誘拐事件
「アローくん!ホノカが誘拐された!」
僕が研究室で研究をしていると、悪報が飛び込んできた。
その報せは「新・翻訳の魔石」に搭載した新機能、遠距離会話によってサオリさんが送ってきたものだ。
僕たちはあの部屋を出て早々に、言葉の壁にぶち当たった。女神様から授かった「翻訳の魔石」は高性能ではあったが、会話するには会話する相手にも魔石を渡す必要があった。複数の人と会話する時や街に出て買い物をする時など、様々な場面でその仕様により不都合が生じたのだ。
そこで、自分たちでデザインした「新・翻訳の魔石」を創って貰えるように神託の儀式でお願いしたのだ。このお願いが僕たちがした中で最も女神様を困らせただろうと思う。儀式から神託が降りるまでに最長の6日かかった。
この頃はまだ、神託の儀式の頻度を減らして欲しいという女神様からの泣きが入る前だったから調子に乗っていた。調子に乗って「新・翻訳の魔石」には色々な機能を詰め込んだ。
「新・翻訳の魔石」の機能はこんな感じだ。
<翻訳モード>
・使用者の声(日本語)が、現地語に翻訳される。
・使用者に向けて話された声(現地語)が、日本語に翻訳されて使用者の耳元に聞こえる。
<遠距離会話モード>
・使用者の声が、指定した別の「新・翻訳の魔石」の使用者の耳元に聞こえる。
<GPS機能>
・定期的に「新・翻訳の魔石」の位置を報せる信号を発する。
・「探知盤の魔石」を起動すると「新・翻訳の魔石」の位置を表示できる。
元の世界のケータイの概念を持つ僕たちなら当然思いつく機能を盛り込んだ。
あの部屋を出た初期の頃は誘拐未遂が頻発していたので、<GPS機能>も盛り込んである。最近は誘拐騒ぎは無くなっていたのだが、また起きたか。
それにしてもこんな真昼間から誘拐か。今は三班揃ってダンジョンの間引き中で人手が少ない。厄介だな。僕の「新・翻訳の魔石」も遠距離会話モードに切り替えてサオリさんに指示を出す。
「とりあえず宿舎に戻ってきて。僕は宿舎に居る人を全員集めて出撃準備する。シローたちダンジョン組にも連絡しておくから、サオリさんはとにかく無事に帰ってきて欲しい。」
焦っても何もできない。宿舎内にいる人に声を掛けて食堂に集まって貰った。無事に帰ってきたサオリさんが状況を話してくれる。
「私とホノカの二人で買い物をした帰り道で、貴族街の大通りの一本隣の道を歩いていたら、前から来た馬車が近くに止まって、覆面を被った人が降りてきたの。恐いと思って二人で走って逃げ出したんだけど、ホノカが追いつかれて捕まっちゃって、馬車に乗せられて連れていかれちゃったの。怖くて追いかけられなかった。ごめんなさい。」
「いや、追いかけなくて正解だよ。良く帰ってきてくれたね。それで、場所は貴族街の中だったんだね?」
「うん。」
僕たちの住む街は、この国の王様が居る城の周辺に作られた王都だ。街は城を中心に造られており、城から近いエリアは主に貴族と騎士が住む貴族街となっている。その外側は平民が住む街で、更に外側には貧しい人たちが住むエリアがある。
貴族街と平民の街との間には柵があり、主要な道には騎士が常駐している。柵はそれほど高くは無いのでその気になれば乗り越えることなど簡単だが、心理的な壁は高い。今回は馬車を使っていたということもあり、貴族が誘拐に関わっていると考えて間違いないだろう。
「助けは呼ばなかったの?」
「助けてって叫んだけど、誰も来てくれなかったの。」
貴族街には騎士が巡回しており、女性の叫び声が聞こえたなら駆けつけるはずだ。騎士が買収されるかして誘拐に加担している可能性が高いだろう。
「OK。全員でホノカさんを救出に行こう。」
「待って。アローくん。」
