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異世界転移したけど女神も姫も出てこない  作者: かが みみる
本編
40/80

040.アユミ爆発

 シズカが女神の夢のことを打ち明けた次の日の昼食後に急遽クラス会議が開催された。主催はアユミとモーちゃんだ。クラス全員を集めると、アユミが今回のクラス会議の趣旨を話し始めた。


 「最近、天井班は何もしないで遊んでばかりいると思います。私たち料理班は毎日みんなの食事を用意したり洗濯したりしてみんなの生活に貢献しているのに、天井班は遊んでいるだけなんておかしいと思います。毎日きちんと何をするか計画を立てて、結果もきちんと報告することを要望します。」


 アユミは会議開催理由を言い終えるとタクミを睨みつけた。強気の態度のアユミに対して天井班のモリヤたちから野次が飛ぶ。


 「何偉そうに言ってんだ!」

 「俺たちは難しいことに挑戦しているんだ!簡単に結果なんか出るか!」


 「あなたたち何もやっていないじゃない!料理班の全員が怒っているんだからね!」


 アユミが野次に向かって怒鳴り返した。今にも喧嘩に発展しそうな空気になっている。そこへモーちゃんが間に入った。


 「落ち着いてくれ。アユミの言ったことは俺も間違っていないと思う。だがまずは今の提案に対する天井班の意見を聞かせてくれ。タクミ、頼む。」


 モーちゃんが冷静な態度で話したため、その場はいったん収まった。そしてタクミが前に立つ。


 「俺たちは確かにランタンを取り外して以降は何も成果が出ていない。だがそれは、俺たちが担当している仕事が「穴掘り以外の方法での脱出方法の検討」だからだ。アユミが言うように遊んでいたわけではなく、俺たちは検討をしていたんだ。色々と検討したが今のところ良い案が見つからないというだけだ。計画を立ててできるような簡単なことではない。もし何か良い計画があるなら教えてほしいくらいだ。」


 「検討なんて言って、ただ遊んでいただけでしょう!何か良い計画があったら教えろだなんて、計画を立てるのがあなたの仕事でしょ!」


 「なんだとこらっ!」


 「何よ!?本当のことでしょう!」


 タクミの言った言葉にアユミが食って掛かると、モリヤが怒鳴り、アユミが負けじと声を張り上げ、睨み合いを始めてしまった。


 僕は黙って状況を見守っていた。アユミの言う通り、天井班はここのところ何か活動している様子が無かった。その理由はタクミの言う通り、何をするかを検討している段階だからではあるが、下手の考え休むに似たりだ。何日も考えているだけというのは時間の無駄でしかないだろう。だが素行の悪い人が集まった天井班は大人しくしてくれているだけでもありがたいとも思うのだった。

今の問題はアユミがやたらと攻撃的なことだ。アユミはタクミたちが仕事をしていないことに腹を立てていると自分自身でも思い込んでいるようだった。だが僕には、現状に対する漠然とした不満がアユミの怒りの原因になっているように思えた。ようするに、ここでの生活で溜め込んだストレスが爆発したのだ。下手に突くと被害が拡散するだろう。こんな状況では女神の夢の話も切り出せない。


 「脱出の方法なんて簡単に見つかるはずがないのだから、長い目で見てくれないと困るな。なあアロー君、そう思うだろう?」


 タクミが話を振ってきた。またこのパターンかと思うと顔を引きつってしまう。

ここでタクミの味方をするような発言をすればアユミの怒りの対象がこちらにも向くことは間違いない。かといってアユミと一緒になって天井班を非難してもクラスを分裂させるだけで良いことなんて何も無い。モリヤたちが暴れ出しでもしたら最悪だ。火中の栗を拾うとはこういうこと言うのだろうと思いながらも、指名されては黙っているわけにはいかずに話し始めた。


 「アユミの言う通り、今の天井班には具体的な活動は無い。その理由はタクミの言う通りで今が検討段階だからだ。脱出が難しいことは分かっていたからこれまでについて文句は無いけど、アユミの言う通り今後は何か具体的な活動をした方がいいだろう。だから具体的な活動をみんなで考えるのが建設的だと思うんだ。」


 「なんでみんなで考えないといけないの!?それは天井班の仕事でしょ!だいたい穴掘り班だって遊んでばかりじゃないの。全員で掘ればもっと速く掘れるはずよ!」


 無難なことを言ってやり過ごせないかと考えていただが、思い通りにはいかずにアユミの怒りの矛先は穴掘り班にも向けられたのだった。


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