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白い翼のノイシュ  作者: ワルキューレ
『これはゲームではない』
6/32

6 女神ですが魔眼を習得します

#6


『ボクに飛行スキルを伝授(プロファー)してくれないかな?』


 オズさんが、おずおずとした調子で話しかけてきた。フードの中の猫の瞳は物欲しげに光っている。


『んんー? いいけど、伝授(プロファー)って何なのです?』


 私は水晶の中の女神のように、ぷかぷか浮かびながら念話(テル)を返す。


 ……ちょっとは女神らしく口調を改めた方がいいのかな? いやNPCには念話(テル)が届かないっぽいし、どうでもいいか……


『スキルを相手に教える! スーパー師弟タイム! 元スキルはちょっと減る!』


 オズさんが新情報を持ってきた。スキルを分け与える方法があるらしい。

 一体どこで調べてくるのだろう。


 どうやらオズさんは、私のスキルが目当てでここまで来たようだ。物欲しげな目がそう語っている。


『減るの!? まあいいのです。ヘイカマーン! ハリー! チッキーン! ユーフィーン!』


 スキルを獲りにくるオズさんを、私は全力で迎え撃つ。

 ファイティングポーズでパンチをシュッシューっとやりたい気分だったけれど、水晶に覆われた身体はピクリとも動かなかった。


『いやいや、そっちがヤルんだよ? まぁ、これでも食らえ!』


【システム通知:オズさんから《伝授(プロファー)=魔眼スキル》を受けますか?】

【→受ける / 断る】




挿絵(By みてみん)


【システム通知:オズさんから伝授(プロファー)を受け魔眼スキルⅠを習得しました!】


《魔眼=千里眼(サードアイ)》 [起](アクト)[召](サモン)[自在(フレクス)][疎](ホロウ)[標](セプター)

 千里眼投射体エーテル・エンティティを作り憑依する。アトリビュート・アイコン。




 思いがけず、私は魔眼スキルを習得した。

 呪われそうな絵柄の赤いアイコンだった。


『闇がよく見える……いい眼だ……。ぐっ! チカラが……! まあいい……好きなだけ、喰らうと良い……!』


 ネルソン君が顔を斜めにして、赤い光を左目に宿らせ喜びを体現している。

 既に伝授(プロファー)済みらしい。


 魔眼スキルはメメ族の種族スキルのようだ。ハネ族の飛行スキルと似たようなものだろう。


 せっかくなので私も、飛行スキルを二人に伝授(プロファー)した。

 アイキャンフライ! ユーキャンフライ!


 ……しかしオズさん。羽も無いのにどうやって飛ぶつもりなのです?


『ふっ……わるいな……。借りは、返す……』


 ネルソン君は、近いうちに改めて伝授(プロファー)してくれるそうだ。

 剣スキルにかまけて、オモシロスキルはノータッチだったらしい。なんともったいない!


『気にしなーいのです! 財布は犠牲になったのだ!』


『斧の犠牲にな!』


『ふっ……剣を……なめるな……!』


 ファイティングポーズを取り、いい感じのリアクションを返すネルソン君。

 即興の軽口でネルソン君を弄るのは楽しい。


 ヒートアップしたネルソン君は、左目を妖しく輝かせてオズさんを視界に捉える。

 オズさんも負けじと第三の目を輝かせる。


 二人の魔眼スキルが発動して、大神殿に禍々しいオーラがあふれた。


『みゃははははは! くすぐったい! ヤバイくすぐったい!』


『グワッ……やめろ……! 俺の中に……入って、くるな……!』


 二人とも、オーラを吸い取ったり吸い取られたりしながら悶絶している。

 それはいかにもネルソン君が好みそうな、見映えのする能力(アビリティ)だった。


 ああ、これって嫌がらせ系のスキルなのかな?

 モンスターに使ったら敵対心(ヘイト)が凄そうなのです。


 じゃれ合っていた二人は、いきなり間合いを詰めた白騎士のチョップで、同時に気絶した。

 相手のHPを吸い取る事案に、お巡りさんが駆けつけたらしい。

 私は何も悪いことをしていないのに殴られたのだけど……


 気絶した二人は、わりとすぐに回復した。

 祝福スキルはけっこう役に立つスキルなのです!




