023.泣いている
異世界転移2日目の夜の食事は料理班が失敗したうどんの残骸が出されたが、とても残念な味わいだった。
穴掘りで疲労した僕はシャワーを浴びた後に早々に寝袋に入った。そして寝たフリをしながら周囲の声に聞き耳を立てていた。すると、初日の夜にも聞いた啜り泣きが聞こえてきた。声の質から女子であることは分かるため、女子のことは女子に任せようと無視しようとしたが、そこで騒ぎが起こった。
「ヨウコ、メソメソすんなし!!なにかあるなら言えばいいし!!」
レイナの声だった。泣いていたのがヨウコだと言うことだろう。
「泣くなし!泣いてるだけじゃ誰も助けられないし!!」
「ちょっとレイナ止めて!ヨウコちゃん泣いているじゃない。いじめちゃだめよ!」
アユミの声だ。女子のリーダー二人が参戦したのだからなんとか治めて欲しいところだ。
「アロー、起きろ。」
二人の口論を無視して寝たフリを続けていた僕を呼ぶ声がした。ダイスケの声だ。仕方なく目を開ける。
「うぉっ!」
目を開けた僕は思わず驚きの声を上げてしまった。目に飛び込んできたのは逆さまのサヤカの顔だった。サヤカは寝ている僕の枕元に座り、身を乗り出して顔を覗き込むようにしていた。
「ごめんね。アローくん、寝てた?」
「いや、まだ起きていたよ。」
そう言いながら寝袋から這い出て身体を起こすと、座っているサヤカと向かいあった。サヤカの隣にはダイスケが座っていた。いたずら成功とでも言いたげにニヤニヤしている。
「今ね、レイナたちが喧嘩しているの。ヨウコちゃんも泣いているし、アローくんなら何とかできないかな?」
「なん・・・、分かったよ。とりあえず話を聞きにいこう。」
「なんで僕が」と言いかけて止めた。なんでか、それは僕がリーダーだからだ。そしてサヤカは穴掘り班の班員だ。僕に相談に来ることに問題はない。学校でその他大勢としてひっそりとしていた時とは違うのだ。それに他ならぬサヤカの頼みだ。聞かないわけにはいかない。寝袋に入る前にシローが話していた言葉を思い出した。
「女子はほとんどが料理班に行くと思っていたが、穴掘り班にも4人も来ただろう。気になって何でか聞いてみたんだ。イトウちゃんは料理が壊滅的に駄目らしい。シズカとチナツはサヤカについてきたそうだ。それでサヤカは、アローなら頼りになると言っていたらしいぞ。」
その時のシローは先ほどのダイスケと同じ様にニヤニヤしていた。
レイナたちのところへ向かうとサヤカもついてきた。レイナたちの周りには人が集まりだしていた。そしてレイナたちはまだ口論している。
「レイナがきつく言ったからヨウコちゃんが泣いちゃったのよ!謝りなさい!」
「あーしのせいじゃないし!」
「でもこうしてヨウコちゃんは泣いているじゃない!」
僕は一瞬躊躇したが、意を決すると二人の間に割って入った。
「二人とも、ちょっといいかな。」