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異世界転移したけど女神も姫も出てこない  作者: かが みみる
本編
48/80

048.落ちる?

 みんなが祝いの宴を楽しんでいるなかで、アローは次々とやってくる相談者への対応に追われていた。最初にやってきたのはタクミだった。アローはタクミに誘われて部屋の隅に移動し、二人で壁を背にして座り込んだ。タクミは木樽叩き軽快な音を奏でている料理班のヨシアキを指差した。


 「どうだ?あの太鼓は天井班で準備したんだぜ。」


 「うん。いい音が出ているね。サヤカさんが音楽が聞きたいと言っていたから考えてくれたんだよね。」


 「まあね。ところで、アロー君は女神というのは本物だと思うかい?」


 アローはタクミのこの質問が本題だと悟り、考えを整理してから答えた。


 「その質問に答えるにはまず、女神の定義について確認する必要がある。本物かと聞くということは、タクミは女神とは僕たちを救ってくれる存在だと思っているのだと思う。神とは人を救う善の存在で、理不尽にここに連れてこられた僕たちの味方になってくれると思っている。だけどそんなに都合よくいかないと思うから、女神が偽者の可能性を考えている。でもね、神話などに出てくる神というのは必ずしも人間の味方ではないし、善いことだけをする存在ではないよ。人にいたずらしたり、敬わないと罰を与えたり、供物を捧げないと祟ることもある。神は人では抗うことのできない様な力を持っているけど、人間の味方とは限らない。そういう存在だとするならば、今回の女神を僕は既に本物だと信じているよ。」


 「凄い力を持った存在としては信じているが、味方とは限らないということか。存在は信じるが疑ってかかるという方針だな。あれ?疑ってかかるなら魔石は作らない方がいいのかな?」


 「いや、少なくとも僕とタクミは現状維持を望んでいないだろう。虎穴に入らずんば虎子を得ず。今は作ってみるしかないだろう。」


 「確かにそうだな。分かった。すっきりしたよ。」


 タクミは言葉通りの晴れやかな顔でそう言った。タクミからの相談はそれで終わりなのだが、アローはタクミに確認しておきたいことがあった。


 「女神の話しをした時に、タクミはシズカさんに尋問すると言い出しただろう?あれはどうしてかな?」


 「面白そうなことに乗り遅れて苛立って言っただけだよ。もう尋問なんてする気は無いよ。」


 「それならいいけど、シズカさんの夢の中だけど女神が出てきて、テルの言っていた通りここは異世界なのかもしれないという状況に成りつつあるだろう。それで、テルに次の展開を聞いてみたんだ。テルは、クラス内で仲間割れが定番だって言っていたよ。」


 「あのまま強引に尋問や拷問に持っていこうとしたらまんまとテルの言う通りになるところだったということか。」


 「そう、テルの言う通りなんて。」


 アローがそこで言葉を区切ると、タクミがそれを引継いだ。


 「絶対嫌だ!」


 アローとタクミはお互いの顔を見るとニヤリと笑った。


 「俺たちは仲間割れを起こさない。何故なら、テルの言う通りに成りたくないからだ。くだらないけどそこがまたいいね。やる気が出てきた。俺は天井班を一つにまとめる。でもクラス全体では信用されていないから、クラス全体をまとめるのはアロー君の役目だ。しっかりと表舞台に立ってもらうから覚悟してくれよ。」


 タクミがそう言いアローの肩を叩くと、アローは嫌そうな顔をした。だがタクミは取り合わず、そのまま立ち上がると祝いの輪の中に戻って行ってしまった。


 「やるしかないか。どこかに落ちたくないし。」


 アローは溜息混じりにそう呟いた。

 今後の展開としてテルが話したのは仲間割れだけではなかった。テルによれば、もう直ぐアローが何処かに落ちるらしいのだ。落ちるところなどこの部屋の何処にも無いというと、突然床が崩落するかもしれないと言ってテルはアローから距離を取り出した。


「某一人でなら落ちてみるのも吝かではござらんが、アロー殿と一緒にだけは落ちとうないでござる。引き立て役で死亡ルート確定、脇道無しの一直線でござるからな。はっはっはっ。」


と、意味の分からないことを言っていた。

 アローもファンタジー小説を幾つか読んだことがあるし、クラス全員で異世界に転移なんてすれば、話の展開として仲間割れが起きることは容易に想像できる。だが、穴も無いところで床が抜けて落ちるというのは無理があると思っていた。だが、テルの言っていることまるっきり無視することはできず、本当に何処かに落っこちてしまうのではないかという気がしていた。何処かに落っこちたくはないし、仲間割れはなんとしても避けたい。気は進まないがタクミの言う通りにクラスのまとめようと腹を決めた。



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