第19話 ゴールデンジェリーのチャーミーちゃん
俺はレミアを背負い、縮地連発で一気に街の外れに到達した。
そうすると、結界の表面を叩くモンスターの姿が目に入る。
「あれは……!?」
「お、おっきい――!」
巨大な黄金色のスライムだった。
大きさは、この間戦ったヒッポちゃんに引けを取らないだろう。
半透明で透けており、中心部に核のような球体が一つ見える。
あれが人間でいう所の脳であり心臓なのだろうか。
そして、身体には何重にも鎖が巻かれている。
それが街を覆う結界に体当たりを繰り返していた。
突っ込んでは結界に弾かれるのだが、めげずに再び突進を繰り返している。
結界の内側には、その様子をおっかなびっくり見ている兵士達の姿がある。
その兵士達を捕食したいのだろうか――全く諦める気配を見せない。
そして――
スライムの身体に巻かれた鎖を引っ張ろうとしている、例のバカどもの姿が――
「おあぁぁぁ! チャーミーちゃあああぁぁぁん! 戻って、戻っでええぇぇぇぇ!」
「ぐおおおおぉぉ! 重いいいいいぃぃぃ! 重いぃぃぃぃ!」
「おめえがいけねえんだぞぉ~! チャーミーちゃんのエサの人間喰いやがってえぇ!」
「い、一日くらいいいかと思ってたんだよおおぉぉ!」
「……」
「どうしたおめえええぇぇ!?」
「その前、俺がエサの人間喰っちまったあぁぁぁぁ!」
「何いいいぃぃぃ!?」
「すまねぇぇぇぇ! その前は俺だあああぁぁ!」
「馬鹿野郎うぅぅぅっ! じゃあ俺も入れて四日もエサ抜きじゃねえかああぁぁぁ!」
「何ぃぃぃぃ!? お前もかあああぁぁぁ!」
「「「「チャーミーちゃあああぁぁぁん! 戻っでええぇぇぇぇ!」」」」
……四日エサを喰わせて貰えなかったので、自分で喰いに来たという事か。
だが人間がエサとはとんでもないヤツだ。倒すべし。
今から親父を連れてくる時間は無い。レミアと協力して何とかするしかない。
「レミア! 俺が先に出るから、合図したら氷魔術で援護してくれ!」
「う、うん――! わかった! 気を付けてね!」
レミアの返事を聞くと、俺は結界の外へと飛び出した。
それを見たチャーミーちゃんとやらはこちらに向く。
オーガ共は俺の登場を喜んでいた。
「おおっ! よっしゃあああぁぁ~!」
「チャーミーちゃあああぁぁぁん! 新しいエサだよぉぉぉ~~!」
「それ喰って、早く帰ろうぜえぇぇぇ!」
「ダルマール様に知られたらぶっ殺されるからなあぁぁ~!」
そうは行くか!
だがその前に――
「王権――徴発、徴発、徴発、徴発」
四連打。
オーガ共から筋力増幅をそれぞれ奪う。
それを改革でまとめて一つにしておいた。
そうすると――
「「「「あああああああああぁぁぁ!?」」」」
奴等は力が入らなくなり、ズルズルと引き摺られる。
そこで、いきり立ったチャーミーちゃんがブンと身じろぎした。
当然鎖もブンと振られる。力が入らないので、オーガ共は吹っ飛ばされた。
――結界の方に向けて。
「「「「ぎゃああああああああああ!?」」」」
ぶつかって、弾き飛ばされ地面に激突。
そのまま、立ち上がって来なくなった。
ああ、静かになったな。
ブジュルジュルジュルルルルル――
これが、チャーミーちゃんとやらの鳴き声なのか?
俺は相手を注視する。
名前 :チャーミーちゃん
年齢 :??
種族 :ゴールデンジェリー
レベル:26
HP :834/834
MP : 0/0
腕力 :161
体力 :260
敏捷 :132
精神 :167
魔力 :211
所持スキル上限数 :5
スキル1 :突然変異体(※固有スキル)
スキル2 :自己再生(高)
スキル3 :土魔術LV18
スキル4 :格闘術LV15
こいつも突然変異体か。
この間のヒッポちゃんと同格というわけか。
そして今の俺は――
名前 :ルネス・ノーティス
年齢 :17
種族 :人間
レベル:19
HP :247/247
MP : 28/75
腕力 :114(6)
体力 :95 (5)
敏捷 :133(7)
精神 :57 (3)
魔力 :76 (4)
※()内は素質値。レベルアップ毎の上昇値。
所持スキル上限数 :10
スキル1 :王権(※固有スキル)
スキル2 :二刀流(剣)LV14
スキル3 :縮地LV14
スキル4 :格闘術LV20
スキル5 :筋力増幅LV13
スキル6 :斧術LV10
スキル7 :筋力増幅LV11
二刀流の右手に持つのは魔石鋼の剣。
現在何のスキルも設定されていない。
左手はオーガから現地調達した大型剣だが、こちらにスキル枠は存在しない。
ここまで縮地や王権を結構使っているから、MPが相当減っていた。
――親父はいないが、レミアの援護もある。
何とか戦って倒すぞ!
それに――非常に気になるスキルがある。
このチャーミーちゃんの自己再生の事だ。
これを是非、徴発してやりたい。
俺の考えているこの事態の打開策の、大きな助けになってくれそうなのだ。
いい時にいいヤツが現れてくれたかもしれない――
ブジュルルルルルルル――
「俺を喰いたいか――!? だが俺もお前のスキルを喰いたくてな! さぁ寄越せ!」
俺は左右の剣を構え、チャーミーちゃんと向き合った。
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