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第33話 勇気の大斧と祈りの剣

「よし、じゃあこいつに下賜(グラント)して、武器を仕上げるぞ」


 俺は魔石鋼(マナスティール)の大斧に、ストックしておいたスキルを矢継ぎ早に下賜(グラント)して行く。


王権(レガリア)――下賜(グラント)! 下賜(グラント)! 下賜(グラント)! 下賜(グラント)!」


 四連打! そして完成したセクレト防衛用の武器が、これだ――


 所持スキル上限数 :4


 スキル1 :斧術LV35

 スキル2 :自己再生(高)

 スキル3 :怒髪衝天LV15

 スキル4 :雷光魔術LV25


「武器スキルを武器に下賜(グラント)すれば、誰が持ってもそのレベルの腕になれるから――持つ人間を選ばない。それに自己再生を付けておけば、傷ついても勝手に武器は修復する。だから、錆びたり折れたりで無くならない」

「うん――この先ずっとこの武器が街を護る力になるんだね」

「後の二枠は戦力強化だな。雷光魔術の力でダルマールの奴にもダメージを与えられる。怒髪衝天は更に身体能力を上げてくれるはずだ」


 怒髪衝天は、爆裂魔術の同レベル掛け合わせの限定条件で現れたスキルだ。

 怒りの力が肉体を強化するらしい――

 この街にオーガ共に怒っている人間はごまんといる。

 その怒りが、この武器の使用者に更なる力を与えるはずだ。


「誰が持っても強くなり、傷ついても修復する。無論経年劣化する事も無い――拠点防衛には最適だな。上手い王権(レガリア)の使い方だ、ルネス」

「ああ。この斧は敵と戦う勇気さえあれば誰にでも力を与えてくれる――要はここだ」


 俺は自分の胸をトントン、と指す。


「だったら、この斧は勇気の大斧って銘がいいよ! ね、そうしよ?」

「なるほど銘か……そういうのもいいな。じゃあこいつは勇気の大斧だ」


 これからはカイル一人に負荷がかかる生体結界ではなく、この勇気の大斧と住民自身が街を護って行ってくれればいい。

 だが、これだけで終わらせるつもりもない。

 一つだけでは数が足りない。もう二、三個は同じような武器を遺して行かないと。


「よし、じゃあ俺カイルに預けてるスキルを返して貰いに行ってくる。悪いけどレミアはこの調子で次の武器を造ってくれるか?」

「うん! 四個くらいは造ろうって言ってたもんね」

「ああ、あと三個目標だな。材料的には足りるかな?」

「大丈夫! だけど――あと二個かな。実はね、もう一つ武器が出来てるんだ」

「おお凄いな――どれなんだ?」

「うん。これ――」


 レミアが工房の棚から取り出したのは、鞘に入った片手剣だった。


「おっ今度は片手剣か――」


 これも、剣の柄の部分や刀身の中央部分に、魔石の護符がちりばめられていた。

 俺はその詳細を確認しようとした――


 祈りの剣

 所持スキル上限数 :4


 スキル1 :恋乙女の祈り(※固有スキル)


 名前が魔石鋼(マナスティール)の剣ではなかった。

 祈りの剣……? 固有スキルがあるからか?

 そして、その名前が――恋乙女の祈り?


 恋乙女の祈り :思い人の無事を祈る清らかな心の結晶が力を持ったもの。

         ルネス・ノーティスが装備時のみ、腕力と敏捷の素質値+1。

         所持スキル上限数+2


「……すごいな」


 俺は思わず唸る。恋乙女の祈りの効果が凄い!

 素質値と所持スキル上限数が上がるとは、こんな効果は見た事がない。

 それに名前と効果を見るからに明らかに――

 レミアは俺の事を――その……そう言う事なのだろう。


「ごめんね。貴重な材料なんだけど――どうしても一本はね、ルネスのための剣を打ちたいなって思って……もし良かったらルネスが使ってくれない? 良く出来たと思うんだ」


 レミアめ、意外と平気そうな顔をして――と思ったが、そうだ。

 俺は王の眼でスキル名も効果もばっちり見えているが、レミアには見えていないのだ。

 ただ手応えとして、良く出来たと感じるくらいで――

 これは、黙っておいた方がいいだろう。恥ずかしくて、俺からも言い出せない。

 勿論、気持ちは凄く嬉しいのだが――。

 親父も目の前にいるのだ。せめて言うなら、あの親父がいない時がいい。

 聞かれたら、後で何を言われるか分からない。


「ああ。良く出来てるよ。じゃあせっかくだから、これは俺が使わせてもらう。ありがとう、レミア」


 効果を考えるに、どう見ても俺専用だからな。

 それにレミアの心がこもったこの武器だ。他の奴には触らせたくない。

 今まで使っていた、オーガからせしめた大型剣は廃棄にしよう。

 そしてこの祈りの剣と魔石鋼(マナスティール)の剣の二刀流で行く。


 俺が祈りの剣を装備すると、何か体がドクンと震えた。

 力が漲って来る。それに体が軽い。今ならいくらでも早く走れそうな気がする。

 俺は何事かと、自分のステータスを確認してみた。

 そして理解する。

 腕力と敏捷の値が、レベル分だけアップしているのだ。

 つまりそれぞれにプラス30である。

 それだけ急激に上がれば、体感でも感じられたのだ。


 素質値が+1になることにより、それまでのレベル分も一気に上積みになる。

 レベルが上がれば上がるほど、その恩恵が大きいという事だ。


 そして俺自身の所持スキル上限数も+2されて10が12になっていた。

 これも、ある意味素質値上昇以上に凄い効果だ。

 増えたスキル枠に強力なスキルを用意できれば、俺の戦力は激増するだろう。


 やはり凄い効果だ。ありがとう、レミア。

 この武器は、大切にさせてもらうことにしよう。

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