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異世界転移したけど女神も姫も出てこない  作者: かが みみる
本編
16/80

016.タクミ

 全員の朝食が終わり片付けも終ったところでモーちゃんがクラス会議をしようと言い出した。


 「みんな、聞いてくれ。僕達はこれから協力し合って生活していく必要があるだろう。そのためには一定のルールが必要だと思う。だからこれからこのクラス会議を開いてルールを決めていこう。」


 アローも同じことを考えていたのでアローに異存はなかった。だが、またもやタクミが騒ぎ出した。


 「その前に昨日から思っていたけど、なんでモーちゃんが仕切っているんだ。」


 「俺はクラス委員として責任があるからクラスをまとめようとしているんだ。」


 「ここはもう学校じゃない。クラス委員なんか関係ないだろう。俺はお前の指示に従う気はない。勝手なルールを決めても従わないからな。」


 タクミはそう言い残すとモリヤ、ウキ、ツカッっちゃん、オオノを連れて炊事場に向かって歩きだした。


 「タクミ達は無視して会議をしよう。」


 モーちゃんがそう言うが、誰も納得した様子が無かった。集団生活のルールを決めるのに既に離脱者がいるのではまとまりようがない。全員がそれを感じとっていた。


 「ちょっとタクミ達と話してくる。」


 アローはそう言うとタクミ達を追って炊事場に向かおうとした。


 「俺も行くよ。」


 マッサンが声を掛けてきた。モーちゃんは憮然とした表情で動こうとしない。


 「ありがとう。でも、まずは一人で行かせて欲しい。」


 「でも、」


 「マッサン、大丈夫だ。」


 「アローには何か考えがあるのだろう。任せた方がいい。」


 マッサンが何か言いかけたが、ダイスケとシローが間に入った。アローとダイスケ、シローは視線だけを交わすと頷きあった。信頼関係を確認しあうアイコンタクトだった。互いになんとなく頼もしく思うだけで特に意思疎通はできていないが。


 「何かあったら声を掛けてくれよ。」


 マッサンから掛けられた声に頷くと、アローは炊事場に入っていった。


 炊事場の中でタクミ達は大きな鍋に水を汲んでいた。アローが中に入るとモリヤがアローの前に進み出た。


 「何しにきた!」


 モリヤが怒鳴ったがアローは動じなかった。アローはモリヤのことを良く知っていた。モリヤは短気で暴力的だが悪人ではない。モリヤは仲の良いタクミの手助けをしているつもりだろう。タクミがやれと言えば殴りかかってくるだろうが、タクミと友好的に話している分には問題ないはずだ。だからアローはモリヤを無視してタクミに声を掛けた。


 「ちょっとタクミに相談があってね。タクミ、相談に乗ってくれないか?」


 「相談?何の相談か分からないけど、今度は邪魔はしないでくれよ。」


 「ああ、水を汲んでいるところを見ると、氷を作るつもりかな。何をしたいかは分かるけど、もっと面白いことがあるんだ。」


 タクミは何をしたいか分かると言ったアローを睨みつけた。タクミは昨日アローによって阻止された食料庫占領を再び計画していた。タクミの計画がアローに阻止された理由は、タクミが食料以外の物の価値を見誤ったせいだった。だから食料以外の物を手に入れてしまえば計画は阻止できなくなる。寝袋や毛布は昨夜のうちに全員に配られた。シャワーは我慢できる。トイレは食料庫の中にある樽を一つ空にして、そこにすればいい。臭いが気になるが、蓋をして冷凍庫に入れてしまえば何とかなるだろう。後は水を確保すればしばらくは耐えられる。だから今は水を汲んでいるのだ。アローの言う通り、氷らせて保管するつもりだった。

 タクミはアローに計画がばれていることに驚いたが、アローならそれくらい気付いても可笑しくないかと直ぐに気を持ち直すと、話を聞こうとアローの前に立った。


 「タクミは昨日の食料庫の時と同じで、クラスのみんなを出し抜こうとおもっているんだろう。でも、出し抜く相手はクラスのみんなではないよ。」


 アローが続けた言葉にタクミは眉を顰めた。


 「アローくんは何を企んでいるんだ?」


 「僕は、僕たちをここに閉じ込めた奴を出し抜きたいと思っている。僕たちを閉じ込めた奴が想定していない方法で外に出るんだ。」


 「どうやって?」


 「それをタクミに相談しにきたんじゃないか。そういうのは得意だろう?」


 アローがそう言うとタクミは驚きの表情を見せたが直ぐにブツブツと考え始めた。


 「想定しない方法、想定しているのは扉、それ以外、壁、床、天井、下水、想定されている可能性はあるが、壁を掘るか。道具は、スプーンとかが有ったな。それでいけるか。何もしないでいるよりはいいな。確かに面白そうだ。

 アローくん、他にも何か良い案が無いか考えるけど、まずは壁を掘るのはどうかな。でも、それくらいならアローくんも思いついていただろう。何で相談に来たんだい?」


 「モーちゃんに扉の時みたいに、壁の向こうのリスクがどうのとか邪魔されたくなかったんだ。どうやって話を持っていったらいいかもタクミに相談したい。」


 アローの言葉を聞いてタクミはニヤリと笑った。


 「そういうことなら納得だ。モーちゃんは俺以上に暴走中だからな。まだクラス会議をやる気で待っているのか?」


 「うん。待っているよ。」


「そうか。それならそこで話を出そう。俺から言うよ。みんな!アローくんの計画の方が面白そうだ。計画を変更してクラス会議に出よう。俺が案を出すからみんなは賛成してくれればいい。」


 タクミは仲間を連れ立って広間に戻った。こうしてクラス会議が始まった。


姫「おはよう。」

爺「おはようございます。姫様。夕べはよく眠れましたかな。」

姫「ええ。残念ながら夢も見ずにぐっすりよ。」

爺「女神様には会えなかったのですな。」

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