呼び止めたのはアユミだった。
「警察、第三騎士団に連絡した方がいいんじゃない?」
アユミらしい意見だ。
「残念ながら、今回の事件は貴族が絡み、騎士団が買収されている可能性が高い。第三騎士団は貴族家への捜査権を持っていないよ。それから、捜査権を持つ第一騎士団は買収されているだろう。それで無ければ貴族街の中で誘拐なんてできないさ。僕たち以外の他の騎士団はあてにできないんだ。」
「騎士団が買収されるなんて、許せない!」
アユミが許せなくても、この国の騎士団なんてそんなものだ。そもそもこの国は腐敗が激しい。国の王が神託の巫女を襲う時点で駄目だろう。
そんなことはさておき。
「とりあえず、GPS機能でホノカさんの連れていかれた場所を捕捉して、ホノカさんの救出に向かう。みんな準備して。」
ホノカさんが「新・翻訳の魔石」を取り上げられていなければ場所は特定できる。「新・翻訳の魔石」の機能は僕たち魔法騎士団以外には秘密にしているので、直ぐに取り上げられるとは思えない。だが急いだほうが良いのは間違いない。
「探知盤の魔石」でホノカさんの居場所を探知して現地に向かった。ダンジョン組にも場所を遠距離会話で伝えている。
「ここだな。」
「探知盤の魔石」により簡単に監禁場所を見つけることができた。もしかしたら向こうも隠す気が無いのかもしれない。誘拐に使われたと思われる馬車が庭に置かれている。場所は貴族の邸宅だった。
「犯人も場所も分かったのなら、後は警察の仕事じゃない?」
アユミはそう言ってきた。それができれば楽でいいのだけど。
「さっきも言ったけど、騎士団はあてにできないよ。」
「王様に言えばいいじゃない。王様は姫のお父さんなんでしょう?王様なら貴族の家でも捜査できるだろうし、王様に頼めばいいのよ。」
「姫は重大な神託を報告する時くらいしか王様に面会できないよ。それに、王様にも貴族の家を捜査する権限は無いんだ。」
「そんなっ。どうして王様なのに!」
「王様だからってなんでもできてしまったらアユミさんの嫌いな独裁になっちゃうよ。この国の王は愚王だと思うからむしろ良かったと思うけど。」
その後しばらくアユミが騒いでいたが、僕は無視して考え事をさせてもらった。もちろん、ホノカさんを救出する方法を考えていた。
この屋敷にホノカさんが居るのは確定だ。だがアユミの言うように警察に通報すれば済むことではない。相手は真昼間の貴族街で堂々と誘拐して、自分の屋敷に連れ込んでしまうような輩だ。嫌疑を掛けられても握り潰す権力を持っているのだろう。僕たちにそれを超える権力は無いのだがから、他の力で戦うしかない。
僕たちの持つ力と言えば、魔力だろう。魔力ゴリ押しで解決だ。強行突破しかないだろう。
アユミが落ち着いたところで、みんなに作戦を説明した。
アユミたちが貴族の邸宅に正面から訪ねる。仲間のホノカが誘拐された。この屋敷が怪しいとの情報を掴んだ。調査させろ。という話をしているはずだ。当然、相手は応じないだろう。
ということで、とりあえず燃やすことにした。
僕だけ別行動で、屋敷の周囲をコソコソと移動する。
屋敷の中を捜査できないのだから、屋敷に火を付けて中から出てきてもらおうという作戦だ。僕には放火にうってつけの魔法がある。
僕たちが最初に覚えた魔法、「ファイアーボール」は、破壊力はあるが着火はし難い。だから、この世界に昔からある生活魔法である着火魔法をベースに、着火能力を向上させて遠隔まで飛ばせるようにした僕オリジナルの遠隔着火魔法を使うことにした。
