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異世界転移したけど女神も姫も出てこない  作者: かが みみる
本編
60/80

060.オレガエル

 午後になりやってきたのは儀式長のジーヤコブズ氏、ではなかった。

 脂ぎった顔で恰幅の良い中年男性で、手やら首やらにやたらと装飾品を付けていて成金感がすごい。その人物は護衛の騎士20人とお供の者を10人引き連れてやってきた。来てしまったものは仕方ないので「翻訳の魔石」を渡して話を聞くことにした。


 『北部外務大臣オレガエルである。』


 「翻訳の魔石」を使ってオレガエル氏はそれだけ言うと、お供の者に用意させた椅子に座りふんぞり返っている。


 「・・・・。」


 アロー達は反応に困りしばらく沈黙した。


 「どうするよ、あれ。」


 タクミが小声でアローに問いかけた。


 「とりあえず、話を聞いてみる。」


 アローはそう答えると、「翻訳の魔石」を握り締めた。ここからは主音声(翻訳有り):オレガエル&アロー、副音声(翻訳なし):タクミ、でお送りする。


 『儀式長のジーヤコブズ氏はどうしたのでしょうか?』


 『急用で来られなくなったのである。代わりにこの北部外務大臣オレガエルが来たので安心するがよいのである。』


 「北部外務大臣ってなんだ?この国、他国との国交断絶中だろ。」


 『北部外務大臣というのはどのようなことをされる役職でしょうか?』


 『北の隣国との外交を任されているのである。』


 「だから国交無いだろ。」


 『隣国とは繋がる道を魔物に奪われて国交がないと聞きましたが?』


 『今は閉ざされておるが、道が開通した後に速やかに交渉に移れるように準備を進めておるのである。』


 「先に道を繋げよ。」


 『道の開通も担当されているのですか?』


 『それは北部の領主の仕事である。』


 「あ~、こいつ仕事してないな。無能だ無能。」


 『その北部外務大臣様がどうしてここに来られたのでしょうか?』


 『お前たちの処遇を伝えに来たのである。ありがたく聞くのである。女は各家の妾にしてやるのである。男は使用人として抱えてやるのである。』


 「オレガエル、ヒキガエル。」


 『そんな話は受けられません。申し訳ありませんがあなたでは話にならなそうですのでジーヤコブズ氏を呼んできてください。』


 『わしに従わぬというのか!』


 そう言うとオレガエルは右手を上げた。すると連れてきた20名の騎士が武器を構えた。それを見たアローは魔石を停止し、オレガイルを見据えたまま日本語で指示を出した。


 「みんな、僕が右手を上げたらポーズを取ってくれ。」


 そしてアローが右手を上げる。それに合わせて後ろで全員が思い思いの構えを取った。これは事前に決めていたことだ。彼らから見るとアロー達は異世界から来た強い魔力を持つと言われる勇者なのだ。それっぽい構えをとって魔法を放つふりをすれば警戒するに違いないと考えた。素人が剣を構えるよりもよほど効果があるだろうから、あちらが武力行使しようとしてきた場合はそれっぽいポーズをとって牽制しようと決めてあったのだ。


 『ひっ。なっ、何の真似だ!?』


 オレガエルは小さい悲鳴を上げると、椅子からずり落ちそうになりながら声を上げた。


 『それはこちらの台詞ですよ。どうもあなたは我々の交渉相手としては相応しくないようです。これ以上あなたとお話しすることはありません。魔石を返して帰ってください。』


 『ふ、ふざけるな!!わしの言うことを聞け!』


 『我々の処遇についてでしたか。あなたの持ってきた内容では話になりません。我々はあなた方に協力する気が失せました。それと、我々を武器で脅そうとしたようですが、我々を害せば人類の危機は回避できなくなりますよ。我々に武器を向けるということは、ご自身を含めた人類全員に武器を向けることを意味していると考えてください。その上で、さあ、どうされますか?』


 『ぐっ、ぐぬぬ。不愉快だ!わしは帰るぞ!』


 『どうぞ。その前に魔石は返してくださいね。』


 アローは顔を歪ませるオレガエルに近付き手を差し出した。オレガエルはその手に乱暴に魔石を返すと、なにやら喚きながら部屋から出て行ってしまった。騎士や従者もそれに付いて出ていった。


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