No.1 「1歩目」
確か、あの日も神社で過ごしていた。
私は神社に来ても、することは虫取りくらいで、後はのんびりと時の流れを待っていた。
時々、神主さんが神社に来て、掃除がてらに遊んでくれることもあったが、いつも一人でいた。
しかし、あの日は違ったのだ、
あの日、神社の近くにある、大きな木が大好きだった私は、そこで寝ようとしていた、すると。
― ん、おはよう―
正直、固まっていた。
当然と言えば当然、何しろ、滅多に人が来ないような寂れた神社に、自分と同年代くらいであろう女の子がいたのだから。
その女の子は私のお気に入りの大きな木に寄りかかって、まるで私が来るまで待っていたかのように、気軽に話しかけてきた、
まるで昔から一緒にいたかの様な感覚で。
私は女の子に言葉を尋ねた「君は、誰?」
すると、ビックリしたような顔になりながら、すぐに何かを納得したかのような仕草を見せ、口を開いた。
― あたしは、あなた
理解できなくて良いよ、今は。―
言われるまでもなく、幼い私に理解することなど不可能で、元々疑心感をその子に持っていたので、余計に怪しさを深ませる発言としか受け取りようがなく、戸惑っていた、
今ならたぶん、わかるのに。
ぐるぐる考えが頭を回っている間に、女の子がこちらに近づき、私の手を取った、
透き通るような白い肌は、日に焼けた私の小麦色の肌とは正反対である。
― 一緒に遊ぼうよ、今日だけで良いからさ
私、いろんな事してみたいんだ、君と。―
普段あまり積極的でない私は、そんなこと言われても…と心の中で呟いていたが、それを見透かしているよとでも思っているかのごとく、女の子は困り顔の私を引っ張って。
― 大丈夫、私、この辺の遊ぶ場所知ってるから!―
と元気な声を上げる、それでなのか、女の子への疑心感は、あっという間に吹き飛び、私はその子に引っ張られるがままについていった。