031.穴
すみません。毎日更新してましたが更新頻度を下げます。週1くらい?
穴掘りの成果が出たのは異世界転移6日目のことだった。
「穴が開いたぞ!」
ナガヤマが叫んだ。ナガヤマは台に上って右側の壁の開かない扉の上を掘っていた。他の扉の構造から扉の上部の壁は薄いことが予想されたため、わざわざ台を用意してまでその個所を掘っていた。他に掘り進めている壁や床はまだ貫通しそうもないため、この場所を選んだのは正解だったようだ。
クラス全員がナガヤマの周りに集まってきた。みんなが集まり穴を確認する。穴と言ってもまだとても小さく小指の先くらいしかないが、確かに貫通していた。
「中は見えるか?」
「駄目だ。中は真っ暗だ。穴が小さくて見えない。」
「匂いは?」
「特にない。」
「穴を広げるしかないな。ナガヤマ!頑張って大きくしてくれ!」
みんなの期待を一身に背負い、ナガヤマはスプーンに力を込めた。
「うぉーーーっ!!」
「あっ、待て!ナガヤマ!止めろ!」
「えっ!?あっ!」
アローが制止を掛けたが手遅れだったようだ。ナガヤマの手に持ったスプーンは折れてしまっていた。別にスプーンの替えはあるからいいのだが、ナガヤマは穴掘りの初日にもスプーンを折っている。そしてその時も同じような雄叫びをあげながら掘っていた。力を込めて掘った方が掘るスピードは速いかもしれないが、力を入れ過ぎるとこうしてスプーンが折れてしまうのだ。スプーンも無尽蔵にある訳ではないので穴掘り班ではスプーンを丁寧に使おうと決めてあったのだが、これで折れたのは3本目で全てナガヤマが折っていた。
「すまん!!またやってしまった!」
「さすがナガヤマ。」
「またかよ~。」
「もういいから。気をつけてくれよ。」
穴掘り班の面々は3回目ともなると慣れたもので、呆れつつも替えのスプーンを持ってきてナガヤマに渡した。そしてみんなが見ているとナガヤマがまたスプーンを折りそうだということで解散となった。貫通したことは大きな成果だが、もう少し穴が大きくならないとどうしようもなかった。
その後はナガヤマも丁寧に掘り進めた。さらに交代しながら穴を掘り進め、翌日には穴は拳が通る程の大きさになったのだった。
姫「壁に穴が開いたみたいだけど大丈夫なの?」
爺「不味いですな。不味いですな。」
姫「不味いのね。どうして放っておいたの?」
爺「手の打ちようが無いのですな。」