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異世界転移したけど女神も姫も出てこない  作者: かが みみる
本編
23/80

023.泣いている

 異世界転移2日目の夜の食事は料理班が失敗したうどんの残骸が出されたが、とても残念な味わいだった。


 穴掘りで疲労した僕はシャワーを浴びた後に早々に寝袋に入った。そして寝たフリをしながら周囲の声に聞き耳を立てていた。すると、初日の夜にも聞いた啜り泣きが聞こえてきた。声の質から女子であることは分かるため、女子のことは女子に任せようと無視しようとしたが、そこで騒ぎが起こった。


 「ヨウコ、メソメソすんなし!!なにかあるなら言えばいいし!!」


 レイナの声だった。泣いていたのがヨウコだと言うことだろう。


 「泣くなし!泣いてるだけじゃ誰も助けられないし!!」


 「ちょっとレイナ止めて!ヨウコちゃん泣いているじゃない。いじめちゃだめよ!」


 アユミの声だ。女子のリーダー二人が参戦したのだからなんとか治めて欲しいところだ。


 「アロー、起きろ。」


 二人の口論を無視して寝たフリを続けていた僕を呼ぶ声がした。ダイスケの声だ。仕方なく目を開ける。


 「うぉっ!」


 目を開けた僕は思わず驚きの声を上げてしまった。目に飛び込んできたのは逆さまのサヤカの顔だった。サヤカは寝ている僕の枕元に座り、身を乗り出して顔を覗き込むようにしていた。


 「ごめんね。アローくん、寝てた?」


 「いや、まだ起きていたよ。」


 そう言いながら寝袋から這い出て身体を起こすと、座っているサヤカと向かいあった。サヤカの隣にはダイスケが座っていた。いたずら成功とでも言いたげにニヤニヤしている。


 「今ね、レイナたちが喧嘩しているの。ヨウコちゃんも泣いているし、アローくんなら何とかできないかな?」


 「なん・・・、分かったよ。とりあえず話を聞きにいこう。」


 「なんで僕が」と言いかけて止めた。なんでか、それは僕がリーダーだからだ。そしてサヤカは穴掘り班の班員だ。僕に相談に来ることに問題はない。学校でその他大勢としてひっそりとしていた時とは違うのだ。それに他ならぬサヤカの頼みだ。聞かないわけにはいかない。寝袋に入る前にシローが話していた言葉を思い出した。


 「女子はほとんどが料理班に行くと思っていたが、穴掘り班にも4人も来ただろう。気になって何でか聞いてみたんだ。イトウちゃんは料理が壊滅的に駄目らしい。シズカとチナツはサヤカについてきたそうだ。それでサヤカは、アローなら頼りになると言っていたらしいぞ。」


 その時のシローは先ほどのダイスケと同じ様にニヤニヤしていた。


 レイナたちのところへ向かうとサヤカもついてきた。レイナたちの周りには人が集まりだしていた。そしてレイナたちはまだ口論している。


 「レイナがきつく言ったからヨウコちゃんが泣いちゃったのよ!謝りなさい!」


 「あーしのせいじゃないし!」


 「でもこうしてヨウコちゃんは泣いているじゃない!」


 僕は一瞬躊躇したが、意を決すると二人の間に割って入った。


 「二人とも、ちょっといいかな。」


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