029.次の噂
異世界生活3日目に流れた近いうちに食料が尽きるかもしれないという噂は翌日には払拭されたが、すぐに新たな噂が流れ出していた。
「コイケとアローが付き合っているという噂が飛び交っているみたいだ。噂を率先して流しているのはまたもモーちゃんだ。」
シローがアローにそう報告した。この噂もモーちゃんが率先して流しているという点では前回の噂と同じだが、大元にあるのが、コイケが完成したばかりのうどんをアローに食べさせたことだ。その光景はクラスのほぼ全員が目撃していた。娯楽の少ない閉鎖空間において、この手の噂話は最高の娯楽だったため、あっという間にこの噂は全体に広がった。
「モーちゃんにとっては都合のいいネタってことか。前のとは違って誰も非難されていないからいいけどね。」
「否定しないのか?」
「悪評ってわけでもないから、聞かれたら答えるという程度でいいかな。シローも聞かれたら付き合ってないって言っておいてよ。」
今回の噂は放置しても構わないと判断した。この集団生活が長引けば同じ様な話題はいくらでも出てくるだろう。男女が一緒に暮らしているのだから実際に付き合う者も出てくるかもしれない。今回の噂はそういった新しい話題に直ぐに取って代わられるはずだ。大騒ぎする必要はない。
「それよりも穴掘り班の人たちがちょっと疲れてきているみたいだよね。」
「ああ、他の班が遊んでいるみたいな物だからな。チマチマと穴掘りをしているときに楽しそうな笑い声とか聞く嫌になるだろ。」
シローの言うとおり、他の班は遊んでいるように見える時間が多い。料理班は一日中料理をする必要はないので雑談している時間が多い。天井班も活動初日にランタンを取った以降は作成会議というなのおしゃべりばかりをしている。そんななかで地味な穴掘り作業をしていてはやる気が下がるのは仕方ないだろう。
「僕たちも同時に作業するのは4人で他は休憩しているのだから変わらないのだけどね。何故か休憩も真面目におとなしくしている感じになっているよね。何か休憩中にできる楽しいことを考えよう。」