結界の外に出てオーガ共を待ち構える事にした。


 そして、人間とオーガ共との決戦の火蓋が切られる――


 前に出て行ってオーガ共に接敵すると、奴等は大量発生したイナゴのように、俺達を取り囲んで群がって来た。

 とにかく目先のものにしか注意がいかないのだ。

 俺達を囲む最前線の馬鹿なヤツらは、ご馳走が現れたと喜びの声を上げるのだった。


「ゲヒャヒャヒャヒャ! おい外に出て来た馬鹿がいるぞおぉぉぉ~!」

「ヒャッハー! 新鮮な人間だあぁぁぁぁ! 美味そうだなああああっ!」

「今日はいくらでも食っていいって、親分の許可が出てるぞおおおぉぉぉ~!」

「ウフェフェフェフェ! じゃあさっそく行くぜえぇぇ! 手を合わせて下さい! ぱっちん、ご一緒に!」


 一体の号令にその場の全員が手を合わせた。

 何がしたいか知らんが――


「「「「いただ――」」」」


 縮地! 俺は剣を抜刀しつつ発動した。


「「「「きま――ぐげぐごげぴぷじゅっ!?」」」」


 何が起きたかと言うと、はしゃいでいたうざったい馬鹿どもの首が次々飛んだ。

 俺が縮地の速さを乗せて、縮地斬りでヤツらを屠ったのだ。

 レミアが俺に打ってくれた祈りの剣は、純粋な剣の切れ味も凄まじいものがあった。

 俺は今まで生きて来て、こんなに凄い切れ味の剣は初めてだ。


「おおおおお~!? お前らあぁぁぁ~! 」


 一列後ろの馬鹿どもが、惨劇を見て声を上げる。


「さぁ――次はお前らだ! どんどん来い! 死ぬ前に言いたい事があるんなら、今言っておけ! お前らの命乞いは受け付けない!」


 俺はそう宣言して、不敵に笑った。

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