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第29話 粉砕骨折

「ぐぶぶぶぅゥゥゥ……! 鎧なんて要らねえぇぇぇ! 俺自身の体が最強の鎧になるゥゥゥ! メタああアァァァる、ダルマアアァアッァル!」


 更に大きくなった金属質の巨体で、ダルマールがびしりとポーズをとる。


「野郎――バカのくせに芸だけは達者だな!」

「ホネは折るか蹴って遊ぶもんだアァァァ! 折ってやるぜええぇぇぇ!」


 ダルマールは飛び跳ねて、体をぐるんと、球状に丸めた。

 変質した金属質の体であるから、まるで一つの大きな鉄球である。


「地獄のハイパーボウリィィィィング! ピンは全部薙ぎ倒すぜぇぇぇぇ!」


 オーガの世界の遊びの事を例えているのだろう。

 意味不明な内容だが、とにかくダルマールはそのまま転がり出した。

 猛スピードで、ヴェルネスタに迫る。


「ちいぃぃぃぃっ!」


 槍を支えにして反動で大きく跳び、ヴェルネスタは何とか回避する。


 が――


「ぎゃああああぁぁぁぁっ!」

「ま、まだ死にたくないいいぃぃぃ!」

「た、助けてくれええぇぇ!」


 ダルマールが勢い余って、乱戦するオーガ達とセクレトの兵士達に突っ込んだ。

 兵士たちは悲鳴を上げるが――


「お、親ぶうぅぅぅぅん! 止まって止まっでええぇぇぇぇ!」

「流石親分だぜぇぇぇ! ひでええぇぇぇぇぇぇ!」

「ス、ストライイィィィィィク!」


 オーガ達も当然巻き添えである。

 何人もの兵士もオーガも、ダルマールの下敷きになった。

 その場をひとしきり蹂躙すると、ダルマールは丸まった状態から戻り――


「あああああぉぉぉぉ! お前らああぁァァァ! 何死んでんだおおおいぃィィィ!?」

「……お前が轢き殺したんだろうが――」

「てめぇぇぇぇ! てめぇが避けるからだろうがアァァァ!」

「無茶言うな、タダで当たってやれるかよ!」

「もう一丁だああぁぁァァァ!」


 ダルマールが再び丸まり、ヴェルネスタに迫った。


「おい皆結界の中に入れ! 外よりはまだマシだ! また轢き殺されるぞ!」


 ヴェルネスタは戦うレミアや兵士達に忠告した。

 目標を外れれば、ダルマールはどう転がるか分からない。

 また先程のように、兵士たちが巻き込まれてしまうのは避けたい。

 せめて彼らが結界内に退避できるまでは――食い止める他が無い!


「でえぇぇぇぇぇい!」


 真っ向繰り出す突きで、転がる動きをくい止めようと試みた。

 が、真っ向からの力比べは流石に無謀過ぎた。

 十秒近くは何とか堪えたが、ヴェルネスタの槍は弾かれ、大きく仰け反る。

 目の前にはもう、巨大な鉄球と化したダルマールの姿が。

 何とか横に飛んで避けようと姿勢を制御したが、完全には難しかった。


 ボギボギィッ!


 嫌な音を立てて、ヴェルネスタをかすめてダルマールの体が通り過ぎる。

 足を轢かれた――!

 ヴェルネスタの両足が、膝のあたりで折れて泣き別れてしまった。


「くぅっ……! こいつぁ――」


 何とか兵士たちの巻き添えだけは避けた。

 皆素早く反応して、結界内に下がってくれていたから。

 しかし両足は完全に折れた。

 もう立ち上がる事すら、難しくなってしまった。

 立てかけた槍に掴まり、なんとか身を起こすのが限界だった。


「ゲエェッヘヘヘヘ――」


 ダルマールは更に体を丸め鉄球と化し、ヴェルネスタの体を轢き潰して行った。

 腰、肩、胸――と、どんどん潰され粉々になって行く。

 最後には、頭蓋骨だけが残る。


「この野郎! やるならさっさとやりな! もったいつけやがって!」


 完全に全て潰されたら、王の魂も消滅してヴェルネスタの意識も消えるのだろうか。

 もしそうなら、死ぬという事だ。

 一度暗殺され死んでいる身としては――そこまで未練があるものではないが。

 王権(レガリア)を継いだルネスの行く先を、見て見たくはあったが――


「ヴェルネスタさん!」


 レミアはヴェルネスタに駆け寄ると、残された頭蓋骨を抱え上げて胸に抱く。


「馬鹿な、止せレミア! お前も巻き込まれるぞ!」

「で、でも……ルネスのお父さんを見捨てるなんて、ボクには……!」

「だからって、共倒れになりゃ本末転倒だろうが!」

「嫌! 嫌ですっ! まだ魔石鋼(マナスティール)の作り方を教えて貰ったお礼もしてないのに……!」


 案外強情な娘だ。芯があるのは頼もしい事だが――


「纏めて轢き殺おおオオォォォす!」


 ボウリングとやらの形態になったダルマールが、突進してくる。


「ええぇぇいッ!」


 レミアはそれに大金槌を撃ち込んで勢いを食い止めようとした。

 しかし――それはヴェルネスタが先程試みたこと同じ。

 すぐに押し切られてしまう――頭蓋骨だけになったヴェルネスタにはそう見えていた。


「くっ……! うううぅぅっ!」


 レミアの表情が歪む。もう危ない――

 だが、レミアが押し切られることは、結果的には無かった。

 その前に応援が来たからだ。

 突風が吹いたかと思うと、その姿がレミアの真横にあった。

 そして一緒にダルマールを抑えてくれる。

 それは、レミアにとっては最も安心で、頼りになる存在――


「ルネス――! 戻って来てくれたんだねっ!」

「ああ、待たせて悪かった! 後は俺に任せろ!」


 ルネスはきっぱりとそう、言い切った。

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