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中央ウィング2階 産婦人科病棟3
「いやー。まさか産まれてくるとは思わなかったねー!でも母子共に健康でよかった。」
「はい・・・。でも朱美さん。未受診妊婦ですよ?私初めて会いました」
「そっかー。黒木初めてか。いい経験ね、担当医おめでとう」
「は?!あたし?!」
「まあまあ、あたしもサポートするから」
病棟へ帰ると、二人のそんな会話が聞こえてきた。
「あ、神坂先生。逃げちゃってずるいですよ」
「はは。ごめんごめん。でも産まれていたんだから大丈夫だと思って。」
「誰が取り上げたんですか?」
「んー。同乗した医師がいたみたい」
「・・・ふーん。ま、感染の心配とかもなさそうだし良かったですね」
「・・・うーん。そーだねー、じゃお疲れ」
「・・・お疲れ様です・・・。どーしたんでしょ、心ここにあらず、ですね」
「・・・疲れてるんでしょ。さ、あたしたちは今夜の出産に備えるわよ!」
「やっぱ今日多いですかね?」
「そりゃあ、満月だからね。いっぱい生まれるわよー」
ウサギがもちつく夜に、あいつを思い出した。