030.ダイヤモンドゲーム
「ちょっとしたゲームをしよう。」
アローが考えたのはキャッチボールだ。マッサンがリーダーになった際の挨拶で布を丸めてボールを作ってキャッチボールをしようと言っていた。そして実際にボールを作り、キャッチボールをしていた。だがすぐに飽きてしまった。野球のボールとグローブでやるキャッチボールと比べると、布のボールと素手でやるキャッチボールには爽快感が足りなかった。
「まずはボールから改良だな。」
布を丸めて作ったボールでは重さが足りず球速が出ない。そこで布の中に重りとして、大豆のような乾燥した豆を詰めることにした。料理班にお願いして少量の豆をもらい布に詰めて紐で縛る。布を厚く巻くことでキャッチしても痛くないようにした。今までのボールよりはキャッチボール向きになっただろう。
次にルールを考える。ただボールを投げて受けるだけでは面白味が少ない。競い合うゲーム性を持たせるべきだろう。そこで考えたのはタイムトライアルだ。4人1チームで一辺5mの4角形を作るようにして立ち、ボールを時計回りに投げて回していく。そして10周するまでのタイムを競うことにした。4角形は野球のホームベースと1~3塁をイメージしていたため、このゲームはダイヤモンドゲームと名付けられた。
マッサンたちにゲームを説明するとすぐにやることになった。記念すべき第1回はマッサン、シロー、タカト、マサルの4人が挑戦し、アローがタイムを計ることになった。タイムは腕時計に付いていたストップウォッチ機能を使用する。
「ストップ!2分32秒!この記録が暫定1位だね。1回落としたし、初回だからすぐ抜かれると思うけど、とりあえずは暫定チャンピオンだ。」
こうしてダイヤモンドゲームが始まった。娯楽の少ない生活の中で、ダイヤモンドゲームはクラス全体に広がっていくことになる。基本的には投げて受けるだけなのだが、タイムトライアルにしたことで素早さが追求されていく。キャッチからスローまでを如何に素早くできるかという試行錯誤が生まれたのだ。始めは左手でキャッチして右手で投げるという野球のキャッチボールと同じスタイルが主流だったが、次第に右手でキャッチしてそのまま右手で投げるワンハンドスタイルが主流になっていった。また、男子部門、女子部門、男子2名女子2名のミックス部門といった部門分けも生まれていった。
穴掘り班はマッサンを中心としたスポーツ好きのメンバーが多いため、穴掘りの休憩中はダイヤモンドゲームの練習をすることが多くなった。アローの狙い通り、穴掘り班の休憩時間は活発な時間になっていったのだった。