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第20話 オーガもたまには役に立つ

 ブジュジュジュジュジュ――!


 チャーミーちゃんが不気味な音を立てて身体を震わせる。

 そうするとその体の一部が変形し、先の尖った槍のように俺に迫って来た。


「させるか!」


 俺は先端から身をかわしつつ、魔石鋼(マナスティール)の剣で斬りつける。

 だが斬れない。ブニンと弾力のある手応えで、剣が弾かれてしまうのだ。


「ちっ……!」


 物理的な攻撃には、かなりの耐性があるようだ。

 魔石鋼(マナスティール)の剣に火魔術のスキルが残っていたら分からなかったが、あれはもう改革(チェンジ)で縮地に化けてしまっている。

 次を用意する前にこいつがやって来てしまったのだから、少し運が悪かったか。


 ブジュジュジュッ!


 さらに複数の槍が、チャーミーちゃんの身体から伸びる。

 左と右と上!

 剣で斬れない以上、身をかわす他は無い。


 俺は後方に跳んで、槍の攻撃を避ける。

 三方向からの槍は、地面に突き刺さって穴を穿つ。

 そこに、最初にかわした槍がグンと曲がって背後から迫って来た。


 ――見えている!


「だあぁっ!」


 左の大型剣を振り向きざまに一閃する。

 それで斬れはしなかったものの、大型の剣がぶち当たる衝撃で槍の進路が変わる。

 俺を捕らえることはできず、それも地面に穴を穿つ。


 と、そこで地面が大きく揺れた。

 ――地震!? いや、ヤツの土魔術でこれを起こしているのか!

 俺は少々バランスを崩し、二、三歩とたたらを踏んでしまう。


 ドドドドッ!


 そこを狙い澄ましたかのように、地中からチャーミーちゃんの槍が突き出して来た!

 まずい、当たる!


「縮地ッ!」


 瞬間的に加速した俺は、一気にチャーミーちゃんと距離を取っていた。

 チャーミーちゃんは一瞬俺を見失ったか、ウネウネとしている。


「……危ない危ない」


 魔術でバランスを崩し、そこを狙ってくるとは――

 こいつは喋らないが、オーガ共よりよっぽど頭がいい。

 本能的なものだろうか。


 しかし、ヤツが伸ばして来る槍をこちらが斬れないのが辛い。

 避ける事しかできなくなり、どうしても守勢に回らざるを得なくなる。


 やはり魔石鋼(マナスティール)の剣に魔術スキルが欲しいか。

 ……都合よくマグマビーストでもその辺にいないだろうか。

 チャーミーちゃんを引きつけながら、別モンスターの生息域まで行くのもアリだ。

 そこで徴発(リムーブ)して、改めて戦うのである。

 最悪レミアから凍結魔術スキルを借りるのもアリだが、出来ればしたくはない。


 しかし――


「うううぅぅ……」


 俺の近くに、さっきのオーガ共が転がっているのが見えた。

 全身ボロボロで、もう動けそうにはない。


「……」


 その中の一体に――


 スキル1 :槍術LV7

 スキル2 :火魔術LV7


 おお?

 こいつに助けられるのはシャクに障るが――今はありがたい。


王権(レガリア)――徴発(リムーブ)下賜(グラント)!」


 魔石鋼(マナスティール)の剣

 所持スキル上限数 :2


 スキル1 :火魔術LV7

 スキル2 :なし


 赤熱化して輝くその刀身が、懐かしい。

 多少レベルが下がり、魔術炎弾は出なくなった。

 あれはレベル15から出せるようになったものだ。

 また集めて、そこまで持って行こう。


「よぉし――!」


 俺はチャーミーちゃんに向け、走り込んだ。

 当然、体から伸びる槍が迎撃してくる。

 俺はそれを魔石鋼(マナスティール)の剣で斬りつける。

 赤く輝く刃が、ブジュウと焼ける音を残して槍を切断した。

 よし斬れる――!

 そのまま肉薄し、魔石鋼(マナスティール)の剣を突き刺した。


 ピイイイィィィッ!


 あいつの悲鳴か? ダメージになっているだろうか。

 突き刺したまま柄を強く握り、ヤツの体に沿って走った。

 ジュウッと焼けてくすぶる煙。

 ヤツの体にぐるりと、長くて深い傷が残る。

 このまま、斬りまくってやる!

 俺はさらに攻め立てようとしたが、ヤツも黙ってはいなかった。

 不意に、ヤツの体の表面に、幾つもの小さな魔法陣が浮かび上がった。


「……何だ!?」


 次の瞬間――それぞれの魔法陣から、無数の岩の礫が発射された!


 ドドドドドドドドドゥッ!


 至近距離で、かつ大量の礫は避けようが無かった。

 幾つもの礫を受け、俺は大きく吹っ飛ばされた。


「ルネスっ! 大丈夫!?」


 レミアの悲鳴が聞こえる。


「ああ。まだまだ大丈夫だ!」


 身を起こす。全身がズキズキするが、動けないわけではない。

 ふと、何かが垂れて来て目に入りそうになった。

 拭ってみると赤かった。

 ……俺の血か。やってくれる――

 しかし、奴にも大きな傷をつけた。

 まだまだ勝負はこれから――

 再び奴と睨み合って――気が付いた。

 傷が無くなりかけていた。

 俺がつけた傷は、体を半周するほどのものだったはずが……

 ウネウネと半透明の肉が盛り上がって、傷を塞いでしまいつつある。


「自己再生か――! すごい速度で治るぞ、こいつ!」


 これは、ちまちまとやっていられない。

 一気に大打撃を与えるような攻撃をしないと、攻撃する側から治ってしまう。

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