025.心配
ヨウコはレイナに泣いていた理由を話した。話したからと言ってどうなるというものではないが、アローは泣きたい時には泣けばいいと言っていた。でも、一緒に生活しているのに泣いている理由を確認せずにいるのは良くないとも言っていた。それは一緒に暮らす家族のようだと思った。そう思った時点でヨウコの中では泣きやむ理由が出来ていた。
ヨウコは家に帰らない自分を家族が心配していることを想像して泣いていた。ヨウコは母親が家に帰ってこない姉を心配して泣いている姿を見たことがあった。今の自分はその時の姉と同じ様に母親に心配を掛けているだろう。あの時の母親の姿を思い出すと申し訳なくなり、自然と涙が出てきた。みんなと何かをしている時は平気なのだが、寝る前の時間になると思い出してしまう。今は自分のことで精一杯のはずなのだが、母親の心配する姿を想うと自分のことよりもよほど心が締め付けられるのだ。
ヨウコは家族を心配させたくなかった。だが心配させてしまっている。だから泣いたのだ。だが、泣くことで心配する人がいる。そのことに気付いた。もう泣くわけにはいかない。ヨウコは最初に声を掛けてくれたレイナに泣いていた理由を話した。そしてもう泣かないと宣言したのだった。
レイナとヨウコはおよそ30分で衣裳部屋から出てきた。出てきた時、ヨウコはすっきりした様な表情をしており「心配させてごめんなさい。もう大丈夫です。」とみんなに伝えた。一方レイナは目が真っ赤になっており、泣いていたことが分かった。出てきたレイナはアローに詰め寄った。
「アロー!解決できないって言ったよね!?あれってどういう意味!?」
「あれ?解決できることだった?この状況だし、学校なり家なりに帰ることが解決じゃないのかな?」
「あんた断言したよね!?解決できないって!!もう絶対帰れないってことなの!?」
「あ~~、違うよ。僕が帰り方を知らないという意味だよ。帰れないと断言したわけではないよ。」
「えっ?そう。あーしも帰り方知らないし。・・・ならいいし。」
「とにかくありがとう。レイナのお陰でヨウコちゃんはもう大丈夫そうだね。」
「あーしは何もしてないし。」
レイナは泣いているヨウコに話しかけた。そして話を聞いた。本人は何もしていないと言うが、アローから見れば十分に何かをしていると思う。レイナのことは今まで馬鹿だと思っていたが、見直した。そう、レイナは心優しい馬鹿だ。声には出せない。
レイナが納得したのか離れていくと、今度はサヤカが嬉しそうに話しかけてきた。
「やっぱりアローくんは頼りになるね!」
「僕は何もしていないよ。」
「ふふっ。レイナと同じことを言ってるよ。」
「あっ、本当だ。不味い、あれはうつるのか!?」
「何がうつるの?」
「馬・・・、何でもない。そうだね。レイナもアユミも僕もサヤカさんも、みんなが何かした。他の人も心配したり何かしようとしたりしただろう。そういうことだね。」
アローはサヤカとの会話を終えると予定よりかなり遅くなったが寝袋に潜り眠りに就いた。こうして異世界生活2日目が終わった。