No.2「2歩目」
知らない子だった、それなのになぜか
私はあの子に、惹かれていく。
女の子に手を引かれる、神社の裏の山道へと向かっているようだ、たぶんその時、私はそれまで山道など通ったことはなく、「何が起こるのだろう」と言う気持ちで一杯に溢れていたと思う。
山道を抜けていくと、小さな池のほとりを見つけるが
― ここじゃないの、もう少し歩くよ
この池の向こう側へ―
女の子は間もなく着くとより強く私を引っ張る、たぶん、今にも昔にも、あんなに強く引っ張られたことはない。
池に流れる細々とした川を辿る、だんだんと川の幅は広くなる。
そして、ついた先には
「…うわあ、すっごい」
大きな滝と湖がそこに現れたのだ、
滝は激しく流れ落ち、
湖は、今まで見てきた湖と言うものと全く違う、神々しさすら感じるような、透き通った湖。
横にいる女の子をふと眺めると、同じように透き通った肌が見えたが、その時私は二つの透明感は相似していると言う事を思いうかべる。
偶然でもなく、間違いなく女の子の肌の感じは今現在目の前にある湖と同じもので、それがとても不思議だった。
― さあ、遊ぼう!
魚とりする?一緒に泳ぐ?ここならなんでもできるよ!―
その疑問は頭の片隅において、まずはこの女の子と遊ぶことにした。
まず魚とりをすることにしたのだが、網も何も見つからない、その事を訊ねると、女の子は
そんなものはいらない、手でとれるんだと笑顔で答えた。
「そんなこと無理だって」
―出来るよ?ちょっと見ててね―
湖の浅瀬にゆっくり足をつけ、女の子がお手本を見せてくれた。
来た魚を素早く手で弾いて陸に掬い上げたのだ。
無論私は大きく首を振って無理だと言う事をアピールしたが、そんなことお構いなしと女の子に湖へ連れ込まれてしまった。
同じようにやろうとするのだが、魚は私の手元をするりするりと通り抜けていく、
そうしていたら、女の子がコツを教えてくれた。
―追っかけてるからダメなんだよ
足元まで待ってから、掬い上げるの ―
「そうなんだ?」
言われた通りにすると、最初のうちは手に当たるくらいでこそあったが、だんだんコツをつかみ、ついには魚を掬い上げる事ができた。
「やった!」
―やったぁ!やるじゃん!―
女の子もまるで自分の事のように喜んでくれた、
それからは二人でいくらとれるか競いあい、確か、私が10匹で、女の子はその倍は取っていたと思う。
余談ではあるが、今でも私は魚を手でとるのが得意だ、暇があれば近くの川に行き、魚を取ることもある。
それほどにあの女の子との出会いは私にとって水をぶちまけられるかのような出会いだった。
―まだまだ、君と遊びたいよ ―
あのときは、無限のような時間を過ごしていたと思う。
一人だった私にすれば、それは、とても「楽しかった」のだろう、
しかし、決して時間は無限ではなかった。