024.ヨウコ
「二人とも、ちょっといいかな。」
「「何よ!?」」
口論するレイナとアユミの間に割って入ったアローに二人が疑問の声をあげた。アローは勝手に話を進める。
「とりあえずアユミはレイナに謝ろう。」
「何で私が?」
アユミに謝るようにと促がすが、アユミは納得がいかない様子で不満を漏らす。するとアユミの横にサヤカがやってきた。
「アユミ、ほら、とりあえず謝ろうって。ほら。」
「え、なんで?え?ご、ごめんなさい。」
サヤカに促されてなんだか分からないうちにアユミは謝ることになった。
「それじゃあ次はレイナ。レイナはヨウコちゃんに謝って。」
「え?あーし?ご、ごめん。」
レイナも言われるがままに頭を下げた。
「次は僕だね。僕はみんなに謝らないといけない。ごめんなさい。」
そう言って僕も頭を下げた。そして頭をあげると説明を始めた。
「僕はレイナがヨウコちゃん話しかける前から誰か泣いている人がいることに気付いてた。でも誰か分からないからと無視しそうになっていた。みんなで協力して生活していこうという時に、泣いている人がいて理由も確認しないでいるのは不味かった。泣きたい時には泣けばいいと思う。でも、一緒に生活しているのに泣いている理由を確認せずにいるのは良くないよね。僕の怠慢だ。ごめんなさい。」
「レイナが話しかける前から泣いていたの?」
アユミが小声で呟いた。
「あーしはそう言っていたし。」
残念ながらレイナは自分のせいではないとしか言っていなかった。話し掛ける前からとは言っていない。残念な子だった。
「そうアユミはレイナが泣かせたと決めつけてたけど、間違いだから謝ってもらったんだ。」
「そうだったのね。レイナ、ごめんなさい。」
「別にあーしは気にしてないし。で、なんであーしは謝ったし!」
「レイナは話し方が怒っているみたいだったから、ヨウコちゃんに謝っておいた方がいいと思ったんだ。」
「あーし怒ってないし!!」
「いや、今も怒っているみたいだよ。」
そう指摘すると、サヤカやアユミが頷いて同意した。
「あーし怒ってないし!!えっこれも?いや怒ってないから。ごめん。」
レイナは途中から声を小さくして最後にはヨウコに向かって頭を下げた。ヨウコは首を小さく横に振っていた。
「僕も泣く理由を確認しなかったのは失敗だった。もう一度謝るよ。ごめんなさい。」
再び今度はヨウコに向かって頭を下げた。そしてヨウコに向かって話し始めた。
「ヨウコちゃん、さっき言った通り、泣くこと自体は問題ない。でも、泣いている人を理由も聞かずに放置するのは駄目だと思う。だから泣いている理由を聞かせてほしい。言い難いだろうから全員にとは言わない。誰か一人でいいから話してほしい。例えば、僕に話してもらえるかな?」
ヨウコに問いかけたが、ヨウコに反応はなかった。
「それなら、レイナならどうかな?」
再びヨウコに問いかけると、ヨウコは小さく頷いた。
「えっ?あーし?無理だし。人の悩みとか、解決できないし。」
「いや、解決はしなくていいから。聞くだけ。聞くだけだからね。解決なんて僕だってできないよ。」
「アローならできるっしょ?」
「聞く前から申し訳ないけど、断言するよ。解決はできない。聞くだけだから頼むよレイナ。」
「分かったし。」
レイナはしぶしぶといった雰囲気を醸し出しながらヨウコを連れて衣裳部屋に入っていった。二人が出てきたのはおよそ30分後だった。