精霊王の独白。
光と闇さえも別れていない混沌の世界。
ひとつの輝きが生まれ落ちる。
その輝きは、世界を形作る精霊達を生み出した。
次に輝きは、空を大地を生み出した。
そして、最後に人間や動物達を生み出したのだ。
その輝きこそが、万物の母にして、森羅万象を司る精霊王である。
精霊王神話集 第一章より抜粋
世界の何処か。
「……え、それ私のことを言ってる訳?」
女子高生だった頃の名残を残した人物が、鼻で嗤った。
※※※※※※※※※※
「皆様、おはようございます! それとも、こんばんはかな?
今日も元気なゆうりちゃんでーす!
……じゃないしっ! どうしてこうなったっっ!!」
ことの始まりはもう本当に遥か彼方の、昔も、昔!
真夜中に自分の部屋で大流行の乙女ゲームにどハマりして楽しんでいた私!
最推しはなんと言っても、美人で可愛くて真っ直ぐな悪役令嬢マリーロゼ!
悪役の高慢ちきなお嬢様かと思えば、悲しい過去に、政略の道具としてしか見ていない父親。
唯一の心の支えは腹違いの弟だけ!
婚約者にも裏切られ、最期はラスボス諸共に殺される悪役令嬢。
国王夫婦、兄たち含む愛されまくって育った逆ハー気味な天真爛漫ヒロインよりも!
よっぽど応援したくなる私の熱い気持ち!!
マリーロゼへの愛と、納得のいかないエンディングに怒りの咆哮を上げた瞬間に……ドボン!
それが……一万年ほど昔の話。
そんなこんなで、落ちた先はなーんにもない真っ黒な空間。
自分の身体さえ見えないような場所。
どんなに叫んでも声すらも、呑み込まれてしまうような場所。
一瞬で混乱して泣き叫んだのは嫌な思い出だなあ……。
でもね、気が狂いそうになった時に心の底から願ったんだ。
“せめて、光が欲しい”
心から願った瞬間に、世界に光が満ちた。
其処からはもう、止まらないよね。
空に、大地に、水に、植物に……。
どんどん世界は私が創造したもので溢れていった。
帰りたいっていう願いだけが叶わないままに……。
……何時の日か私は、何故か精霊王と呼ばれるようになっちゃった……、てへっ。
「なちゃった、てへっ!
じゃないしっっ!! ふっざけんなあぁぁぁっっ!!!」
今日も今日とて、私はこの異世界に招き入れた何処の誰ともしれぬ元凶へ怒りの雄叫びを上げるのだ。
「母上、また怒っていらっしゃるんですか?」
「母君はお怒りか?」
私の怒りの絶叫を聴き、やって来たのはすっごい美貌の我が子ども達。
この異世界において、光と闇をそれぞれに司る精霊と呼ばれる存在だった。
帰れないと分かった私がやけくそになって色々した結果、生み出してしまったんだよ……。
結婚もしてないのに、子だくさんとか有りえんし……。
まあ、美形に囲まれることは嬉しいよ。
でもさ、平凡顔の私からこんなに美貌を誇る我が子ども達が産まれるとは……。
我が妄想力、侮りがたし!
「うぅ……うるさくてごめんよ。 私の娘と息子達よ。
でも、お母さんは叫ばずにはいられないのだよ。」
数千年と永い時を経ても、変わらぬ私の様子に呆れた様子の二人の視線がすっごく痛い。
でもね、こんな私にだって悩みができた。
それは、私がノリと勢いで作ってしまったこの世界について。
この世界、何故か似ているんですよ。
私が一万年程前の女子高生だった頃にはまっていたゲームの世界観に!
「……あれ?
なんか……この国の名前は聞いたことある、ような??」
数百年前に耳にした国名に、魚の小骨が喉に刺さったような違和感を感じた私!
そうして注目していれば!
「何か……こいつら知ってる気がする」
世界をぼうっと眺めていれば、琴線に触れる姿形の人間達。
え……?
いや、ないない……?
ない、よね…………マジですかぁぁぁぁっっ?!
もう、一万年も前の事なんてほとんど覚えては無い!
でも、どうにか多少は思い出せた私ってば偉い!
……まあ、攻略対象達に、ヒロインや悪役令嬢くらいだけど。
そう、ここは私がはまっていた乙女ゲーム、"百花繚乱~魔法の国で恋は花咲き、咲き誇る~"、略して百花!の世界だったのである……。
色々言いたいことはあった。
「今流行の転生悪役令嬢とかじゃなくて何でゲームで名前しか出てこない精霊王?!」
「精霊王の私が国に加護なんて与えた覚えね-よ!」
「なんで一万年前に召還っ!!」
……とか色々さ。
乙女ゲームの世界だと気が付いてしまった時に、私は正直迷った。
私が大好きだった“登場人物”に会いに行ってもいいのか……。
世界や運命って捻じ曲げられるのかな?
それは……許されるのかな?
……でも、そんな殊勝な考えはすぐに吹き飛んだっ!
だって、ここは私が創ったと言っても過言じゃない世界だもの。
文句があれば聞いてやるっ!
私も絶対今までの怨み言を纏めて言い返すんだからっ!!
それに!
私は何よりも会いたい!
私の大好きな悪役令嬢マリーロゼに!
よくある乙女ゲームの設定かもしれない。
妾腹の娘。
父親に引き取られても愛されず、不遇の日々を送るなんて!
でもね!
マリーロゼは、愛されることはない環境にもめげず、たくさんの努力を重ねる女の子!
だけど……結局は、愛されヒロインのお姫様の当て馬役。
最後には、婚約者も、名声も、全てを奪われてしまう。
その挙げ句の果てが、ラスボス化一直線。
ラスボス諸共に殺されちゃう一択しかないとか、もう本当に……悲惨だよね。
例え、ラスボスに乗り移られて利用されたとしても、決して汚い真似はしなかった!
堂々とした態度で最初から最後まで!
恋も、魔法も、勉強も!
強いライバルとして立ちふさがった彼女は素敵すぎだしっっ!
そんな彼女よりも、ヒロインを選ぶなんて男どもの目玉は腐ってんじゃないのっっ、と何度叫んだことか!
一つだけでも悪役令嬢にとってのハッピーエンドがないか全ルート攻略したけど、……ダメだった。
微かな希望を信じて攻略を続けながらも、悪役令嬢の結末が変わりそうにない予感にどんだけ号泣したことか!
……うぅ、思い出しただけで涙が……。
まあ、そんな私の心の内は置いといて!
大好きな悪役令嬢がいるかも知れないとなれば、会いに行って来るしかないじゃない!!
乙女ゲームの中では、悪役令嬢と呼ばれる彼女だけど、彼女は決して卑怯な真似はしなかった。
最後まで、堂々と誇り高く咲き誇った大輪の花。
マリーロゼ!
私は貴女に会ってみたい!
ちょっとでも仲良くなれたら……
いや、お喋りできるだけでも……………
やっぱりガッツリと仲良くなりたいぃぃぃっっ!!
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