 私もマイ・キャラクターの明示盤(ホロボード)を開いてアイコンを入れ替えてみた。手が動かないので(スロット)に直接ホールインワンするしかない。


擬宝術(ドローアイコン)=魔眼=千里眼(サードアイ)


 赤い炎のようなエフェクトを発して(スロット)に入った。




【マイ・キャラクター】

◆メインアーム:〈素手〉

 アトリビュート1:《魔眼=千里眼(サードアイ)

 コモンスロット2:《祝福=交通安全(ブロードウェイ)

 コモンスロット3:《祝福=無病息災(ウェルネス)

 コモンスロット4:《祝福=商売繁盛(ブロードキャスト)

 コモンスロット5:《祝福=家庭円満(ハビテーション)

 コモンスロット6:《祝福=天壌無窮(インフィニティ)




『いっくよー! 《魔眼=千里眼(サードアイ)》! とう!』


 燃え上がれ、私の左目!

 これで私も、緑と赤のオッドアイなのです!


『うおッ!?』


『うっわぁぁぁぁ……キモッ! なにそれ? 邪女神があらわれた!?』


 私のほうを見上げた二人の顔が歪んだ。二人そろってヨロヨロと後ずさった。

 本気の嫌悪で、二人ともドン引きの表情だった。

 予想外の扱いすぎて、私はショックを受けた。


『光と、闇が、合わさる時……頭がおかしくなる……』


『ちょっとそれ、グロ過ぎだよ? 羽根に目がいっぱいあるよ?』


『えっ、自分では見えないのです……』


 私は涙目になった。




『あー、えっとね? 《魔眼=千里眼(サードアイ)》は目を(つむ)るんだよ? 目閉じてる?』


 私はオズさんの声に従って目をつぶる。

 しかし、まだ大広間が見渡せる。


 ……あれ? 見えてる?


 そう思った途端、ぬるっと身体が滑って落っこちた。

 腰の翼を羽ばたかせて、床の上に降り立った。


 私は水晶柱から抜け出した……と思ったら身体が透明になっていた……


『成功かな? 成功かな? 透明人間になってる? それが千里眼投射体エーテル・エンティティだよ? メメ族の場合は、目を二つだけつぶると幽体離脱みたいに視覚を飛ばせるんだよね。……あ、ちなみに後ろは見ないほうがいいんじゃないかな?』


 オズさんが気になることを口にした。

 それに釣られて私は振り返り、水晶柱を見上げた。


『……ぎゃああああああああああ!』


 邪悪な羽根キャラが、水晶に封印されていた。

 天使の翼は赤黒い妖光に染まり、羽根の一枚一枚に眼のようなものが浮かび上がる。百の目がまぶたを不規則に(うごめ)かせ、定まらない視線が方々に狂気を走らせる。


『……こいつは、へヴィだぜ……』


 ネルソン君の声がうつろに響いた。




『よーし! それじゃあ、飛行スキルを試してみようかな?』


 しばらくして、オズさんが場の空気を変えた。


『うむ……』


 ネルソン君が足を開いて身構える。すると金属ブーツの横に、チカチカ瞬く光の翼があらわれた。

 翼が空を打ち、光の破片が羽毛のように舞い散る。


『闇を切り裂く……勇気の剣閃(ひかり)だ……』


 ネルソン君は、氷の上を滑るように空を飛んだ。


『おおー! これが……愛の羽根パワーなのです!』


 ウルトラかっこいい。ステキすぎる。ナイス羽根!


『良し来た! これが、ボクの希望!』


 オズさんが全身に力を込めると、目からナニカが噴射された。


『うわぁぁあああぁぁっ!? あっ! あっ! あっ!』


 オズさんは入り口の扉まで一直線に飛んだ。

 光の羽毛を大量に撒き散らして、後ろ向きにぶっ飛んでいった。



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