039.女神
チナツのせいで最後は締まらない結果となってしまったが、その場にいた全員がここが異世界である可能性を受け入れることになった。夢に関しては情報が不足していてよく分からないが、アローの考えが尤もらしいということになった。そして何より全員が全力でシズカを守ろうという意見で一致した。そしてシズカの見た女神の夢に関する当面の方針が決まった。
この話は秘密にしておくわけにはいかないクラス全体に影響する事柄だが、全員を集めて一度に話してしまうと最悪のケースとはいかないまでもおかしな反応をするものが出てくるかもしれない。そこで説明する相手の人数を絞り、丁寧に説明して理解が得られたらさらに説明する相手を増やしていくことになったのだ。何よりシズカの安全を考えての方針だった。
最初に説明する相手はマッサンたち穴掘り班のメンバーに決めた。マッサンたちとは穴掘り班のメンバーとして一緒に話し合ったりダイヤモンドゲームなどを通して一緒に体を動かしたりしてきた。これまでの時間でしっかりとした信頼関係を構築してきたつもりなのでシズカの味方になってくれるだろう。
穴掘り班のメンバーを全員広間の隅に集めて事情を説明することにした。穴掘り班で集まって相談することはこれまでにもたびたびあったので他の班から怪しまれることも無い。
事情を聞いたメンバーの反応はさまざまだった。
マッサンはシズカのことを女神様と呼び出した。シズカは女神が夢に出てきただけで自分が女神ではないから止めてくれと言ったが、止めようとしない。実はマッサンはシズカのことを元から密かに神と崇めていた。シズカが神で、タカサキがキング、コイケがクイーン。マッサン調べによる胸の大きさで決められたランクであり、そのことを知っていたシローは、「あれは病気だから諦めろ。」とシズカに告げた。
タカト、マサル、ナガヤマ、イマイの4人はマッサンのその様子を見て面白がってはいたが、女神の話については半信半疑というところだった。そしてテルは大方の予想通りに可笑しな反応を示した。
「ふうぉー!女神降臨!そしてシズカ殿が女勇者でござったか!飯が進むでござるな!」
嬉々とした様子でそう叫ぶテルを見て、穴掘り班の女子は少し距離を取りながら、「どうしてご飯が進むの?」などと小声で話していた。アローたちも「あれは落ち着くまで放置しよう」と小声で話していた。
シズカはみんなの反応を見るまでは緊張していたが、みんなの反応が好意的であったことでほっとしていた。その様子を見てアローはシズカに声を掛けた。
「僕が変なことを言ったせいで不安にさせてしまったよね。ごめん。」
「ううん。アローくんは私のことを心配して考えてくれていたのだもの、感謝しているわ。ありがとう。」
「まだモーちゃんやタクミたちにも話さないといけないからね。実はモーちゃんたち料理班の反応が一番心配なんだ。随分とストレスを溜め込んでいるみたいだからなぁ。」
何の気なしに言ったこの心配は、直ぐに違う形で現実のものとなったのだった。