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白い翼のノイシュ  作者: ワルキューレ
『これはゲームではない』
9/32

9 女神ですが魔導の標的みたい

#9


 夜の大神殿に、ピンクな手袋とピンクな(ひづめ)が踊っている。


 白騎士はピクリとも反応しない。

 視覚感知じゃなくて、音や臭いに反応して襲ってくるタイプか。ピンクぃ物体を虫かなにかと勘違いしているのか。




『やはり、魔導カノンで撃ち抜くのがベストでしょう。残りの〈赤色鉱(ルビーメタル)〉は戦車に使うべきです』


 ……ウチヌク? なにをです?


『近接武器はもう作っちゃったんだし、ゼロ距離でぶち抜くのが安全確実! 残りの〈赤色鉱(ルビーメタル)〉は歩兵装備で決まりだよね?』


 ……ブチヌク? なにをです?


『水晶の硬度は七です。ヤング率は七十ギガパスカルを超えます。《大工=構造計算(アナライズ)》によると、612ダメージ与えれば脆性破壊を期待できますが……モンスターが徘徊する環境下で近接武器はカタログ性能を発揮しません。分の悪い賭けでしょう』


『それはどうかな? そもそも一撃で大ダメージ出したら圧電効果でビリビリしちゃうでしょ? 高周波ブレードなら確実だよ?』


『【鋭刃】はあくまで接触中の持続ダメージのはずです。このサイズの水晶には相応の時間が必要でしょう。魔導兵装(アーマメント・アーツ)でも持ち込まない限りは――』


 ……612ダメージ? ピッタリなのです! なんかレベル上がってるし。そういえばMPが四桁になってたのです。わあーい!




【マイ・キャラクター】

◆アバター:青色水晶(セルリアナイト)エリン

 レベル:24

 種族:ハネ族 職業:女神 年齢:8 性別:♀

 HP: 612/612

 MP:1054/1054

 身体:《筋力F》《耐久F》《感覚C》《反応AA》《知力F》《精神AAA》

 技能:《祝福A》《飛行C》《風纏E》《魔眼D》《吐息F》《疾走F》

 権能:《樹界語A》

 生活:《念話(テル)》《収納術(アイテムボックス)》《社交術(フレンドリスト)》《擬宝術(ドローアイコン)》《行商術(トレードボックス)》《伝授(プロファー)

 称号:〔星の祈り〕〔蒼穹の覇者〕


◆アイテム:37787% 所持金:50(ジェイド)


◆メインアーム:〈素手〉




 マイ・キャラクターの明示盤(ホロボード)を見ている間も、透明猫のオズさんと、透明馬のトリマンさんが、か弱い私の目の前で物騒な会話をしている。


『よしなさいよ。女神ちゃん引いてるわよ?』


 最後の良心、透明トカゲのネコジンさんが、麗しい声で手綱を引いてくれた。

 もうネコジンさんが女神でいいんじゃないかな。


『……うーん。ボクもほんとは銃がよかったんだけどね? ネル君飛び道具ダメじゃん。弾もそんなに作れないし仕方ないよねー?』


『……ふーむ。それを言うと徹甲弾(アーマーピアサー)も数発で打ち止めですが……。〈赤色鉱(ルビーメタル)〉を女神救出作戦に集中させるのは既定路線ですから、魔導ハーネスに回すということで手を打ちますか』


『だねー。それでいいかな? 一応、歩兵装備にも接続できるんだったよね?』


『そのはずです。用途を考えれば蓋然性は高いでしょう』


『そうね。〈赤色鉱(ルビーメタル)〉はこっちで使い切っちゃうわね』


 方針が決まったらしい。

 話の流れからして、生産関係のアイテムが足りないみたいだ。


『あのあの、〈赤色鉱(ルビーメタル)〉って?』


『それはですねぇ』




――〈赤色鉱(ルビーメタル)〉とは


 そのまんまの名前の赤い金属。特殊な装備を作るために幅広く利用される戦略物資である。

 魔導を冠するアイテムの配線に使ったり、刻印スキルの触媒インクに使ったりする。

 名前が長くて覚えられないハベフうんぬんかんぬん帝国で産出する。




 トリマンさんの懇切丁寧な解説によると、青色水晶(セルリアナイト)を安全に壊す武器をつくるために〈赤色鉱(ルビーメタル)〉という素材が必要らしい。


『あのあの……帝国産ってムリゲーなのでは? 遠すぎなのです』


『大丈夫大丈夫。この国には〈青色鉱(ブルーメタル)〉があるからね? たぶん生産レシピも一緒だよ?』


『そうなのです?』


 私の疑問にはオズさんが答えてくれた。透明猫なのに得意げなドヤ顔が目に浮かぶ。


『青いインゴットは見たことあるわね』


『工房には何度か持ち込まれているのですが、NPCの監視が厳しいです。とても手が出せません』


『青い武器を作らされた時かな? あのおじさんすぐ叩くから洒落にならないよねー。鉄は余裕でパクれるのに、肝心の青いのはちょろまかせないの』


 オズさんたちって、超バイオレンスな職場なのです。笑ったり泣いたりできなくなりそうなのです。


破城槌(バッタリングラム)の時にも使ったでしょう。刻印スキルの触媒インクでしたか』


『あー。あったねあったねー』


 話が脱線しそうな緩い空気なのです。




 ちなみに破城槌(バッタリングラム)というのは、馬車で引っ張る超巨大パイルバンカーみたいなファンタジー兵器らしい。構造は歴史上実在した攻城兵器と似たような感じで、丸太をぶつけるだけの質量兵器。しかし、刻印スキルでルーンを刻んであるので城門破壊効果が凄いのだとか何とか。