屋敷の塀の外から身を隠しつつ、遠隔着火魔法の呪文を唱えて屋敷に火を放つ。この世界の建物はレンガを組んで建てられているが、全てではない。一部の柱や窓枠などには木が使われているし、内装も木製の物が多い。だからそういった場所を狙って火を付ける。着火魔法の名は伊達じゃない。屋敷に火が付いたことを確認すると、場所を移動してもう二か所に火を付けた。
火勢が強まるのを待ってから屋敷の裏手に周り、爆破魔法を使う。純粋な爆発が起こる不可視のボールを手から放つ。
「バーン」というは激しい音共に屋敷の壁の一部が崩れた。
急いでその場を離れて門に向かうと、アユミたちと門番との口論はまだ続いていた。しばらく様子を見ていると、火事に気付いた野次馬が集まり出した。野次馬に紛れて騒ぎの様子を覗う。
慌ててい屋敷から人が出てきている。だがホノカさんらしき人はまだ見当たらない。「探知盤の魔石」を確認すると、ホノカさんを示す点が移動し始めた。だが、屋敷からはそれらしき人物が出てこない。
これは大罪確定だな。ホノカさんは恐らくダンジョンに連れ込まれたのだろう。
この街の地下にはダンジョンがあり、ダンジョン内は魔物だらけだ。ダンジョンの出入口は魔物が溢れだす恐れがあるため、国が厳重に管理している。許可なくダンジョンに繋がる穴を開けることは、貴族でも許されることの無い大罪だ。
この様な事態も想定して、ダンジョン内からこの近辺に来るようにシローたちに連絡してある。「探知盤の魔石」にはシローたちの現在値も表示されている。遠距離会話で状況を伝える。
「アローです。ホノカさんはダンジョンに連れ込まれたみたい。シローたちの居るところからもう少し北東だね。」
「了解。地図を確認しながら追い込む。」
「それじゃあこっちも、上から襲撃するかな。」
「ちょっと待ってくれ。こちらの逃げ道を塞いでからがいい。」
「了解。」
シローにホノカさんの位置を連絡し、シローたちがダンジョンの地図を見ながら進行する。そしてホノカさんを示す点の進行方向に回り込むことのに成功した。シローから連絡が入る。
「敵を捕捉した。切りかかってきた一人を魔法で吹き飛ばしたら、逃げ出した。そちらに追い込むから、突入開始してくれ。」
「了解。」
アユミたちに合流した。アユミたちは作戦通りまだ門の前で揉めていた。交渉を交代する。
「魔法騎士団には消火に最適な魔法があります。消火しますので中に入ります。それから、この屋敷にはどうやらダンジョンに繋がる穴が開けられているようです。消火後は屋敷内を調べます。抵抗する場合は攻撃します。」
「ここは内務大臣ヨウガン様の屋敷だぞ!勝手な行動は許されん!」
「抵抗するのですね。みんな、爆裂魔法詠唱開始。」
みんなが詠唱を開始すると、門番二人が剣を構えた。僕も剣を構えてけん制する。
「まずは威嚇射撃です。シズカさん。門番の足元にお願い。」
シズカさんが魔法を放つ。シズカさんの手から不可視の魔法が放たれ、バーンという激しい音と共に門番の足元が爆発する。土砂が飛び散り、門番たちは驚いて尻餅をついた。
「吹き飛びたくなかったらどけ!」
「ひぃいいー!」
門番たちは逃げ出した。
「爆裂魔法は破棄してウォーターボールを詠唱。魔法詠唱しながら突入する。付いて来て。」
魔法詠唱は最後の句を唱えると発動するが、最後の句の前で止めることで発動タイミングを調整することができる。そして、途中で違う言葉を発声することで詠唱を破棄できる。みんなが詠唱破棄して新しい魔法の詠唱を開始した。それを聞きながら堂々と門の中に入っていく。
屋敷の敷地内では消火活動が行われている。水の魔石でバケツに水を汲み、水入りバケツを持って火元に走って水を掛ける。そんな努力が繰り返されている。だが水の魔石では水の供給が間に合っていない。
「火元に向かってウォーターボール発動!消火するまで継続!」
