021.天井班
班分けが決まると早速班毎に分かれて行動を開始した。
行動開始の初日から成果を上げたのはタクミが指揮する天井班だった。
タクミはまず、食料庫から食材が詰められた樽を持ち出してきた。そしてそれを積み重ねて踏み台にしたのだ。
「スズシー、お前が登れ。」
樽をピラミッド上に三段重ねると、タクミはスズシーに登れと命令した。スズシーはタクミのグループに属しているが子分扱いされており、タクミの命令に逆らうことはできない。
「ちゃんと押さえていてくれよ。頼むよっ。」
「分かったからさっさと登れ!」
スズシーは恐る恐る登り始めた。
「の、登ったよ!」
「おい!腰が引けてるぞ、ちゃんと立て!よし、そうしたら手を伸ばしてランタンを取れ!」
タクミ達は樽をランタンの下に積み上げていた。ランタンは壁の1面に4つずつ在り、部屋全体では16個あった。そのうちの一つ、大扉のある前側の壁の食料庫よりのランタンの下に樽を積み上げたのだ。
「熱いでしょ!触れないよ!」
「馬鹿野郎!そこは根性だ!根性で乗り切れ!」
スズシーは言われるがままに根性を出して手を伸ばした。結果的には大して熱くなく、ランタンは壁から飛び出たフックに引っ掛けられているだけだったため簡単に取ることができた。
「あれ、取れちゃったか。予想外だな。」
タクミはそう呟くと、アローを呼んだ。
僕はタクミとランタンを調べようと事前に相談していた。ランタンはもう1日以上の時間を光り続けており、一向に消える気配が無かった。そのため僕たちはそれをランタンに見せかけた電灯だろうと予想していた。電灯であれば電線が繋がっているはずであり、それを確認しようと考えていたのだ。だが予想外にもランタンは簡単に壁から外れ、電線の類は繋がっていなかった。
「アローくん、見てくれ。やっぱりランタンではないよ。電源が繋がって無いとすると電池かな?分解してみるか。」
タクミの言う通り、それはガラス窓の中に火が燃えているランタンではなかった。ガラス窓に相当する部分が直接発光しているようだった。タクミは直ぐにも分解しようとするが、それを止めた。
「分解して使えなくなったら困るから、先に上を照らして天井が見えないか確認しよう。」
「それもそうだな。よし、スズシー、これもって上を照らしてみろ。」
タクミは樽の上に登らせたままのスズシーにランタンを渡した。スズシーはランタンを受け取ると、ランタンを横に持ち、上を照らした。
「何も見えないよ。」
スズシーの言うとおりで、下から見ていた僕たちにもランタンが取り付けられていた場所から上は真っ暗で何も見えなかった。ランタンで照らしているのに天井どころか壁すらも見えないのだ。
「天井が滅茶苦茶高いのか?壁もそこから無いとか。おい、スズシー、壁があるか手を伸ばして触ってみろ。」
「と、届かないよう~。」
タクミに言われてスズシーが手を伸ばしたが暗闇までは手が届かない。
「もう一段重ねるのは難しいな。みんな、何か棒のようなものを探してきてくれ。」
タクミの指示で天井班が動き出した。直ぐにウキが調理場から柄の長いおたまを持ってきた。それをスズシーに渡すと、スズシーが暗闇におたまを突っ込んだ。
「壁はあるみたいだよ。」
スズシーが暗闇の中の壁を叩くと確かな手ごたえがあった。
「今、おたまも見えなくなったよな。」
「そうだね。」
僕たちは互いに顔を見合わせて今起きた現象を確認しあった。おたまは元々ランタンがあった場所より上までいくと突然見えなくなったのだ。
その後はクラス全員を呼び、その現象を確認した。
「どういう原理かは分からないけど、あそこから上は見えなくなっている。上には何かが隠されている可能性が高いと思う。俺達は引続き上を調べることにする。何かわかったらみんなに伝える。」
タクミがまとめると全員がそれでいいと了解した。
その後、タクミはランタンを分解しようとしたが全ての部品が強固に接着されているようで分解することはできなかった。電池を入れる場所も見つけられなかった。
姫「登ってきたわよ!」
爺「大丈夫ですな。まだまだ届きませんな。」