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第16話 神子の館

「こ、拘束!? や、やっぱりボク……」


 レミアの顔が曇る。

 やはり居場所などないのだ、と打ちひしがれたような表情。


「理由は何なんですか?」

「我々には聞かされていない。詳しくは神子の館で聞いて貰おう」


 兵士の一人が俺の問いにそう答え、レミアの腕を掴もうとする。

 レミアが、救いを求めるように俺を見た。


「ルネ……」


 俺は立ち上がる。

 次の瞬間、レミアの腕を掴もうとした兵士の手は空を切った。


「なっ――!? 消えた……!?」

「……ス? あ、あれぇ……? ボク――」


 店の入り口から出て軒を数軒分離れた所で、俺はレミアを抱きかかえていた。


「俺の事呼んだ?」

「あ、ううん……必要なかったみたい」


 縮地だ。

 それで兵士の手がレミアに触れる前にかっさらった。

 もう少し短い距離で止まりたかったが、かなり走り過ぎてしまった。

 まだまだ縮地のレベルが低いという事だ。

 親父曰く、レベルが上がればもっと細かな距離単位で加速ができるらしい。

 逆に、もっと早く遠くへ行く事もできるようになるとのこと。

 消費するMPもスキルのレベル上昇で抑えられるようになるようだ。

 親父の言う通り気に入ったので、このスキルは固定してどんどん育てて行こうと思う。


「おのれ面妖な――!」


 兵士は俺達を取り囲もうとする。


「撒こう」


 俺は縮地で、民家の屋根に飛び上がった。兵士達からは見えない位置だ。


「い、いない……! どこだ!?」

「ま、まだ遠くには行っていないはず! 探せ!」

「おお!」


 奴等は慌てて大騒ぎを始める。


「さ、騒ぎが大きくなっちゃうね……!」

「仕方ないな――ならこっちから行ってみるか……」

「ええっ!? だ、大丈夫かな――」

「ああ大丈夫。俺がいるから」

「う、うん。そうだよね……分かった、じゃあ行こう? 神子の館って言ってたよね」

「場所は分かる?」

「うん、大丈夫だよ」

「よし、じゃあ――」


 と、俺は兵士の目を盗んで親父の元に戻った。

 すでに騒ぎを聞きつけ目を覚ましていたようだ。


「親父。奴等の所に乗り込んで話を付けてくる。説明がややこしいから、親父はここで待っててくれ」

「いいだろう。カッとなってブッ殺すなよ。相手はオーガ共じゃねえんだからな」

「言われなくても分かってる」


 レミアを抱えた俺は、再び縮地で屋根の上へ。


「お、おいレミア。あんまりくっつくと……」


 レミアは俺の首に手を回してギュッと抱き着いている。

 胸が大きいから、押し当てられてその感触が気になる。


「え? えへへへ……何かいいね、これ」


 笑顔。可愛らしいのだが止めてくれるわけではないので、状況は何も変わらない。

 まぁ――いいだろう。このまま進むことにした。


「で、神子の館ってどこなんだ?」

「あそこに見える一番大きな建物だよ」


 レミアは大きな聖堂のような形の建物を指差す。

 街の中で一番大きい。

 今は太陽石の光が朧になっている夜だ。

 神子の館は、多くの篝火に照らされてぼうっと浮かび上がるような佇まいだった。


「よし――行くぞ!」


 王権(レガリア)を使うことを考えたら、余力は残しておくべきだ。

 兵士がいる所は縮地で駆け抜け、残りは徒歩で節約しながら館に向かう。

 そしてしばし――俺達は、神子の館の門前に立っていた。

 そこを警備する歩哨に話しかける。


「すみません! レミアを拘束して来いって命令した人に会わせて下さい!」

「何!? 自分からノコノコやってくるとは――!」


 殺気立つ兵士達。だがこの反応は予測済みだった。

 申し訳ないが、力で脅させてもらう!


「仕方ない――レミア!」


 俺の言葉にレミアは頷く。

 氷結弾の魔術を唱え、近くの街路樹に向け放つ。

 ピキィィンという音と共に木は凍り付き――


 縮地突き――!


 氷の爆ぜる衝撃音。

 オーガから奪った大型剣による超高速の突きを浴び、木は粉々に砕け散った。

 その威力迫力に、兵士達は慄いて言葉が出ない。


「こうなりたくなかったら、早く行って下さい! そうすれば何もしません!」

「ひいいいいいぃぃぃ~!」


 脱兎のごとく去って行く。

 俺達は雑談しながら少し待った。


「しかし、縮地を作ったから、飛び道具が無くなったな……」


 縮地自体は気に入ったが、飛び道具なしは少し不便だ。

 早く何か確保しておかないと。やはり火魔術がいいだろうか。

 魔石鋼(マナスティール)の剣に火魔術は使い勝手が良かった。

 俺のお気に入りの組み合わせである。


「モンスターから、どんどんスキルを取れちゃうんだよね? で、合成してくっつけてって……凄いなあ」

「レミアは、他に何か欲しいスキルはある? こんな武器とか、こんな魔術とかさ」


 状況が落ち着いたら、暫くモンスターからスキルを徴発(リムーブ)して回ろうと思っている。

 そのついでに、レミアの欲しそうなものも取れればいい。


「え? そうだなあ、縮地はボクも使ってみたいなあ。楽しそうだから」

「じゃあ今度使ってみるか? 他にはある?」

「うーん……あ、あとね。おっきいハンマーを振り回して戦ってみたいな」

「へえ……? 何で?」

「巨大ハンマーは漢のロマンって、親方が言ってたの」

「ははは――レミアは女の子だろ……」


 まあ、考えておこうか。

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― 新着の感想 ―
[一言] RPGだったら街につくまえにもっとスキル集めたいところだったけど、時間が流れる現実だからなぁ
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