No. 3「3歩目」
本音を言えば、もっと遊びたかった。
魚取りで、次はあの子に勝ってやるぞって
水泳では、あの子より長く息が続かなくって負けて、
次はもっと遠くまで泳いでやるぞって
魚取りに水泳、確かに、あの湖ではなんでも出来た。
私がやりたかったことが、出来た、
遊びながらきっと、心も湖のように透き通り、素直になっていったのであろう。
たぶん私は、
― ねえ、楽しい?
私ね、ここで一人で遊んでいたから、
今日は、二人で遊べてとても嬉しかったの ―
「…うん、楽しい」
友達と遊びたかったんだ。
何だかんだ心で気持ちを押さえつけて、がんじがらめにしてしまって、
本当の気持ちを、神社と自分の世界に閉じ込めていてしまったんだ。
そして私はこの子とずっと遊んでいたい、
不思議とそんな気持ちに刈られていた。
なぜだろうか、
また明日、そう言ってしまえば、もう二度と会えない気がして、胸が騒いだ、
そしてつい不安になって、言葉が出る。
「明日も遊べる?」
それまでずっと太陽のように明るかった女の子がとたんに下を向いて、ちょうど日暮れ時の木陰に重なり、顔が見えなくなってしまった。
ちょうど水温も下がってきていて、まるでもうこの時間は終わりだと、子供だった私に静かに告げるようだった。
―明日は、遊べない…
ううん、あさっても、しあさっても
私、きっと今日でさよならだから、
でも ―
「なんで、なんでさよならなの?」
そこまでで自然と言葉を遮ってしまう、
さよならの意味を知らなかったわけがない
そこから先を聞きたくなかった、例えどんな理由であろうとさよならが嫌で、この女の子とまた遊びたいと 。
しばらく、時が止まったかのように二人の間には静寂が訪れる、私も顔がうつむいていた。
先に、女の子がぎゅっとして口を開く。
― でも、またいつか、会えるよ ―
ふと見上げると、見えなかった女の子の顔がまた見えた、今度はにっこり笑った笑顔に、少し目元に滲んだ涙に、小さな嘘があったのだろうが。
私はその涙を水泳した後の、水の後だと勘違いしていた。
「いつ会える?」
すると、うんうんと唸って、突然、ひらめいた!といった感じで私の方を向いて話し出す。
― ずっと先に、私の事に気がついたら、君が大人になる頃かな、それまで楽しみに待ってるよ、
今日と言う日を、ずっと忘れないでいてくれたら、あ、ずっとじゃなくてもいいよ、時々苦しくなったり、寂しくなったときにでも、思い出してよ ―
「大人になったら、約束だよ」
そうして話しているうちに、日は落ちかけていた、女の子は帰りと同じように、私の手を引いて、神社まで走って、駆けていく。
その後ろ姿を私は焼き付け、今でも時々思い出す。
神社につく頃にはもう辺りはすっかり夜で
怒られちゃうねと女の子に笑われる。
そして神社で、女の子と別れた。
それから家に帰る途中の道で、同じように帰る途中と言った感じの男の子を見掛けた、
その子は、俺を見つけると
「お前も母ちゃんに叱られるな」と笑う
話してみると、意外に近所だったことがわかり
「じゃあ明日、公園で遊ぼうぜ!」と約束をした。
彼は今でも大切な友人である。
あの日から私にはたくさんの出会いができ、
もう寂しくはなかったが、
それでも、それでもどこか心は空いていた。