No.4「4歩目」
それから私は、大人になった。
実家を離れて都会での独り暮らし、
耐えきれないときは、あの日の事を思い出す。
またいつか会えると信じているから、
そして、その日はやって来る、
今日私は、準備を済ませると、車に乗り込み、久方ぶりに実家に帰ることにした。
親と会いたいのもあるが、第一の目的は ―
車の中でのカーラジオの天気予報も、今日は暑くなると告げている、あいにくとエアコンを効かせた車の中では全くそれを感じられなかったが。
あの子に会うには絶好の日和だと、空を見上げながら感じる。
実家につくもう少しと言うところで、私は少しより道、大事な親友が待っていた、
彼は今地元で親父さんの仕事の手伝いをしている。
彼は私を見掛けるなり駆け寄り、背中を勢いよくはたく、幼い頃からの決まり後とのようなやり取り。
「お前今日戻ってきてたのか!都会はどうだ?」
「ぼちぼち」
消極的な私と積極的な彼とはいつも対極に位置していて、なぜ友達なのかと知らない人には不思議がられるほどであったが、
いつも意見は一致していた。
「そうか、お前、会いに行くんだな」
私の話をちゃんと理解してくれるのは、父とこの最高の親友だけ、あの子の事を分かってくれるのは。
「会えなかったらとか考えるんじゃねーぞ、あったらちゃんと話聞かせろよな!」
そう言ってまた背中を勢いよくはたこうとするが
「2度目は止める」
その手をしっかり受け止め、握手した。
これも、いつも通りである。
いきなり帰ってくるなんて、ちゃんと連絡しろ。
父には唐突の訪問を少し叱られてしまった、
ごめんごめんと言いながらお土産物を出す。
友人ができた頃から、ちょうど父も仕事が収まってきて、私の相手をしてくれるようになっていた。
「積もる話もあるのだが…お前は神社に行きたいんだろ?」
そして、私の話したこともちゃんと理解してくれている、ただの夢物語と馬鹿にせずに。
「帰って早々ごめん」「戻ったらちゃんと話、聞かせろよ」
父も親友と同じようなことを言った。
言い終わるなり私は神社に向かって駆け出していた、
昔あの日ほど遠くない道のりを通って。
あの日より軽く階段を掛け上って。
神社にたどり着くと、あの日と変わらず立っていた大きな木に
― お久しぶりだね ―
あの子は立っていた。