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プロローグ

はじめまして、久蒔羅くじらと申すものです。

初投稿で更新ペースも1週間に1回と遅めですが、ちょっと読んで気に入って頂ければ1週間に1回の更新を楽しみにしてもらえればとても嬉しいです。

特に読んでもらえるだけでも励みになりまし、ブックマークはそれだけでご飯3杯いけるほどに嬉しいので、評価の基準にお願いします。

それでは、ステイン達の長いお話にお付き合いお願い致します

魔導書 ―グリモワール、グリモアなどと複数の名称を持つ禁忌の書物。中世ヨーロッパで複製品が流通したが、真に力を持つものは原典のみであった。つまり、その魔導書に触れることがあったとしても、それらは全てただの〈おまじないの本〉にすぎない。原典はその後隠蔽され、魔導書の名が出るのは伝承のみとなった。しかし、物は存在する以上必ず創造主がいる。この世に魔導書という存在を作り出した男、ダンタリオン・グリモワール。ソロモンの鍵、レメゲトン、ルルイエ異本などの数多の魔導書を作り出したいわば、〈魔導書の父祖〉である。だが、そんな男も命を持つ者であった。男は死を恐れて、自分すらも魔導書にしてしまったという。そして、今その男は―


俺は1冊の分厚い赤い表紙の本を机に叩きつけた。

「んむごぉ!?小僧!扱いには気をつけろ!老人はもっと労わらんか……」

「黙れ、もとより人間の摂理から外れたんだ。お前は今はただの本だ。本がそれくらいで弱音を吐くな」

俺は今さっき叩きつけた本に言葉を投げかけている。

傍から見れば気の触れた奴だと思われるだろうが、これには理由がある。

「まったく……お前のような奴に起こされて儂も運がないのぉ。本とはいえ一応儂も生きておるんだぞ、ちょっとくらい気をつけろ。乱暴に扱うなら儂は力を貸さんぞ」

「発言には気をつけろよ、燃やされたいのか?立場を間違えるなよダンタリオン」

「前にお前に焦がされた部分まだ治っとらんのだぞ……」

そう、魔導書になったという男は今もこうして生きている。喋る魔導書として、そして俺、ステイン・ニルヴァーナの研究対象として。

こいつをこのはずれの書庫で見つけてから二ヶ月。

およそ2300ページのこの魔導書は解読を始めてからたったの5ページしか解析が進んでいない。

二ヶ月かけて1/100にすら届かないとなると正直残りの人生を費やしてもこいつを解き明かすことはできないだろう。

こういう変わりものの専門家がいればどうにかなるだろうが、この街にそんな奴がいるとは思えない。

それに、これはあまり人が触れてはいけないものだろう。

もしこれを解明できたとしたら、俺はどうなるだろうか。

禁忌に触れておかしくなっているだろうか。

それとも魔法使いにでもなっているのだろうか。

まったく進まない魔導書の解読を進めていると

「ステイン様、夕飯の準備ができましたよ」

「おお、アン嬢。この小僧に言ってやってくれ、ものは大切に扱えと」

「アンナ、こいつの言う事は聞かなくていいぞ。全部保身のためだからな」

「はぁ、でもあまり乱暴に扱っちゃダメですよ。一応ダンタリオンさんも生きてるみたいなんですから」

「そうじゃそうじゃ、儂だって生きておる。年上は敬うのが礼儀だろうが」

「お前らな……」

メイドのアンナ・ミストルティンに呼ばれ、書庫をあとにする。

しかし、この書庫はどう見ても書庫の規模ではない。蔵書できる数は5万近くはある。故に書庫という表現は合わない。もはや『図書館』という呼び方が正しい。

「ステイン様?どうかしました?」

「いや、これを書庫と言い張るじじいの気がしれないと思ってな」

「はん、小僧にはわからんわな。儂が生前いくら書き溜めたと思っておる。ゆうに30万は書いた。儂からすればこんなもの書庫だわ」

「自分のたばこの火でほとんど燃やした男の戯言なんかは聞きたくない」

「なにを!!アン嬢!その阿呆を殴れ!ぶっ飛ばせ!!」

「まぁまぁ、二人とも落ち着いてください」


それでも、この男は偉大な男だったはずなのだ。

魔導書を創った男、ダンタリオン・グリモワール。禁忌を生み出し、禁忌を隠した男。

俺はそんな男を見つけてしまい、起こしてしまった。これからろくでもないことが始まるのではないかと、ふと、夕暮れが沈んでいく空を見上げてそう思った。

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