ゆっくりと屋敷に近付いていく僕の後ろから、屋敷に向かって水球が飛ぶ。どんどん消火されていく。屋敷の傍で偉そうに火消しの陣頭指揮をしていた男が近付いてきた。
「何だ貴様らは!」
男が声を荒げる。
「魔法騎士団だ。消火を手伝う。消火後、屋敷内を調査する。」
「ここはヨウガン様の屋敷だ!直ちに出て行け!」
また門番と同じやり取りになりそうで面倒だ。
「僕たちの進行を妨げると、ウォーターボール数発が誤ってぶつかることもあるだろうな。」
僕がそう呟くと実際に三発ほど男に向かって飛んで行った。そのうち一発が男の頭に命中して男は倒れてしまった。ウォーターボールは一応戦闘用の魔法だ。ファイアーボールと比べると殺傷能力は低いが、直撃すれば十分痛い。当たり所が悪ければ男のように倒れることになる。
水球が火元に向かって次々と飛んでいき、消火はあっという間に完了した。野次馬共へのパフォーマンスにはなったようで、野次馬から完成が上がっている。
「このまま屋敷に侵入する。邪魔する奴には容赦なくウォーターボールを当てていい。」
そう言うと屋敷の入口に向かって歩を進める。静止しようと近付く奴にはウォーターボールが飛んでいく。
屋敷の入り口まで辿り着いた時に、シローから遠距離会話が来た。着信音など無く突然声が聞こえてくる。
「アロー、聞こえるか?違法入口まで追い込んだぞ。」
「了解。こっちはやっと屋敷の入口まできたところ。」
「それならこっちの方が早いな。ロープで登らないと外に出られないようだ。ロープを登り始めたら魔法の餌食だからな。ここで決戦になる。」
「OK。探知盤で確認位置を確認した。その上に向かうよ。」
シローとの会話を止めて、みんなに指示を出す。
「屋敷の内部に突入するよ。屋外よりも隠れる場所が多くて不意打ちを受けやすくなるから、警戒を怠らないように。向かうべき場所は分かったからついてきて。」
探知盤のお陰でダンジョンへ続くであろう穴の位置が予測できた。屋敷に突入し目的地に向かって真っ直ぐ進行する。火災によって外に逃げた人が多いのだろう。屋敷内では襲撃は受けなかった。
屋敷の奥まった位置にある部屋に突入すると、床板が外されており下に続く穴が開いていた。穴を覗き込むとシローと目が合った。シローが親指を立てて合図を送ってきた。
「ホノカさんは無事だ!」
シローの隣でマッサンが縛られたホノカさんを抱きかかえていた。その近くではモリヤが見知らぬ男を蹴り飛ばしていた。
女子たちが歓声を上げて喜んでいる。
「そっちにこの屋敷の主はいたのかな?」
シローに聞くと答えてくれた。
「居たぞ。今タクミが甚振っているところだ。」
良かった。これで終わりが見えてきた。
「それじゃあみんなもここから出て行って、ダンジョンに繋がる穴が開いていたことを野次馬たちに言い触らそう。シローたちがこの屋敷から出てきたことが何よりの証拠になる。言い逃れできないようにした上で、そいつを縛って第一騎士団に引き渡しに行こう。」
シローたちをロープで引き上げていると、今更この家の家臣たちがやってきたようだ。部屋の外で喚いている。
「貴様ら!勝手に屋敷に踏み込んでただで済むと思っているのか!」
馬鹿かこいつは。状況がまるっきり見えていないようだ。
みんなにウォーターボールの準備をお願いしてから前に出る。
「ダンジョンに穴が開けられていました。ダンジョン内で逃走中のこの屋敷の主人も見つけて捕縛しました。今日誘拐された我々の仲間を連れていました。これらの状況から、この家は取り潰しとなるでしょう。ただで済まないのはあなたの方です。」
「くそ!こうなったら!」
家臣たちが剣を構えた。
「はぁーあ。『ウォーターハザード』『アイスフィールド』。」
