第34話 魔石鋼《マナスティール》のスケルトン
それから、更に二日が経ったレミアの店の工房で――
「よしっ! 出来たあああぁぁぁぁっ!」
レミアが意気揚々と出来上がったばかりの武器を掲げた。
今度の武器は大剣と弓である。
なら、こいつらの銘は勇気の大剣と勇気の弓だな。
俺は早速スキルを下賜して武器を完成させた。
勇気の大剣
所持スキル上限数 :4
スキル1 :大剣術LV35
スキル2 :自己再生(中)
スキル3 :凍結魔術LV25
スキル4 :筋力増幅LV20
勇気の弓
所持スキル上限数 :4
スキル1 :弓術LV35
スキル2 :自己再生(中)
スキル3 :爆裂魔術LV25
スキル4 :筋力増幅LV20
勇気の大斧に下賜していた怒髪衝天は一つしかないので、そこは筋力増幅にしておく。
自己再生も(高)はチャーミーちゃんから徴発したもの一つしかなかったので、一般のスライム系から集めたものを下賜した。
武器の性能としては、勇気の大斧に多少及ばないかもしれないが、それでも申し分のない能力を備えている。
やはりレミアの頑張りのおかげで、所持スキル上限数が4もある事が大きい。
これでこの武器達は、永きに渡ってセクレトの街と住民を護る力になるはずだ。
戦う勇気さえあれば、この武器は誰だって強くしてくれるのだから。
「よし――! これでカイル達に渡す武器は完成だな……!」
「ああいい出来だ。こいつが結界の代わりにこの街を護るだろうさ」
「ダルマール共がもう一回来たら、これで返り討ちだな。今度は逃がさない、全滅させてやる……!」
俺はバシッと拳を掌に打ちつける。
「あんまり張り切り過ぎるんじゃねえぞ。主役はこの武器を使った住民達だからな。これさえあれば街は安泰であることを見せてやらにゃならん」
「分かってる。カイルには武器を扱う人間を選んでおいてくれるように頼んである。後で寄越すってさ」
「そうだね。少し使い慣れて貰っておく方がいいもんね」
「ダルマール共も、もうじきやって来るだろうからな。準備は整えておかないとだ」
「ええと、じゃああと出来るのは――ヴェルネスタさんの骨を修復してみる? このままじゃ戦えないよね?」
「まあ……折れてるからな、頭蓋骨以外」
それはもう、これでもかという位に。いわゆる複雑骨折というやつか。
「おっ! とうとう俺の復活の時が来たか! 頼むぜ、前よりカッコよくしてくれよ!」
壁の棚でしゃれこうべがカタカタ揺れている。
「カッコよく? どうしよう、どうすればスケルトンってカッコよくなるのかなぁ?」
「いや俺に聞かれても――まあ親父の言っていることは無視して、とりあえず動けるように出来ればいいと思うけど。レベルも上がってるし、捨てるには惜しいからな」
「……ま、仕方ねえさそれでいい。真の男のカッコよさってのは、内面から滲み出るもんだからな」
「う、うん……じゃあボクなりに修復してみるね。ルネスも手伝ってくれるかな?」
「ああ勿論。けど――実際どう修復するんだ?」
「まだ少し魔石鋼が余っているから、折れた所を魔石鋼で接合するの」
「なるほどな。よし、やって見るか――」
そして、俺達は親父のホネの修復作業に取り掛かった。
折れた骨の部分を溶けた魔石鋼の小さな玉に刺し、逆側も同じように刺して接合。
そして魔石鋼を冷やしつつ、形を整え滑らかにする。
それを何度も繰り返し、くっついた骨にしていくのだ。
結果、骨。魔石鋼。骨。という感じで、骨の間に魔石鋼が斑に挟み込まれたようなものが生産されて行く。
「おいルネス、ちょっと魔石鋼に漬けるのが早くねえか!? 骨が溶けてんぞ骨が! おおおおぉいい! 燃える燃える! もっと冷ませって!」
「うるさいなあ、大丈夫だって」
「大丈夫じゃねえっての! 端っこが焦げてんじゃねえか!」
「黒くてカッコいいぞ? 親父の望み通りだろ?」
「何がだよ。明らかにミスりましたってな風にしか見えんぞ」
「いいから静かに見てろよ。気が散るだろ」
「待てええぇいっ! それ関節の向きが逆だろ! それじゃ出来上がってもマトモに動けんって!」
「はははは……二人とも仲好いよね――」
とレミアに呆れられつつ、親父の修復作業は進んだ。
半日以上は費やしたが――結果、見事に魔石鋼による骨接ぎが完成した。
「よしできたぞ。どうだ親父!」
「どれどれ――」
修復した骨の山の上に、親父の頭蓋骨を乗せてやる。
するとカタカタと、人型に組みあがって行った。
ところどころに煌めく魔石鋼と俺がミスったお焦げが、斑に骨を彩っていた。
見た目的には前より賑やかになっているな。体の三分の一近くが魔石鋼だ。
所々ピカピカしているし、所々黒ずんでいる。
それに加え、余った魔石鋼の護符を、レミアが頭蓋骨の部分に接着していた。
「わっ! 良かったあ、人型に戻ったね!」
「おお! ちゃんと復活したか、良かったな親父!」
「ああ復活はいいが……あーあー結構な個所が焦げてんじゃねえか」
と親父は不満そうだが、体を構成する材質が変わったことで、能力にも変化が表れていた。
名前 :ヴェルネスタ
年齢 :??
種族 :マナ・スケルトン
レベル:28
HP :560/560
MP : 40/40
腕力 :140(5)
体力 :224(8)
敏捷 :112(4)
精神 : 84(3)
魔力 : 56(2)
所持スキル上限数 :5
スキル1 :王の魂
スキル2 :槍術LV33
スキル3 :筋力増幅LV18
種族がマナ・スケルトンというものになっていた。
素質値が敏捷以外軒並み1上がっており、所持スキル上限数も2も伸びている。
更には0だったMPも若干だが備えるようになっている。
これは――俺の祈りの剣以上の大幅な強化だな……!
スケルトンは、体の材質を変えると強くなるんだな――
魔石鋼恐るべしだ。
性能を伝えてやると、親父は満足そうに下顎のホネをカタカタいわせて笑みを表現していた。
「フッ……ご苦労だったな二人とも。ありがとよ」
現金な親父だな。まあ強くなってくれれば俺も助かるので、喜ばしい事ではあるが。
――と、そこへ店の敷居をまたぐ来訪者の姿が。
「やあレミア、ルネス君。武器造りはうまく行っているようだな」
温和に笑みを浮かべているのは、レミアの父、神官長コークスさんだった。
その横にはカイルと、初めにこの町に入る時に会った兵士のレントンさんがいた。
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