第22話 収集
「はあああああっ!」
俺は左右の剣を総動員し、魔物の群れを斬り払っていく。
スケルトンやスライムやゴブリンなどが、バタバタと倒れて行く。
――よし、こっちは片付いた。
「親父! そっちはどうだ!?」
近くでは、スケルトン親父が同じように魔物の群れを蹂躙していた。
その動きは鋭く、機敏。
本来のスケルトンはやや鈍重だし、動きもふわふわしているものだ。
それがこのキレのある動きなので、何故か少し笑えて来る。
「ああ、もう終わるぜ――っと!」
親父の連続突きを浴びせられ、魔物たちがどんどん倒れ――全滅した。
「あいよ一丁上がりっと。よっしゃ、じゃあ回収と行くか」
「ああ。急いで集めて、また別の地点に行くぞ」
魔石を回収するのだ。
これまでは親父が趣味で集めているだけだったが、今回は俺も率先して集めている。
こうやってモンスターを倒しているのは、理由がある。
一に魔石を集めるため。二にスキルを集めるためだ。
魔石はレミアに作ってもらう武器の材料にする。
これで魔石鋼を製造して武器にするのだ。
そうすれば、スキルを宿す事が出来る武器になってくれるはずだ。
レミアにはこれまで親父が集めて来た魔石や、ヒッポちゃんやチャーミーちゃんの魔石も全部預けておいた。
今頃魔石鋼を造ろうと頑張っているはずだ。
そしてスキルを集めるのは、そのレミアが造る武器に宿すためだ。
目当ては武器系のスキル、それからスライム系の敵が持つ自己再生だ。
あとはオーガ共がよく持っている筋力増幅もだ。
それらを持っているモンスターは着実に徴発している。
俺と親父の戦力アップも必要なので、剣術と槍術は俺達が貰っているが。
モンスターには格闘術持ちが多いので、現状特に格闘術の集まりがいい。
「な? 初めから魔石集めといて正解だったろ?」
と、親父が手を動かしながら話しかけてくる。
「ああ、そうだな」
魔石は人間の社会なら換金したり、武器に錬成したりできるが、モンスターばかりの迷宮の中では意味があるのか疑問だった。
人などいないと思っていたのだ。
だが『帰らずの大迷宮』内はとんでもなく広い、まるで一つの別世界だった。
その中には人がいて、街もあり――そうなると魔石にも意味が出る。
「中に人がいて街もあるとは思わなかったからな」
「ああ、その点は俺も同感だな。しかもこれが上に何層もあるってんだろ?」
親父が骨だけの指で天井を指す。
無機質な青緑の石だけがそこに見えた。
「カイルの話によるとな。とんでもない規模の話だよな」
「しかも上に行く道がいきなり無いと来た。前途多難だぜぇ」
「けど何とかできるはずだ、王権なら」
『光輪の階段』を封じている生体結界は、固有スキルではなかった。
つまり徴発もできるし改革も出来る。
そう改革だ。
それで別物に変えてしまえば、生体結界は失われ『光輪の階段』が復活するのだ。
「お前の話通りなら、確かにそうだろうな」
「生体結界が固有スキルじゃないのが、ちょっと意外だな。助かるは助かるけどさ」
「固有スキルかどうかってのは、絶対のものじゃねえ。要はお前の実力次第だ」
「どういうことだ?」
「固有スキルって見える情報は、絶対じゃねえんだよ。現時点のお前が徴発出来ないってだけでな。お前の王権が強くなりゃ、それまで固有スキル
に見えていたものが見えなくなる事もある」
「なるほどな――生体結界は割と奪いやすいスキルだって事だな」
「そうなるな」
「しかしそれはそれで変だよな――あれは結構大層なスキルだと思うけどな」
「だが本来あるべき姿を無理やり歪めるような代物なんだろ? 自然に戻ろうとする力と反発して不安定なんだろうさ。だから王権によって介入しやすい」
「……そういう事なのか。ただのホネじゃないな、親父」
「ああ。体はただのホネだがな」
「見た目はもう慣れたしそれでいいけど……スキル枠がもう少し欲しいよな」
スケルトン親父の体は、スキル枠が3つだ。
つまりこうなる――
スキル1 :王の魂
スキル2 :槍術LV27
スキル3 :筋力増幅LV15
王の魂で一枠潰れるから、実質は二つだ。
雑魚相手ならそれほど問題は無いが――
ヒッポちゃんやチャーミーちゃんなどの大物にはもっと色々な能力が欲しい。
縮地なり、魔術スキルなり――
これ以上の拡張性が無いのが、将来への不安を煽るのだ。
「仕方ねえだろう。こりゃ元々ただのスケルトンだぜ」
「何か別の体を探すしかないか?」
「ああ」
「しかし意外と条件は厳しいんだよな」
人を襲うようなモンスターの体は、王の魂を徴発してしまうと本来の姿を取り戻して暴れ出すため、連れ歩きにくいのだ。
それをレベルを上げて鍛えていると、俺達にとっての強敵になり得てしまう。
走爬竜のように家畜化しているものなら問題無いのだが。
止めを刺して死体を連れ歩いても、そのうち腐ってスケルトンになってしまう。
強いモンスターのスケルトンなら強いのかも知れないが、骨ばかり持ち歩くのも……
馬車が骨だらけになってしまっては困る。
「一番いいのは、都合よくスケルトンの上位種でも現れてくれる事かねえ」
「運頼みか? それより今のホネをより強くする方法はないかな?」
「ほうルネス。お前何か考えがあるのか?」
「いや例えばだぞ? 溶かした魔石鋼に漬けて固めるとか――」
「そりゃホネの方が解けちまうだろうが! 溶けた魔石鋼なんぞとんでもねえ熱だぞ!」
「じゃあ逆にホネの中の空洞に流し込むとか?」
「それも穴が開いちまうだろ。まあ、やはり丁度いいのが現れるのを待つしかねえさ」
「仕方ないか――よし、集まったな」
魔石を袋に回収完了だ。
頭上から降り注ぐ太陽石の光は既に茜色。
地上で言う所の夕暮れが近づいてきている。
「もう一か所くらい回って、街に戻るぞ。レミアが待ってる」
俺は魔石の詰まった袋を担ぐ。
そして親父を背負った。ホネだから軽い。
カイルやコークスさんからは、魔素や瘴気が濃くて魔物が集まりやすい場所の情報を教えて貰っていた。
俺達はここの所、そこを順次回って魔石とスキル集めをしている。
「あいよ! 可愛いあの子のためならエンヤコーラってな!」
「……うるさいな、振り落とすぞ」
俺は毒づきながら、縮地を発動するのだった。
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