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第21話 凍結破砕

 大打撃になるような攻撃を、連続して叩き込むには――


「レミア! あいつに氷の弾を当ててくれ! 十分距離を取ってな!」

「うん!」


 レミアが結界の外に飛び出す。

 よく通る透き通った声で、呪文が詠唱される。


「狂える天の冷たい息吹よ。凍てつく蒼の輝きとなれ!」


 氷結弾が発射され、チャーミーちゃんの表皮で凍り付いた。


「同じところにもう何発か打ち込んでくれ!」


 指示しながら俺はチャーミーちゃんに接近し、注意を引きつける。

 体から伸びてくる槍を、斬り落として迎撃し続ける。


「わかった!」


 俺の指示に忠実に、レミアは氷結弾を撃ち込んでいく。

 ヤツの体の凍結する部分が、少しずつ多くなって行く。


 ピイイイィィィッ!


 何発か入った時点で、チャーミーちゃんが声を上げレミアの方に向かおうとした。


「わ――!?」

「させるかよ!」


 俺は左の大型剣を鞘に納める。そして、縮地発動!

 レミアを左の小脇に抱えて救出する。

 追って来るヤツの槍は、右の魔石鋼(マナスティール)の剣で迎撃だ。

 しかしもう、MPが限界近い。

 そろそろ決めないと、マズい事になる。


「あ、ありがと……ルネス!」

「次の魔術の準備をしてくれ! 今からヤツに一発入れるから、すぐに治らないように傷口を凍らせる!」

「はい!」

「行くぞ! うおおぉぉぉぉ!」


 縮地突き!


 真っすぐに突き出した魔石鋼(マナスティール)は、縮地の超加速に乗った。

 その突進力、威力はヤツの凍った部分を粉々に打ち砕き、大きく深い穴を穿った。


 ピキャアアアアッ!


 チャーミーちゃんが悲鳴を上げた。

 しかし、放っておけばこれもいずれ治る。


「レミア! 傷を――」


 俺の言葉が終わる前に、腕の中のレミアが魔術を発動していた。

 それが、チャーミーちゃんの傷の表面を凍らせる。


「いい反応だ!」


 レミアはそれには返して来ない。

 すぐ次の魔術を詠唱していたからだ。

 そう――それでいい。俺の意図をちゃんと分かってくれて助かる。

 もう、一発魔術がチャーミーちゃんの傷口に吸い込まれた。


 ピイイイィィィッ!


 ヤツの表面に無数の魔法陣が!

 礫を撃ち出す土魔術だ。

 しかし、咄嗟に見て分かった。

 魔法陣は、奴の大きく抉れた傷口の中には表れていない。

 逆にそこが、安全地帯になってしまっている!

 俺はすかさず、ヤツの傷口の穴に滑り込む。

 もちろんレミアも一緒だ。


「撃ち放題だね!」


 レミアはさらに、二度、三度と魔術を撃ち込む。

 傷口の奥が更に大きく凍り付く。


「ゴメン! MPがもう無いよ!」

「ああ、十分だ! もう一発行くぞぉっ!」


 俺は右手の魔石鋼(マナスティール)の剣を突き込みながら、縮地を発動。

 再びの縮地突きが、更に大きくチャーミーちゃんの傷口を抉る。

 体の中心部に核まで、あと一息だった。


 ここまで大きくダメージを与えたら――!


王権(レガリア)――徴発(リムーブ)!」


 俺の手の中に収まるスキルの赤い輝き。

 自己再生(高)のスキルの奪取に成功したのだ。

 これで、ヤツの傷の再生は無くなる。

 同時に俺のMPもほぼ限界だ。

 もう暫く縮地は撃てない。

 だが、再生さえしないのなら――


「うおおおおぉぉっ!」


 俺は魔石鋼(マナスティール)の剣による斬撃を連続で繰り出す。

 滅多切りだ。

 ヤツの体を斬り落として抉りながら、あとわずかだった核まで掘り進む。


「これで――とどめっ!」


 最後に放った渾身の突きが、チャーミーちゃんの核を貫いた。


 ピキャアアアアアアアアアッ!


 ヤツの全身がビクンと震え、その後力を失って崩れ落ちる。

 俺達の頭上から、ヤツの体の残骸が迫って来る。


「やばいっ! 逃げろ!」


 俺はレミアを抱えたまま、何とか潰されずに脱出した。


「ふう――何とかなったか」

「う、うん……やったね――」

「? どうしたんだ?」

「あ、うん……あのね、ボクの胸ずっと触ってるから――そのね……」

「!? あ、わ、悪いっ……!」


 レミアを抱えた俺の左手は、気づけばレミアの胸の膨らみを掴んでいたのだ。

 ――今更ながら、柔らかいな……と感じた。


「う、うんいいよ……大変だったもんね。下ろしてくれる?」

「あ、ああ……!」


 俺はそっと、レミアを下ろした。


「やったね! これで神子様も助かるよね?」

「ああ、そうだな」

「あ! そういえば怪我は大丈夫!? 痛くない?」

「ん? 大丈夫だ、ほら」


 と、俺はレミアに自分の腕を見せる。

 そこにも傷があり血が滲んでいたが――


「あ……! 治ってく!」


 そう、目に見えて傷が治っていく。

 これは自己再生(高)のスキルの効果だ。

 ヤツから奪ったスキルは今俺が持っているから。

 頭に負ったケガもこの調子で治るだろう。


「ヤツから奪ったスキルの効果だ。自己再生だってさ」

「へぇぇぇー。すごいね!」


 と喜ぶレミアだが、少しして表情を曇らせた。

 自分達の状況を思い出したからかもしれない。

 大迷宮を上に行くための『光輪の階段』は、街を覆う結界となり閉ざされている。

 そして結界を生み出すスキルは、人がいなくならない限り無くならない。

 だから、どうあがいても上には行けない。

 そう聞かされていたからだ。


「ね、ねえルネス? あのね、これからどうするの……?」

「……俺は街を出る。ちょっとモンスターを狩って、スキルを集めたいんだ」

「う、うん。じゃあボクも――」

「いや。コークスさんの言う通り、館に残っててくれ」

「ええぇぇぇっ!? ボ、ボクが一緒だと迷惑……?」


 うつむいてしまうレミアの肩に、俺はポンと手を置いた。


「そうじゃない、頼みたいことがあるんだ。凄く重要な事でさ」

「重要な事? ボクに何か出来るの?」

「むしろ俺にはできないからさ。レミアならできるはずだ」

「うん――ルネスのお願いなら何だってするよ? 何をすればいいの?」

「ああ――武器を作ってくれ。魔石鋼(マナスティール)の剣みたいな、スキルを宿せるやつだ。それが出来れば、俺達は上に行ける」


 俺は力強くそう言い切った。


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