 この街のNPCは戦争でもするのか……




――〈青色鉱(ブルーメタル)〉の入手方法について


『〈青色鉱(ブルーメタル)〉の採取方法は不明です。帝国では赤ミミズのドロップでしたが』


『やっぱり、青い生物が落とすのかしらね。女神ちゃん見たことある?』


 急に話を振られてビビッと来たのです。


『えっ、私はまっすぐ飛んできたから角ウサギくらいしか……青いモンスターは……青いモンス……うっ! 頭が……ッ! …………というか、もう女神で呼び名決定なのです??』


『毎朝数万のNPCが祈りを捧げる計算ですから、推定女神と言わざるを得ないでしょう』


『推定女神って……』


 トリマンさんの名推理で私は女神に推定された。今のってジョーク? 真面目?

 ネルソン君が居ないと私が弄られキャラなのです……


――たすけてネルソン君!




『おはよう……。この魔剣は、血に飢えているぞ……』


 いいところにネルソン君がやってきた。つきまとう白騎士を無視してやってきた。

 外の白騎士は見敵必殺(アクティブ)っぽかったけれども、建物内の白騎士は専守防衛(ノンアクティブ)なのか。


 右手にぶら下げた剣の身が、ルーン文字の光で血のように赤く輝いている。

 ついでに魔眼スキルの事前発動(プレキャスト)で、左目も光らせている。




『ネルソン君! ネルソン君! やめて! やめて! やめて!』


 ……そんな剣で突かれたら死んでしまうのです。


 私がちょっと本気の命乞いをすると、なにか失礼な反応が返ってきた。


『肌色ドラゴン……だと……?』


 いやいやいや、ホワイトドラゴンなのです。

 今の私はホワイトドラゴンなのです……


 そんな事をやっているうちに吐息スキルが上がって、竜の絵柄の赤いアイコンがもう一つ増えた。




【システム通知:竜体の操作が上達し吐息スキルⅡを習得しました!】


《吐息=風神砲(ブラスト)》 [起](アクト)[衝](ブレス)[闘気(ウィル)][怯](スタン)

 風のブレスを吐く。範囲内を怯ませる。




 変身ってけっこう疲れるし、内臓グリグリされて変な感じだし、もうホワイトドラゴンに変身することもないだろう……

 これからは《吐息=風神砲(ブラスト)》で生きていく。


 私は《吐息=我竜転生(ドラゴンフォース)》を解除して、つぎに疾走スキルの訓練をすることにした。

 通常アイコンを習得すれば、千里眼で優雅に散歩しながら、同時にスキル上げとしゃれ込める。




 ピンクの塗料たちが『やぁ、ネル君』『やあやあネル君』『こんばんは、ネル君』と挨拶をすると、ネルソン君はビクッとして跳びすさった。


『うおッ!? ……誰だ……オズ……か……?』


 びっくりしすぎたのか、ネルソン君の魔眼の光はポヤャ~ン、ボフッ、と変な音がして消えた。


『ネル君ネル君、ルーン起動できちゃった? というかそれナイトラ○ダーかな? カラオケ頑張った?』


 オズさんは初めてクリスマスツリーの電飾を見た子供のように、ピカピカ光る剣に興味津々だ。


 カラオケで起動する魔剣とか使い物になるの!?


『がんばっては、ないな……INしたら、光の剣だった……』


 赤く輝く剣の名は、【鋭刃の詠歌(エッダ)】のスチールソード。剣に刻まれたルーンが起動すると赤く光るらしい。


 ネルソン君は目をつぶって腕を組み、抜き身の剣をプラプラ遊ばせている。危ない。


『ねえねえネルソン君、どこいってたのです? 寝落ち? というか刃物あぶないよー』


『寝てはいない、が……意識が消えたことは、ある……』


 というか、今も眠くて目をつぶっていたようだ。目をしばしばさせて大あくびしている。

 あくびはなぜ伝染(うつ)るんだろう。水晶柱のせいであくびができなくてつらい。




【システム通知:魔蹄の操作が上達し疾走スキルⅡを習得しました!】


《疾走=疾駆(ターボ)》 [常](ステイ)[脚](フット)[技巧(アーツ)][駆](ドライブ)[印](サイン)

 走る速度が上がる戦闘スタンス。




『あ、上がったのです』


『うーん。さすがにそろそろ寝ようかな? 〈青色鉱(ブルーメタル)〉探しはまた今度ねー?』


『俺は夜の剣士だ……。寝ようと思って寝たことは、ない……』


『そうしますか。ネル君、ほどほどにね』


『そうよ? 私たちがいうのも説得力ないけれども』


『うむ…………』


 ネルソン君を気遣って、やんわりと注意するトリマンさんとネコジンさんだった。


『みなさん、おやすみなさいー』


 私はゲームの世界からログアウトした。



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