愚か者たちに向けて溜息を吐きながら、腰に付けて魔石ホルダーから取り出した二つの魔石を放り投げ、発動のキーワードを唱えた。
一つの魔石からは大量の水が溢れだし、もう一つの魔石を中心にしてその水が一気に凍り付く。男たちは「うわーっ」とむさい悲鳴を上げている。この戦法は初の実戦投入だが、狭い空間では有効だな。
「お前らはそこで頭を冷やしていろ。足の方が冷たそうだけど。」
通れなくなった通路の代わりに、爆裂魔法で壁に穴を開けて道を作った。
「さあ、帰ろうか。」
僕が爽やかに振り返ってそう言うと、何故かみんなが呆れていた。
穴から上がり終えていたシローが声を掛けてきた。
「やり過ぎだろ。冷静そうに見えたが、思ったより頭に来てたのか?」
「仲間が誘拐されたんだ。当然だろう?その上馬鹿の相手をさせられてイライラしてたんだ。これで帰っても屋敷は王家に没収されて僕らには多分何の補償も無いだろう。ちょっとくらいやり過ぎても許されるさ。」
続いて穴から上がってきたタクミが声を掛けてきた。
「おお!アローくん本当に派手にやったな!でも補償が無いのか?だったら今何か屋敷から貰っていくか?」
「それはいいね。嵩張らない金目の物を貰っていこう。タクミ指揮してくれる?」
「駄目よそんなの!泥棒じゃない!」
アユミが口を挟んできた。
「そうだねアユミさん。泥棒はよくないね。でも、屋敷内にまだ敵がいないか調査は必要だよね。それじゃあタクミ、家の中に敵が残っていないか調査して貰ってもいいかな?」
「おう!分かった!」
タクミがモリヤたち数人を連れて屋敷の中を調査しに向かった。もちろん、調査は名目でしかないのだが、単純なアユミはそれで納得した。
タクミたちが調査している間に全員穴から引き上げて、屋敷の外に出た。まだ野次馬が沢山いたので大声で状況を説明する。
「この屋敷の中にはダンジョンに繋がる穴が開けられていた!この屋敷の主人を、ダンジョン内を探索中だった魔法騎士団がダンジョン内で発見して捕縛した!穴を塞ぐまでこの地は王家により管理されるだろう!」
野次馬たちの中にざわめきが起こる。
タクミたちが戻ってきた。
みんなに小声で、騎士としての威圧感が出るように行進して帰ろう、と伝達した。みんなで整然と行進して出ていくと、屋敷の門の外には第一騎士団が到着していた。
少し暴れて気が晴れていた僕は、捕縛した屋敷の主人をさっさと引き渡し、状況を説明して後は第一騎士団に任せることにした。
その後は全員で行進して宿舎まで帰った。帰り着くと抑えていた興奮が爆発して大騒ぎになり、そのまま宴会に突入した。
宴会の最中にシローが話しかけてきた。
「第一騎士団のやつら、あの貴族を逃がしたりしてないよな。」
「ありえるね。でもあの場に来れれた時点で引き渡すしかないからなぁ。でももしまたちょっかい出してくるようなら、今度は屋敷丸ごと吹っ飛ばしてやる。」
「おいおい。随分と物騒な魔法を開発する気だな。」
「・・・。」
「もしかしてもうあるのか?」
「ダンジョン内では使えないから未テストだけど、理論上はもうある。今回の件で分かったよ。自重せずに完成させてやる。今度街の外に出て実験してくる。」
「おいおい。馬鹿な貴族がやばいやつを本気にさせちゃったよ。やり過ぎるなよ。」
「それは向こう次第さ。」
ホノカさんは宴会では笑顔も見せていたので、今日は大事に至る前に救出できたようだ。だが今後もそうとは限らない。この国は本当に腐っているから、場合によっては王城ごと吹き飛ばすようなことも必要になるかもしれない。やらずに済むに越したことは無いが、やらないとできないは違うのだ。あらゆることを想定してできることを増やしていこうと思う。